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それでも私は、夫との恋愛をやめたくない

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「産後クライシス」という言葉があるように、子供ができてから夫婦関係が悪い方向へと進んでいくことがある。けれども、大泉りかさんはどれだけ子供がかわいくても、お互いが持つ「恋人」という役割を終わらせたくないと話す。いつまでも「恋人のような夫婦」を目指すために大泉さんが大切にしたいこととは――。

それでも私は、夫との恋愛をやめたくない

わたしが目指す、理想の関係のひとつに「恋人のような夫婦」がある。

相手のことは、いつまでも男性として見ていたいし、相手からは、女性として見られていたい。夫も同じ考えだった。だから、互いの望み通りに、結婚してこれまで、恋人同士のように付き合ってきた。ところが、息子が生まれたことで、その関係に変化が生じることになった――。

妊娠中、お腹の子が「男」であることを告げたときに、同じく男の子を持つ先輩ママたちから言われたのは「女の子も、もちろんかわいいけれども、男の子は、本当にかわいい」ということだった。「男の子は、女の子に比べると少しヤンチャで、その上に体力だけはあり余るから、育児は大変だけど、まるで恋人のようだ」とまで言う。

しかし、わたしにとっては恋人というのは、「一番深くコミュニケーションできる、平等な立場の異性」という位置づけだ。だから、恋人扱いはありえないと思った。親と子では、立場が圧倒的に違いすぎる。

やがて、出産予定日から2週間遅れて、予告されていた通り、男の子が生まれた。最初の1週間は同じ病室で過ごし、退院した後、保育園通いが始まるまでの2カ月半の間、日中はずっと腕の中や膝の上に抱き、夜はぴったりと寄り添って寝た。

こんなにも人とずっと肌を合わせていたことはない。それでも「まるで恋人のよう」というわけではなかった。息子は圧倒的に小さくて弱く、すべての世話をわたしたちがしなくてはならない存在だった。だからこそ、「自分の子」以外の何者でもなかった。

■夫と過ごす週末は、いつしか息子と過ごす週末に

しかしその間、息子のケアに時間に割かれて、夫とふたりきりの時間は皆無となった。もともと夫とは、結婚前も結婚してからも、週に一度は必ずデートをしていた。

映画を観て外食をする。いつもお決まりのワンパターンなデート。丸8年の間、それに不満はなくいつも楽しく過ごしていた。けれども、出産を機会に、それが一切できなくなったのだった。

代わりに週末は、息子と過ごすようになった。今週の土曜日は公園で遊び、日曜日は区の子育て支援イベントに行く。来週の土曜日はフリーマーケットを覗いて、日曜日はママ友の家にお邪魔する。まるでデートのプランを練るがごとく、毎週毎週、行き先を考える。

まだ0歳児の息子は、「どこに行きたい、なにがしたい」と自分の意思を発することはないから、すべてはわたしが連れて行きたい場所や用事に付き合ってもらっている形だ。

けれども、赤ちゃんという生き物は好奇心旺盛で、どこに連れていってもきょろきょろと物珍しそうにあたりを見回している。疲れて寝てしまうこともあるけれど、それでも腕の中で体温が感じられるから、「一緒に過ごしている」という充実感は十分に味わうことができる。

おでかけデビューをしたころは、いざというときに困らないようベビーカーに大量の荷物を積んで外出していたから、一緒に出かけるのは少し大変だった。

けれど、今では最低限の荷物だけを積んで、息子を前抱っこして自転車に乗って身軽に出かけられる。以前はすぐに泣いたし、その原因もわからずに途方に暮れることが度々あった。でも今は、ほぼ理由がわかるから、対処できる。

おでかけが楽になり、次いで息子の反応も目覚ましく増えてきた。何か気にかかったことがあれば掴もうとして手を伸ばし、楽しいとキャッキャと声をあげて笑う。

わたしが与えたものをきっちりと受け取って、喜んでくれる息子の姿にだんだんとコミュニケーションが取れている実感が湧いてきた。

■夫との恋人関係は、これからも続けていきたい

そうなってくると、夢がどんどん広がった。「来年の今頃は息子と一緒に海外に1週間か2週間、滞在するのはどうだろうか」といった、そういう夢だ。

夫は仕事があるから、あまり長い期間、日本を離れることは難しし、お互いその国でやりたいことや、行きたい場所を話し合って、擦り合わせなくてはならない。

旅は楽しいけれども、それは一苦労でもある。けれども息子とふたりなら、自分が行きたい期間、好きな場所に行けるし、ひとり旅行のように時折寂しさを感じるといったこともない。そう、息子はパートナーとしても非常に、素敵な存在なのだ。

しかし「息子とふたりでプチ海外留学しようかな」……ということをちらりと口にしそうになって、はっと気づいた。ひょっとしてこれが、息子を恋人扱いしているということではないか、と。

「家族」というユニットの中で、わたしが「母親」であるのと同じように、夫には「父親」という役割がある。けれども、夫は「父親」になったからといって、わたしの「恋人」の役割をやめたいと言い出したわけではない。

もちろん、夫が納得すれば、「恋愛を抜いた夫婦の形」を新しく構築していく選択肢もある。けれども、なんの話し合いもせずに「息子のほうが都合がいい」という理由だけで、一方的に恋人関係を解除するのは、身勝手すぎるように思えた。

わたしだって、家庭の中で「母親」という役割だけで満足しろと言われたら嫌だ。なのに、息子に夢中になりすぎて、夫から「恋人」の役割を取り上げてしまうところだった。

いつか息子にだって、息子自身が選んだ相手を、恋人としてパートナーにする日が来る。そのときにきちんと手を離すためにも、わたしのパートナーとしての役目は、夫に担い続けてもらったほうがいいと思うのだ。だからわたしは母になっても、夫と恋人関係にあること、夫と恋愛をすることは、やめたくない。

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大泉 りか

ライトノベルや官能を執筆するほか、セックスと女の生き方や、男性向けの「モテ」をレクチャーするコラムを多く手掛ける。新刊は『女子会で教わる人生を変える恋愛講座』(大和書房)。著書多数。趣味は映画、アルコール、海外旅行。愛犬と暮...

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