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付き合う前にセックスした男女は恋人関係になりにくい【桃山商事】

『生き抜くための恋愛相談』(イースト・プレス)を発売した恋バナ収集ユニット・桃山商事の清田隆之さんに、大人の恋愛にまつわるインタビューを実施。後編では大人女性が抱えやすい悩みとその解決策を伺いました。

付き合う前にセックスした男女は恋人関係になりにくい【桃山商事】

付き合う前にセックスしてもいいのか、好きな人と付き合いたいけれど告白できない……とくに片想い中に悩みを抱えていると、つらくて、しんどくて、どうしていいかわからなくなる。大人になった今だからこそ、相手との今後の関係性を考えて、行動に移せなかったり、上手く言い出せなかったり。

そんな迷える大人女性たちに寄り添う、一般的な恋愛相談本とは一線を画した本『生き抜くための恋愛相談』(イースト・プレス)が刊行されました。著者の恋バナ収集ユニット・桃山商事の清田隆之さんに、前編「結婚は生存戦略のひとつ。だから決断を下せなくて悩んでしまう」に続き、大人女性からよく寄せられる悩みとその解決策について話を伺いました。

■「付き合う前にセックスしていいのか問題」の考え方

――「付き合う前にセックスしていいのか問題」はよく聞くんですよね。これに悩む人は本当に多い。本にも「片想いの相手にセフレにならないかと言われた」という悩みが載っていますね。

付き合う前にするのか、しないのか──。先に肉体関係を持っちゃうと“セックスありきの友達”になってしまい、(セックスなしで)遊びに行ったり愚痴を聞いてもらったりという“普通の友達関係”すら失ってしまうケースがよくある。そこから恋人に変化したって話はあまり聞きませんよね。

だから本音を言えば「やめとけ!」って思うし、それは本人も重々わかっていると思うんです。でも、このことが悩みになってしまうのは、おそらく「セックスをすれば恋人になる可能性が上がるかも」という思いがあるからだと思うんです。この本の回答では、そういう“期待感”のようなものを相対化するところから出発しています。

――女性の方も、セックスありきの関係になってしまえば、負い目を感じる部分もありますよね。「自分は所詮、体だけなんだ」と。本命の彼女になりたいのに、相手から「付き合って」と言われないことに悩んでいる人もいますよね。

ありますよね……。我々のところに来た相談者さんの中には、「わたし、彼女という『肩書き』がほしいんです」と語る女性もいました。

――肩書(笑)!?

何というか、ものすごくへりくだった物言いですよね。恋愛って基本的に対等な関係だと思うんですが、自分を“下”に置いてしまっている。とはいえ、現実問題として、相談者さんは彼女として「正式認定」されたいと切望している。ここには、認定を出す側と受ける側という「権力構造」ができあがっている。この上下関係の枠組みに自らハマり込んでいく人も少なくない。

――本来は平等であるはずなのに、自分から「選ばれる側」のポジションを選んでしまっているわけですね。

外から見たら、「そんなの絶対におかしいから早く抜け出して!」って思いますよね。でも、その人の一人称の視点で想像してみると、違う景色が見えてくる。というのも、恋愛は基本的に1対1の密室的な関係じゃないですか。

そういう中で、たとえば相手が押しの強い男で、自分が関係性の変化を要求したり、相手にとって自分がどんな存在か聞いたりしようものなら、威圧的な空気を出されるとか、面倒くさそうな顔をされるとか……。そうやって権力構造ができあがっている可能性もある。そこをちゃんと踏まえた上でないと、具体的な解決策って考えられないと思うんですよ。

■恋は白黒つけなくていい。細かい要素に分けて考えると心がラクになる

――本書に出てくる「グラデーション思考」という考え方が、先の「付き合う前に〜」問題にも使えそうで、とても興味深かったです。悩みに白黒つけようとするんじゃなくて、選択肢や可能性を増やすようなアドバイス。それを知っていたら楽になるケースが多いと思います。

恋愛って、つい“オールorナッシング”で考えちゃうじゃないですか。苦しいときなんかは特に。でも、実際の恋愛には無数のプロセスがあるわけです。だから0か1かで考えないで、もっと細かい段階に分けて考えてみようというのが“グラデーション思考”です。

――たとえば、片想いの状態でグラデーション思考を使うとすると?

片想いって、基本的に相手と仲良くなればなるほど苦しくなるものだと思うんですよ。なぜなら、「今の関係を失いたくないけど、今の関係のままでいるのもつらい」というジレンマに陥るからです。この状態に疲れてしまい、やがて「当たって砕けろ!」という気持ちで告白したくなる……。誰しも一度は経験したことがあると思います。

でも、告白するからには成功の確率を上げたいですよね。そこで提案したのが“グラデーション思考”です。これは「付き合う」という状態(=恋人関係)を細かく因数分解し、段階的に叶えていこうという発想です。

付き合うって言い換えると、例えば「定期的に会う」とか「頻繁に連絡を取り合う」とか、あるいは「記念日を一緒に過ごす」とか「相手を最優先に考える」とか……相手とそのような関係性を結びたいってことですよね。

告白するっていうのは、これをいっぺんに要求することと同義です。そう考えると、結構すごいことを要求してるかもって思いませんか?

