映画『ターシャ・チューダー 静かな水の物語』感想。絵本作家ターシャ・チューダーからあなたに贈る人生を楽しむヒント
アメリカを代表する絵本作家でありイラストレーター、園芸家、人形作家、料理名人、スローライフの母として世界中の人たちに愛されるターシャ・チューダー。彼女のモットーは、Take Joy! シネマの時間第11回は、映画『ターシャ・チューダー 静かな水の物語』の魅力をアートディレクターの諸戸佑美さんに語っていただきました。
■映画『ターシャ・チューダー 静かな水の物語』あらすじー花と動物に囲まれた心豊かなライフスタイルと創作の世界
アメリカで最も愛される絵本作家ターシャ・チューダーをご存知でしょうか?
自然に寄り添った手作りの暮らしで”スローライフの母”と称される絵本作家です。
古代中国の思想家老子の言葉で最も理想的な生き方(上善)は、水のようなものだという「上善は水如し」という言葉がありますが、ターシャ・チューダーもまた「私は静かな水のようでありたい」と映画の中で”静かな水”としての生き方が理想だと語っています。
私もまた常々「水のように生きたい」と思っているのですが、心洗われる素晴しい映画でした。
ターシャ・チューダーは19世紀の農村の暮らしに憧れ、22歳のときに、同じ思いのトマス・L・マクリーディーと結婚。ニューハンプシャー州にて農場生活の傍らガーデニングを楽しみ、季節の年中行事や遊びを通して4人の子どもたちを育てました。
結婚と同時に手作りの小型絵本が出版社に受け入れられ、絵本作家としてデビューします。コーギー犬が主人公の『コーギービルの村祭り』がベストセラーを記録。
児童書の普及に貢献した人物に贈られる、レジャイナ・メダルなど数々の賞に輝きました。その後も日々の暮らしをモチーフにした多数の絵本を手がけるなか、農業に興味を失った夫と42歳で離婚。
絵本の仕事のほか、たくさんの動物のいる大きな農場をひとりで運営しながら、シングルマザーとして生活を担いました。
1971年、56歳の時に長年の夢だった季節の彩りの美しいバーモンド州の山奥に土地を購入。
長男のセスが建てた18世紀風の農家に移り住み、2008年に92歳でこの世を去るまで家族や植物、動物たちをこよなく愛し、絵本やイラストレーションの制作のほか美しい庭作り、編み物、裁縫、人形作り、料理など手仕事の暮らしを楽しんだのです。
生きていれば楽しいばかりでなく、つらいこと悲しいこと、いろいろなことがあるでしょう。ターシャのモットーは、“Take Joy!” ――どんなときでも目の前の喜びを見出し、静かな水のように生きました。
ターシャが作り上げた天国のように美しい庭は、アメリカのコテージガーデンの見本と称えられ、彼女のライフスタイルそのものが今もなお世界中の人々に愛されています。
ぜひ、機会がございましたらご鑑賞くださいませ!
■映画『ターシャ・チューダー 静かな水の物語』誰でも思い通りの人生を送ることができるのよ
映画『ターシャ・チューダ 静かな水の物語』の見どころのひとつには、心に響く言葉の素晴しさがあります。
例えば、
「夢は語るものでなく実現するもの」
「何かに夢中になるのは大事なことです。何でもいいの。それが人を前に進ませます」
「私は静かな水のようでありたい」
「人生は短いから不幸になってる暇なんてないのよ。幸せは自分で創り出すのよ」
「人生は短いのよ。好きなことをしなくちゃ。私は庭仕事が好きだからやってるの。美しい庭は喜びを与えてくれるわ。満天の星と同じよ」
「すべての瞬間を楽しみなさい。五感のすべてで命を感じなさい」
「人生は選択の積み重ねでできている。何をして何をしないか。誰と会って誰と会わないか。選ぶことの大切さ。すべての選択を真剣に行なって自分の世界を築く」
「わたしは社会通念より自分の価値観に従って生きる方を選びました。だから、面白くて充実した人生を歩んできたのだと思います」
「あの頃夢中になった本のお陰で生き方を学んだの。本で出会った作家たちが人生の師匠」
「心は一人ひとり違います。その意味では人はいつも”ひとり”なのよ」
「この美しい世界を謳歌しないなんて馬鹿げてるわ」
「想像するだけでどんな世界も創り出せる」
「幸せに生きる場所を自分で見つけることができる」
「必要なものを全部自分の手で作るなんて素敵じゃない」
「私にとって、人生で一番大切なことは、心の充足です。与えられた運命、自分が置かれた環境に、満足して生きることです」
「せっかく女性に生まれたのなら、なんでエレガントな装いを楽しまないの」
「今が人生で一番幸せよ」
などなど……私自身、師匠であるイラストレーターで作家、アートディレクターの安西水丸さんも同じようなことを仰っていたことを思い出し、とても感銘を受け「水のように生きたい」と改めて思いました。
花と動物に囲まれた自由な精神溢れるライフスタイルと心に沁みる言葉の数々を未来に伝えるドキュメンタリー映画『ターシャ・チューダー 静かな水の物語』。
”スローライフの母”から人生を幸せに生きるヒントを受け取ってくださいね。
■ターシャ・チューダーの世界がより楽しめる関連本の紹介
絵本や書籍、レシピや美しい庭作り、ライフスタイル本など生涯に渡り、数多くの作品を創り出したターシャ・チューダー。
家族を愛し、季節の行事を楽しみ、周りに流されることなく穏やかに前進する「静かな水(Stillwater )」としての前向きな生き方や、自分らしい暮らしを大切にするライフスタイルは、現代を生きる私たちに多くのことを教えてくれます。
ここではターシャ・チューダーの世界がより楽しめる関連本を数冊、ご紹介させていただきます。
ご興味のある方は、本もあわせてお楽しみいただければ幸いです。
絵本『コーギビルのいちばん楽しい日』
ターシャ・テューダーが、87歳で描きあげた絵本。
コーギビル・シリーズ三部作の完結編。
ターシャ自身が幼い頃に経験したクリスマスの大切な思い出を、コーギビルの仲間に託して描いています。
訳:食野雅子
本体:1600円+税
■映画『ターシャ・チューダー 静かな水の物語』作品紹介
公式ホームページ http://tasha-movie.jp
©2017映画『ターシャ・チューダー』製作委員会
製作年:2017年
製作国:日本
映倫区分:G
配給:KADOKAWA
上映時間:105分
監督:松谷光絵
助監督:深谷純
企画:鈴木ゆかり
プロデュース:鈴木ゆかり
プロデューサー:坂野かおり、高尾順子
共同プロデューサー:木之内安代
撮影監督:高野稔弘
ビデオエンジニア:佐藤隆彦、石上正治
録音:熊内直美
編集:大泉渉
音楽:sions、world`s end girlfriend、mio-sotido、ハチスノイト、良原リエ
■映画『ターシャ・チューダー 静かな水の物語』キャスト
ターシャ・チューダー
セス・チューダー
ウィンズロー・チューダー
エイミー・チューダー
【シネマの時間】
アートディレクション・編集・絵・文=諸戸佑美
©︎YUMIMOROTO
本や広告のアートディレクション/デザイン/編集/取材執筆/イラストレーションなど多方面に活躍。