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大人のナチュラルメイクは「ナチュラルに見せる」メイク

コンシーラーを買いに百貨店の化粧品売場へ。そこでひょんなことから、メイクさんにアイシャドウを勧められ――。青系の服に赤系のシャドウ!? 最初は驚くもメイクさんのレクチャーを聞くと納得。顔色が沈んできたら、反対色の効果を利用して肌の色をワントーン上げる。大人のメイクに生かせるアイデアをいただきました。

大人のナチュラルメイクは「ナチュラルに見せる」メイク

9月に入りました。関東地方はこの夏の日照時間が記録的に少なかったようですが、それでも気づけばお顔のシミは確実に増えている。夏の日差しに浴びていないのに日に焼ける、って、どういうこと?

■消せないものは隠すしかない

現実と戦わずに逃げるのか? という想いがちらりと頭をよぎりはしたものの、結局、コンシーラーを買いに、百貨店の化粧品売り場に行きました。

ほんのちょっと心がざわっとしても、それはそれとして前に進むのが大人というもの。「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって後ろめたく思う必要はありませんよ」と、『西の魔女が死んだ』(梨木香歩)に登場する「おばあちゃん」も言っていますし。

■化粧品売り場には、幻想と現実が交錯する

フロアに足を踏み入れると、光があふれ、鏡がきらめき、買う気があってもなくても、明かりに集まる蝶みたいにショーケースに引き寄せられてしまいます。

それで、うっとりとした気分で覗き込んだ鏡に映る自分の顔にぎょっとしたりして。かねがね思っているのですが、化粧品売り場って照明が明るすぎやしないでしょうか……。

■あなたに似合う新色シャドウは?

この時期、各売り場のショーケースのなかには新色のアイシャドウやらルージュがずらりと並んでいます。ブラウン、モスグリーン、ライトパープル、サーモンピンク、ペールブルーetc.。

興味津々でケースを覗き込んでいるわたしに、「どれか試してみませんか?」と甘いささやきが。本当はコンシーラーを探しにきたのだとすぐに言い出せなかったのは、恥じらいゆえか、見栄ゆえか……。

■わたし流ナチュラルメイクの定義

結局、お言葉に甘えることにしました。

「お好みの色がありますか?」
「いや、お任せします」

実際、メイクへの思い入れはあまりなく、気をつけていることといえば、メイクをしているかしていないかがわからないようにすることと、やつれて見えないようにすることくらい。

メイクアップアーティストさんに正直にそう話すと、彼は(そう男性です!)訳知り顔に、アイシャドウのパレットをひとつ手に取りました。 

■魅惑のトリコロールカラー

(赤と青と白って……フランス国旗じゃない!?)

目の覚めるようなトリコロールカラーにゴールドが加わったド派手な4色パレットを手にしたメイクさんは鏡のなかのわたしの戸惑い顔に話しかけます。

「普段は何色の服をお召しになることが多いですか?」
「青系かな……」

メイクさんは太めのブラシに真っ赤なシャドウを押しつけました。

(えっ、そっち?)
「そう、赤です。これくらい塗っても大丈夫なんですよ」

ほぼすっぴんの顔に太めに塗られた真っ赤なシャドウ。

(くまどりかッ!?)
「歌舞伎役者みたいですけどこれくらい塗って大丈夫。このうえからゴールドを塗りますから」。

わたしの心の声はメイクさんにダダ漏れのようです。

■青い服に真っ赤なアイシャドウ

ネイビーのワンピース姿で、べっとり赤いシャドウをつけられ、青ざめているわたしのために、ここでようやくメイクのプロによる詳しい解説が入ります。

「青系の服のときはあえて赤いシャドウを、赤系の服のときはあえて青いシャドウを塗ると、メリハリが効いて顔に明るさが出るんです。逆に、渋めの色で同系色にまとめると、落ち着いた印象にはなりますが、顔が沈んでくすんで見えますよ」

「その年齢だと……」という言葉を飲み込んでくれたのはメイクさんの優しさです。

そう言われると思い当たることあり。そもそも沈んだ色の服を好み、メイクも小物もできるだけ同系色でまとめるのが若い頃からのわたしのルール。

茶系の服ならオレンジかベージュ系に、青系のときは寒色系のシャドーで、黒を着るときは黒いアイラインだけ。

シックを狙うというより、下手に反対色を使って悪目立ちしたくないというのが正直なところでした。でも、メイク控えめが映えるのは、シミもしわもない華のある肌だからこそ。

顔色が沈んできたら、反対色の効果を利用して肌の色をワントーン上げる。なるほど、理にかなっています。

■アイメイクで目からうろこの体験

「二重のラインを少しはみ出すくらい大胆に強い色を入れてから、その部分を覆うようにゴールドを載せます。そうすると、いい具合に色が中和して、おもいのほか下の色が肌になじむんですよ」

実際、ゴールドはわたしの黄味が強い肌には驚くほどなじみがよく、もっと驚くことに、真っ赤なくまどりはゴールドを重ねると品のいいコーラルオレンジに変わって、濃紺の服装にほどよく映えていました。

ちなみに、濃いブルーにゴールドをのせると、寒色に温かみがプラスされ品よく知的に見えるとか。ベースに濃い色を塗ってそれを消すようにゴールドを重ねると、単色使いよりかえってベタ塗り感がなく、想像以上に自然な仕上がり。

ゴールドにそんな効果があるなんて知りませんでした。

■「隠す」のではなく、「明るく見せる」という発想

というわけで、とりあえずアイメイクから変えてみました。

「顔色をよく見せたいときは洋服とは反対色のシャドウを使う」
「シャドウで印象にメリハリをつけた分、ルージュの色は抑えめにする」

プロから教わった大人メイクの極意は守りつつ、もう少し自分に合った「ナチュラルメイク」を探してみようかな。

ちなみに、試しもせずに買ったコンシーラーも厚塗りにもならず乾燥もせず、本当によい仕事をしてくれています。最近のコスメはこんなにも進化しているんだなあ。

肌のくすみを隠すのではなく、肌を明るく見せるという発想。勉強になりました。

流れに抵抗して無理に留まるわけではなく、流れに合わせて上手に変わっていく。実年齢と見た目の距離感を常に一定に保つというのは意外に難しいものです。いくつになっても実年齢より少しだけ若く見えるという状態がいいですよね。

桜井 真砂美

早稲田大学卒業後、高校教師を経て翻訳家の道へ。主な訳書:『ファッション・アイコン・インタヴューズ』、『ヴィヴィアン・ウエストウッド自伝』、『ブルックリン・ストリート・スタイル:ファッションにルールなんていらない』、『メンズウ...

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