“輝く女性”は幸せになれたのか
“女性が輝く社会に”安部政権が掲げたマニフェスト。 確かに稲田朋美防衛大臣や小池百合子東京都知事、蓮舫民進党代表など、政治の世界で要職に就き活躍する女性や、企業の管理職や経営者になる女性も増えました。そんな”輝く女性“のロールモデルのような存在になれた女性たちは幸せを感じているのでしょうか。3人の女性を取材しました。
38歳バツイチ、子供なし。家業を継いだ2代目社長 咲恵さんの場合
「私、恋愛体質なんです」
抜群のスタイルにラップドレスを身にまとった咲恵さんは38歳のバツイチ。お子さんはいません。
「バツはひとつですけれど事実婚の関係だった彼が2人居て実質バツ3みたいなものです(笑)」
咲恵さんの実家は地元ではちょっと有名な料亭。遠くから観光客が訪れる人気店ですが最近はインバウント効果で外国人観光客も多く訪れるそう。
大学卒業後IT系の会社でエンジニアとして働いていた咲江さんはWEBに強く、28歳で家業の料亭を継いだ後にWEB集客で料亭の売上を倍以上伸ばしたやり手。
自治体と組んだコラボレーション企画やメディア取材の誘致などのPRブランディング施策で一時は廃業もやむなしと言われていた料亭を復活させ、地元ではちょっとした若手の名士です。
「私の理想は仕事もできて女としても魅力があるキャリアウーマンです。仕事でも実績を上げたいけれど同時に恋愛も楽しみたいんですね」
少し長めに引いたアイラインがエキゾチックな顔立ちに似合い、そんなセリフも“そうでしょうね”と納得の妖艶な魅力の美魔女の咲江さん。理想を実現させている “輝く女性”咲恵さんに今の本音を聞いてみました。
年齢を意識しなくてはならないキャリアと出産の両立
―理想を実現させ、今幸せですか?
「はい。好きな仕事をしながら彼もいますし仕事では新しいお話や拡張の計画もあって充実感を感じていますね」
仕事と恋愛。24時間という時間を平等に配られている中、その両立は簡単ではありません。しかも、仕事と恋愛どちらかにマイナスなことが起きたときにマインドリセットをしながらもう一方に対峙していく気持ちのコントロールは男性より情緒的で感情的な性質が強い女性の方が難しいもの。咲恵さんは見た目と異なり、男性性質が強く仕事と恋愛で受けるメンタルな影響を最小限にできるタイプなのでこうしたコントロールが上手いのでしょう。
―逆に、自分の人生を今振り返って、後悔したり、もっとこうしておけばよかったという事はありますか?
「最初の結婚のときに子供を作っておけばよかったとは思います。38歳という年齢を考えるとこれから子供を作れるのかな?とか、その人の子供が欲しいという人と出会えるかを考えると不安を感じます。好きな人はすぐ出来るし、付き合いたいと言ってくれる人もそれなりにいつも現れますが(笑)子供を作るとなると結婚しなくてはと思うんですが、そこまで好きな人は現れない気がして(笑)」
咲恵さんのようにキャリアも恋愛も充実している輝く女性はとても増えました。
けれど時間はあっという間に過ぎていきます。
キャリア、恋愛、結婚、出産のライフプランを立てるときに年齢的な制限がかかるのが出産です。
記録によると日本での自分の卵子による最高出産年齢は49歳です。今は対外受精や凍結卵子など色々な方法が出てきているので出産限界とされている年齢も上がっていくのでしょうが、それでも出産できる年齢に制限はついてきます。
もしかすると今すでに20代の女性の卵子凍結保存の標準化、妊活休暇権利など、キャリアと出産の問題に対する具体的な解決策が必要な時代になっているのかもしれません。
けれど、自分が“得ていないもの“ではなく”得ているもの“の価値を感じながら毎日過ごしていると笑顔で言い切った咲恵さんの笑顔は輝いていました。
47歳シングル、結婚歴無し。上場企業管理職 夕子さんの場合
「気が付いたら40代後半になっていたという感じです」
そう笑う夕子さんは上場企業の管理職。理系の大学を卒業後、現在の会社に入社してからはずっと研究畑を歩いてきました。
「研究所って基本、辺鄙(へんぴ)なところにあるんですよ。周りに遊ぶところがあまりないし、そもそも研究員は結構遅くまで残業してしまう上、泊まり込みも珍しくない時代だったから社外での出会いは全くなかったですね」
―社内での出会いはありましたか?
「ありました。でも既婚者だったんです。当時の上司でした。私が好きになってしまって、いけないと思いつつも一緒にいる時間が長いので自然な流れで付き合い始めました」
―その彼とは?
「10年位付き合いました。でも結局終わってしまいました。別れはもめませんでした。最後は熟年夫婦のような関係でしたから恋愛感情が冷めてしまって。おたがい続けていく意欲がなくなってしまったんですね。ちょうど私もプロジェクトリーダーを任されたキャリアアップのタイミングで、恋愛よりも仕事のほうが楽しくなってきていましたし」
―不倫関係は職場や彼の家庭にばれなかったのですか?
