昭和60年の総務省統計局の調査によると全世帯数のうち582万世帯が夫婦のみの家族構成で、中でも共働きは35.8%(208万世帯)である。このうち子供を当面いらないと夫婦がお互いに了解しているカップルがディンクだ。
『DINK式結婚宣言 子供をつくらない、ボクと彼女のスタイル』(グループS.S.W.著書・光文社刊)
共働き&子なし夫婦の形「DINKs」を、あなたはどう思う?
従来の結婚観にとらわれず、夫婦で自発的に共働き&子なしという選択をする「DINKs(ディンクス)」。今回はDINKsという夫婦の形と、登場から30年経ったその現状について紹介したい。
「19世紀に結婚制度が成功したのは、人間が50年しか生きられなかったからである」
これはアメリカの社会学者ジョージ・ハーバート・ミードの言葉である。21世紀に入ってから結婚制度への疑念の声は、より多く挙がっているように思う。
■DINKs(ディンクス)とは?
DINKsはそんな従来の結婚観を打ち破る新たな男女の関係性として、1980年代後半にアメリカから日本に伝わり浸透した。
DINKsとはDはDoubleの頭文字、IはIncomeすなわち収入、NはNoで、KはKids=子供の略。夫婦共働きで自発的に子供を産まない選択をする夫婦のことである。
DINKsについて日本で初めて詳述された書籍と言われる、グループS.S.W.の『DINK式結婚宣言 子供をつくらない、ボクと彼女のスタイル』によると、80年代のDINKsの実態についてこう記されている。
ちなみにDINKsの対極として、ワンインカム・ツーキッズOne Income Two KidS ― OITKS(オイティクス)という言葉もある(アメリカのオリジナルではワンインカム・メニィキッズ ― One Income Many KidS ― OIMKS)。
■現代の日本でも増え続けている、DINKsという結婚の形
ではDINKsという言葉が誕生し30年ほど経った今、日本にはどれくらいの割合でDINKsが存在するのだろうか?
平成24年度就業構造基本調査によると、全世帯2854万8千世帯のうち、夫婦共に有業の世帯(夫婦共働き世帯)は全国で1297万世帯で全国45.4%。つまり、共働き世帯はこの30年で208万世帯から1297万世帯と6倍にまで膨れ上がっているのだ。
そして、DINKsに限ると平成24年時点で362万世帯にものぼり、増加していることがわかる。
■人々がDINKsを選択する理由
多少の形を変えながらも現在まで増加を続けているDINKs。人々が共働きで子供を産まない選択をするのはなぜなのか?
ひとつには、経済的理由があるだろう。子供を育てるとなると、莫大なお金がかかってくる。
私立の学校に入れることを考えたら相当な金額が必要となる。そうなると自分たちの自由にお金を使うのが難しい。その点、DINKsであれば稼いだお金を自分たちのために自由に使えるので、メリットと考える人は多いのだろう。
ふたつ目には、時間的な余裕が欲しいという夫婦が多いこと。
昔に比べ子育て支援制度が整備されたとはいえ、働きながら子供を育てるのは大変なことだ。専業主婦になれるほど男性が稼げた時代であれば問題なかったのかもしれないが、現在はそうもいかない。核家族化が進み周りからの支援も難しいと、共働きでの子育ては困難だ。
もうひとつ、自身のキャリア形成のためにDINKsを選択する夫婦は多い。
出産、育児をするとなると、女性はどうしてもキャリアがストップしてしまう。どんなに仕事ができても同じ年の男性陣に出世で先を越されてしまうことになる。
これは考えてみれば不平等なことだ。自身のキャリアを大切にしたい、これまでの努力を無駄にしたくないと考えるからこそ、DINKsという選択をする女性は多いのだろう。
■DINKs登場から30年経って結婚観は変わったのか?
DINKsが登場した80年代には、従来の結婚以外を選択する人々に対して批判の声が多くあった。しかし、それは30年経った今でもあまり変わっていないように思う。
独身であれば「いい人はいないの?」「いつ結婚するの?」と周りから言われ、やっと結婚したと思ったら今度は「子供はいつ産むの?」だ。未だに日本では「妙齢の男女は結婚すべき」「結婚こそが幸せ」「結婚してこそ一人前」「結婚=子供を産むのが当たり前」と認識されている。
国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、2035年には夫婦のみの世帯が総世帯の21.2%を占め、DINKsのさらなる広がりが予想されている。
その頃には今よりも多くの人が周りの声に惑わされず、自分の幸せの形を実現しやすい世の中になっていてほしいと思う。
共働き、そして子供を持たないという結婚の形をあなたは、どう思いますか?
【出典元】
・グループS.S.W.著(1987年)『DINK式結婚宣言 子供をつくらない、ボクと彼女のスタイル』光文社
【参考文献】
・渡辺和博、タラコプロダクション著(1988年)『夫婦鑑 DINKSの波に洗われる日本の若き夫婦たち―その生活と思い』徳間書店
・平成24年度就業構造基本調査
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/pdf/kgaiyou.pdf