――ホントだ(笑)!

だから無理に「付き合ってほしい」と言わなくても、叶えやすそうなことから、ひとつずつ叶えていく方法もあるのではないか……。定期的に会ったり、連絡の頻度を増やしたり。仲良くなったら、誕生日やクリスマスを一緒に過ごすこともできるわけで。

このように、付き合うという状態を要素ごとに分解し、1個ずつ実現していくのがグラデーション思考です。少しずつ関係を作っていき、「今は60%くらい付き合ってるかも」なんて考えながらアプローチできれば、前進しているという実感も得られるし、「当たって砕けろ!」な極端な発想を回避できるかもしれません。

もちろん最終的には、どこかのタイミングで「恋人になってください」と言わなきゃいけないときが来るわけですが、それまでじっくりアプローチしていくことだってできると考えています。

■知らぬ間に入信している「普通の結婚教」から抜け出してみる

――本書に出てくる「普通の結婚教」という言葉も印象に残っています。「結婚には向かない、いわゆるダメ男と恋愛したらダメなのか。いい人を選んで、いい結婚をしないと、女性は幸せになれないのか」という内容でした。

「マトモな男を選べ」とか「結婚しないとヤバいよ」などとアドバイスしてくる人って、善意からかもしれませんが、それって実はマルチ商法や宗教と同じ構図だと思うんですよ。結婚向きの人と一緒にならないと幸せになれないと考える「普通の結婚教」の価値観。

この人たちは“常識”や“普通”に依拠しているので、自分が間違っているとは考えない。言葉も断言的なので、強く言われると「そうなのかな」「そうかもしれない」とつい思い込んでしまうという……。

この相談者さんは本当はおもしろいタイプの人が好きなのに、まわりからは「やめろ」「いい人を選べと言われていました。「普通の結婚教」は、ちゃんと働いていて、稼ぎがあって、浮気はせず、ちょっとダサくても、子育てを一緒にやっていける男性のほうがパートナーに向いていると考えていて、その価値観を押しつけてくる。

それで相談者さんは、この価値観に背を向けることも、乗っかることもできないことで悩んでいた。これが相談者さんの「現在地」です。だからこの構図をハッキリさせた上で、最終的には「あなたが好きだと思う価値観を中心に生きるほうが幸せに近づけるのでは?」とアドバイスを送りました。「こういう結婚をしないと幸せになれない」なんて決まりはどこにもないし、自分と相手の中でオリジナルのスタイルを育てていけばいいわけなので。

――いいですね。そういう考え方ができると、救われそうな女性はたくさんいると思います。現代の20代は価値観が多様化しているように見えますが、30代以上は未だに「普通の結婚教」に根強く支配されている気も……。親、友だち、ひいては社会からもプレッシャーをかけられる。なかなか息苦しいですよ。

僕は男なので「女性はこうだ」と軽々しくは言えないんですが、女性たちの話を聞いていると、こと結婚に関しては男よりもはるかにシビアな状況にあると感じます。大きいのはとにかく「出産のリミット」があることですよね。結婚や出産願望の有無に限らず、女性たちは25歳くらいから「タイマーが作動したような感覚になる」と言います。これは男性にはない感覚です。

でも、「普通の結婚教」から離れることはイコール「一生独身でいろ」ということではまったくなくて。基本的には、一緒にいて居心地がいい人や、苦しい思いをしない人、そういう人たちとの時間を増やすこと。その中に、自分の結婚観と合う人がいる可能性が高いと思うんですよ。

――そうかもしれません。

相談者さんが「どうしても結婚したい」という人だったら、できるだけ結婚に近づくための方法を考えていきたいというのが我々のスタンスですが、必ずしも結婚だけが幸せじゃないし、絶対にしなきゃいけないなんてまったく思いません。個人的には、ひとりで生きてこうが、友人と暮らして生きてこうが、自分なりの幸せな生き方が見つかればいいなと考えています。

人生のステージなんてコロコロ変わるわけで、5年くらい友だちと住んで、その友だちが結婚したらひとり暮らしに戻って、今度はきょうだいと暮らしてみて……とか、そんな風にいくらでも自由に変化していくのもありだと思っています。

――30代で独身でいると、結婚しない自分に疑問を持つこともありますが、お話を聞いてとても前向きになれました。本日はありがとうございました!

(完)

Text/東香名子

『生き抜くための恋愛相談』書籍情報

著者 桃山商事(ももやましょうじ)さんプロフィール

清田隆之(代表)と森田雄飛(専務)による恋バナ収集ユニット。2001年結成。恋愛の悩みに耳を傾ける「失恋ホスト」を始め、これまで1000人以上の男女から見聞きした話をコラムやラジオで紹介している。「日経ウーマンオンライン」で連載している恋愛相談が人気を博すほか、『anan』『Numero TOKYO』『FRaU』『毎日小学生新聞』『精神看護』など、幅広いメディアに寄稿。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)、清田隆之名義の著書に『大学1年生の歩き方』(左右社/トミヤマユキコとの共著)がある。清田隆之さんTwitter( @momoyama_radio )。
http://momoyama-shoji.com/

DRESS編集部

いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。

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