「ばれませんでした。職場が一緒だと一緒にいる時間が長いので特にどこかに出かけるよりも私の家に彼が来てゆっくりすることが多く、人目に付かなかったのかもしれません」
男性が多い職場では数少ない女性への男性からのアプローチは少なくありません。起きている時間のほとんどを過ごす職場は社会人の出会いの場としては最も自然でスタンダードなもの。
さらに職場ではお互いをよく知る機会が十分あるため、恋愛関係になると独身同士は結婚する確率が高くなりますが不倫関係も社外での出会いより長続きしてしまいます。
“おひとりさま”夕子さんの後悔と幸せ
―近い将来役員候補と言われていますね。キャリアで結果を着実に出している今、幸せですか?
「うーん。好きな仕事ができて評価されているので恵まれてるかなと感じています。マンションも買って一人で生きていく覚悟もできてます(笑)」
―逆に、自分の人生を今振り返って後悔したり、もっとこうしておけばよかったという事はありますか?
「彼と付き合わなければちゃんと結婚していたかもしれないなと思います。
20代だった私は大人で優しい彼に夢中になってしまいましたが、今、昔の私にアドバイスできるなら、“婚期を逃すからやめなさい”と止めますね(笑)」
不倫の代償で一番大きいのは取り返せない時間そのものなのかもしれません。
けれど、仕事のキャリアを確実に積み上げてきた夕子さんにとって老後の経済的な不安はありません。そして今は離婚やパートナーと死別した人たちの第二婚活が活況なので47歳の夕子さんにこれから新しい出会いがある可能性は十分あります。
―今は45歳以上の第二婚活ブームなんですよ。十分これから出会おうと思えば出会える手段やチャンスがあると思いますが、いい人がいたら結婚したいですか?
「結婚はしなくてもいいけれどパートナーは欲しいですね。事実婚のような関係で十分かもしれません」
若い時はキャリアを充実させることに時間を費やして経済力を持ち、落ち着いてから入籍にこだわらず事実婚のパートナーと生きていくというスタイルもひとつの選択肢なのかもしれません。
週末は、歌舞伎仲間と観劇に行く予定だと楽しそうにパンフレットを見せてくれた夕子さん。
歌舞伎の魅力を話す夕子さんは仕事だけでなく好きな趣味も見つけて充実した“おひとりさま”ライフを堪能していました。
53歳既婚・子有り。料理教室主宰 まさ美さんの場合
「最初は趣味だったお料理をお友達に教えていただけなんですが、口コミで評判になって少しづつ生徒さんが増えたので小さな教室にしたんです」
53歳のまさ美さんは上品なマダムという雰囲気の女性。控えめに微笑むまさ美さんの料理教室は東京の高級住宅街にあり、料理だけでなくテーブルセッティングから学べるためホームパーティー好きなセレブなマダム達の間で評判です。
「主人が大学病院の医師でとにかく忙しくて家庭のことや子育ては私に任せきりでした。だから働くなんてことは全く考えていなかったんです」
二人のお子さんが成人してからは子育てがひと段落し、ふと気が付くと家で一人という時間が増えていったそうです。
「主人は仕事人間で付き合いやゴルフなどで休日もほどんど家にいないし、私はお友達と出掛けるくらい。子供たちも成人しているので家にいないことが増えて暇を持て余していたんです。そんな時に以前お料理を教えた友達から教室でも開いたら?とアドバイスされて最初は知り合いを集める程度の小さな教室を開いたんです。」
まさ美さんの料理教室は口コミで徐々に評判となり、いつの間にか雑誌やメディアから取材されるような人気教室になりました。今では料理本の監修やお弟子さんを持つ人気料理講師の一人です。
人から必要とされる幸せを感じているけれど後悔もある
―専業主婦からの人気料理教室主宰となったまさ美さんは今幸せですか?
「すごく幸せです。色々な人に喜んでもらえて、人から必要とされる実感は専業主婦の時代に感じられなかった幸せです」
―逆に、自分の人生を今振り返って、後悔したり、もっとこうしておけばよかったということはありますか?
「ふたりの子供に恵まれたことは私の人生にとって最も嬉しい出来事ですが、専業主婦でいた期間が長すぎたかなと後悔しています。
あの頃は専業主婦として子供の母親として生きて行くことしか選択肢がないと思い込んでいましたが、視野を広げて回りを見ていたら色々な生き方ができることにもっと早く気付けたのかなと感じています」
まさ美さんの様に遅咲きでも大輪の花を咲かせることはできます。
けれど咲いた花が大きければ大きいほど、もっと早く咲くことができていたらさらに大きくなれたのではないかと想像し後悔することも。
それでも仕事で成功をおさめ、素敵なご主人にも恵まれたまさ美さんにとって一番の宝物は二人のお子さんだそうです。
「子育ては大変なこともありましたが今は楽しかったことしか思い出せません。子宝に恵まれて親になれたことが私にとって一番の財産です」
お子さんの話をするときは、母の顔に戻るまさ美さん。何が大切かと聞かれ、迷わず言い切るものを持っている人は一本芯が通ったようなぶれない幸せを手にしているように感じました。
“得られなかったもの”ではなく“得たもの”を感じている
人が死を目前にして後悔することは、やらなかったことやできなかったこと。
失敗や傷ついた出来事も、やったことやできたことは、時の洗礼を受けることで思い出になります。
輝く女性達は、自分たちが出来ることを”やる“という選択を重ねてきました。その時々で選択をすることで失ったものや犠牲にしたこともたくさんあったのでしょう。
けれど何かを得る時は何かを失うときです。
得られなかったものではなく得たものを感じていた3人の輝く女性たち。
今回取材した3人の女性からは、それぞれが感じている幸せが伝わってきました。