婚姻制度&家制度って本当に必要? 「理想の家族」は理想でもなんでもない

婚姻制度&家制度って本当に必要? 「理想の家族」は理想でもなんでもない

さまざまな結婚観が広がる現代において、本当に「婚姻制度」や「家制度」は必要なのでしょうか? 日本において家制度が成立した歴史を辿り、これからの結婚観、家族観について考えていきます。


昨年末ヒットしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で契約結婚や事実婚が取り上げられたり、東京都の渋谷区や世田谷区で同性カップルに「結婚相当」が認められる条約が成立したりと、旧来の結婚観や家族観に囚われない新たな関係性が認められつつあります。

とはいってもいまだに女性芸能人が不倫をすれば糾弾され、男性芸能人の不倫はお咎めなし、というようにジェンダー格差があったり、旧来的な婚姻制度や家制度の価値観が根深く残っているのもまた事実。

そもそもなぜ日本では、今のような婚姻制度や家族の形が「常識」として根づいたのでしょうか?

今回は、日本において婚姻制度や家制度が成立した歴史を振り返りながら、これからの結婚観や家族観について考えていきます。

■男女関係が自由だった古代社会

立命館大学・産業社会学部教授の筒井淳也(つつい・じゅんや)氏が執筆した『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』(光文社刊)によると、家族や結婚のかたちは、人々の経済的な生活基盤に応じてある程度決まるのだといいます。

そのため数十人規模の集落で共同生活を行っていた古代社会では、血統を守ることが重要ではなかったため、子供は共同体の大人たち皆で育てていました。そして男女関係についても比較的自由だったことが記されています。

実際古代社会では、男女が互いを好きになること、性行為をすること、結婚することは現代の人が驚くほど単純につながっていました。好きになったら体の関係を持ち、そのまま結婚し、子供を持つ。そして、気づいたら別れていることも多くありました。男性も女性も同時に複数の相手と親しい仲になることがあって、「誰かと付き合っている時はほかの人と付き合ってはならない」という強い規範はありませんでした。
「結婚と家族のこれから 共働き社会の限界」(筒井淳也著書・光文社刊)

上記のような「対偶婚」的考えが古代社会では一般的でした。

■男性優位の社会体制による「家」の誕生

しかし、大宝律令が8世紀に施行されると、事態は一転します。

中国の律令(法律)を模範に作られた大宝律令は、家長(一般的に父親)が女性や子供を管理する「家父長制」的な思想を推奨しました。すぐに庶民までこの思想が浸透したわけではありませんが、中世の武家社会になると家父長制的な家族の在り方が典型的なものになっていったと筒井氏は言います。

武家の世界では、手柄を立てて「家」を確立させた人物の力こそが、尊重すべき対象です。(中略)その人物の血を引いた子供が必要だ、ということになります。(中略)こうして江戸幕府では「徳川」の血を受け継ぐ者が支配者になるのです。
「結婚と家族のこれから 共働き社会の限界」(筒井淳也著書・光文社刊)

このように中世になると父親の血を残すことこそが大切でした。父親の血を残すことが何よりも重要であったため、一夫多妻制が認められながらも、女性の姦通罪は厳しく罰せられました。この時期に男女の不平等は生まれています。

■労働者の誕生による家族からの自立と性別分業

明治以降、近代になると社会の中で工業化が進み、家族で農業を営む生活から、労働者として雇われ働きに出る生活へとシフトします。

こうなると家父長制の効力は薄まり、経済力を得た子供たちは家族に依存するのではなく、自立した道を歩むようになります。

しかし、女性に限ってはこの自立が進みませんでした。男性優位の社会が職場でも継続され、女性は家で家事や育児を担う専業主婦にならざるを得なかったからです。そして性別分業した近代家族のライフスタイルは、労働者階級の間でも憧れとなってしまいました。

この性別分業が進んだ専業主婦の時代は、1970年代に日本でピークを迎えます。そしてこの時代は日本において結婚率が最も高かった時期でもあります。

■「皆婚社会」は理想ではなく、特殊な状態

結婚率が高い社会はポジティブであると捉えられそうですが、そうでもありません。結婚率の高かった高度経済成長期について、筒井氏は下記のように指摘しています。

戦後の経済成長期に安定した雇用が大量に供給されたことが、例外的に安定的な家族形成を可能にした、と考える方が実際に近いでしょう。
「結婚と家族のこれから 共働き社会の限界」(筒井淳也著書・光文社刊)

経済的条件が整わない限り、結婚に踏み切れないというのは、近代社会に限らずいろいろなところでみられた現象です。むしろ各国の経済成長期のように、ほぼすべての人たちが結婚・出産することができた時代こそが、特殊な条件がそろった稀なケースである可能性さえあります。そういう意味では、先進国は再び「結婚・出産が当たり前ではない世界」に戻りつつあるだけなのかもしれません。
「結婚と家族のこれから 共働き社会の限界」(筒井淳也著書・光文社刊)

現代の私たち、とくに結婚適齢期と言われる人々は常に、「結婚しろ」という圧力をかけられます。

これは「結婚はみんなするもの」「いい年になったら結婚するのが当たり前」という価値観が一般常識として根づいてしまっているからでしょう。

しかし、このように歴史を振り返って見てみると、ほとんどの人が結婚していた皆婚社会の方が珍しい状況であると考えられます。

そして、夫が働きに出て、妻が専業主婦をして子供の面倒を見るというような「理想の家族」と世間一般に考えられている家族像も、人類の歴史からすると珍しい家族形態であり、理想でもなんでもないということです。

■人々が新しい家族の形をデザインする時代へ

少子化が国にとってマイナスであるというのはわかりますが、だからといって無理に人々を結婚させて旧来的な家族を作らせても息が詰まるだけで、生まれる子供も生まれるわけがありません。

それよりも今私たちがしなくてはいけないのは、新たな家族の形を自分たちで模索し、デザインしていくことなのではないでしょうか。

北欧社会の例は、今後の家族の形を考える上でヒントになるかもしれません。

スウェーデンに代表される北欧社会で女性の生活を保障するのは村落共同体や親族ネットワークではなく、国家です。国が男女問わず生活を保障する仕組みを提供してくれていますので、女性は結婚することや子どもを持つことについて、比較的自由に振る舞うことができます。
「結婚と家族のこれから 共働き社会の限界」(筒井淳也著書・光文社刊)

結婚をすることもしないことも、子供を産むことも産まないことも、性別やセクシャリティ、経済力や宗教関係なく、誰でも自由に選択できるような、そんな社会を作っていくことが今私たちがするべきことのように思います。

そして家族という形は今のように「失敗したら終わり」ではなく、「失敗してもやり直せる」そんな明るいカジュアルなものになってほしいもの。

すぐに実現することは難しいでしょうが、一人ひとりが婚姻制度や家族について考えることで、新たな未来が見えてくるのではないでしょうか。

【出典元】
・筒井淳也著(2016年)『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』光文社

この記事のライター

下北沢を愛するフリーライター、コラムニスト。女性向けウェブメディアでの編集・ライター経験を活かし、女性の生き方・働き方、恋愛や結婚など男女関係についてのコラムに加え、グルメメディアでの経験を活かしたグルメ記事、食レポを執筆中...

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