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映画『おとなの恋の測り方』感想。「オトコの価値は、何で決まる?」突極の選択に、彼女が出した答えとは?

アカデミー賞俳優ジャン・デュジャルダンが贈る”逆身長差”フレンチ・ラブストーリー映画『おとなの恋の測り方』が6月17日(土)より全国で公開されます。【シネマの時間】第8回は、監督のローラン・ティラール氏にアートディレクターの諸戸佑美さんがインタビュー! 制作秘話や魅力を語っていただきました。

映画『おとなの恋の測り方』感想。「オトコの価値は、何で決まる?」突極の選択に、彼女が出した答えとは?

南仏マルセイユを舞台に粋でハートウォーミングな極上の ”逆身長差” フレンチ・ラブストーリー『おとなの恋の測り方』がついに日本公開!

主人公は、離婚経験があり美人で仕事もできる敏腕弁護士のディアーヌと、世界を股にかけ活躍する建築家のアレクサンドル。

彼は知的で優しくお金持ち、ほとんどパーフェクトなナイスガイですが、たったひとつだけ弱点が……。

アレクサンドルを演じるのは、映画『アーティスト』でフランス人俳優として初めてアカデミー賞主演男優賞を受賞した演技派、ジャン・デュジャルダン!

ディアーヌ役は、フランスでロマコメの女王として人気急上昇中のヴィルジニー・エフィラが演じ本国フランスでは「ときめきコンビ」と称されるふたり。

そして、メガホンをとったのは、2010年監督作品『プチ・ニコラ』がフランスで観客動員552万人を超える大ヒットを記録したローラン・ティラール監督。

【シネマの時間】第8回は、その才能溢れるローラン・ティラール監督のインタビューを中心にフランス映画『おとなの恋の測り方』の魅力をお伝え致します。

「オトコの価値は、何で決まる?」突極の選択に、彼女が出した答えとは?

■映画『おとなの恋の測り方』あらすじー南仏マルセイユが舞台。 “逆身長差” フレンチ・ラブストーリー

女たらしの夫と離婚して3年、新しい恋から遠ざかっている辣腕弁護士のディアーヌに、建築家のアレクサンドルという男性から電話がかかってきます。

ディアーヌがレストランに忘れた携帯電話を拾ったので渡したいというアレクサンドルの知的でユーモアあふれる口調に、仕事でむしゃくしゃした気持ちも一変し、アレクサンドルにほのかなときめきを覚えたディアーヌは、さっそく翌日に彼と会う約束をします。

久しぶりにドレスアップし、期待に胸を躍らせ待っているディアーヌ。
ところが目の前に現れたのは、彼女よりもずっと背の低い男性だったのでした……。

期待がはずれたディアーヌは、早めに切り上げて帰るつもりが、茶目っ気たっぷりのアレクサンドルの話術にいつしか魅了されていきます。

ディアーヌに好意を持つリッチで知的な才能溢れるアレクサンドルは、彼女に今までに経験したことのないエキサイティングな体験をプレゼントしたいと申し出るのです。

ちょっと強引でスマートなフランス男性の本領発揮!

「一緒に、すごい体験をしに行こう。人生が変わるくらいのね。」

こんなこと言われたら、ディアーヌでなくても好奇心を刺激されて嬉しい気持ちになりますよね。

人間誰しも完璧な人なんていないもの。だからこそ幸せを掴むチャンスは、どんな人にだってあるはず。

太陽の光が降りそそぐ南仏マルセイユを舞台に、粋でハートウォーミングな極上のラブ・ストーリー! 大人の恋の行く末をぜひ映画館でお楽しみください!

■ローラン・ティラール監督インタビュー

さて、ここからは映画『おとなの恋の測り方』の監督を務めたローラン・ティラールのインタビューの様子をお届けします。映画が作られた背景や、制作秘話、主演俳優のふたりの魅力や映画のみどこまでたっぷりとご紹介。

ぜひ最後までお楽しみください!

アルゼンチンの映画作品をフランス風にリメイク

――どのようにしてこの映画化のアイデアが生まれたのですか?

この映画は、あるアルゼンチンの映画をリメイクして生まれたんです。この映画の存在を知った時、素晴しい作品だな、コメディだけれどもとっても美しいラブ・ストーリーだと思ったのです。

おとぎ話のようで、人間の違いをテーマにした素晴らしい物語になっている。けれども、もとの作品は南米文化の映画だったので、ヨーロッパでこのままやってもウケないと思いました。

南米文化とヨーロッパのフランス文化は随分違うので、フランス文化に合うようなアレンジをすることにしました。

主演俳優ふたりのアドリブシーンもみどころ⁉

――なぜ、主演のジャン・デュジャルダンとヴィルジニー・エフィラをキャスティングしたのでしょうか?

まず最初にジャン・デュジャルダンの方が思い浮かびました。この映画は、おとぎ話のようなところがあるので、彼でないとダメだと思いました。

プリンスみたいにカッコよくて、全てにおいてパーフェクトなんだけれども、身長だけが弱点という、魅力的な男性であるというのが大事だったんです。

ディアーヌ役は、全くどういう女優さんがいいか思い浮かびませんでした。なので普通にオーディションして数人の女優さんに演技をしてもらったんです。

女優の方々に演技をしてもらった時、ヴィルジニー・エフィラのとても愉快でありながら、人をホロリとさせる魅力に惹き付けられました。

このふたりの共通点は、ものすごく仕事熱心で本当にプロ意識が高いということですね。

――ふたりの何か印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

ふたりが最初に隠れ家的なレストランでディナーをするシーンがあるのですが、あそこは完璧にアドリブでやってもらったんです。ディアーヌが苦虫を嚙み潰したような変顔をするところなんかは、彼女が自由にやってくれたんですよ(笑)。

監督が選ぶお気に入りのシーンとは?

――なぜ映画の舞台に、南仏マルセイユを選んだのでしょうか?


パリを舞台にした映画はありすぎるほどです。今回はおとぎ話的な一面を持つ作品の魅力を引き出すため、同じ大きな都市でも、誰にでもすぐわかるような場所ではなく、あまり知られてないマルセイユにしようと思いました。

それからもうひとつ大事だったのが太陽がいっぱいあるということ。
現実に根ざしたというよりも、少し夢を見るような雰囲気のある作品だったので、太陽の光がたくさん降りそそぐ、というイメージが必要だったんです。


――主人公のアレクサンドルには息子がいますが、親子で卓球をするシーンなど父と息子の関係も素敵です。親子の関係に込めた想いについても教えてください。


実は、このシーンはもともとアルゼンチン映画にはなかった部分なんです。フランス映画にリメイクする時に私が加えたシーンなんですよ。

あのシーンで描きたかったのは「価値観の継承」。それから「息子が大人に成長していく過程における親子関係」です。

ビジュアル的にはお父さんの方が大人なんだけれども、身長は子供みたいに小さい。でも実は凄く円熟したものを内面に持っています。

息子の方は、背は高いのだけれどまだ未熟。何かに依存しているようなところがあって、それでも少しずつ大人になっていく。

こうしたふたりの親子関係を描きたかったんです。

――なるほど。「親子関係」を大切に表現されているシーンなんですね。

アレクサンドルと息子の卓球のシーンを取り入れたのは、やっぱり映像で見た時に背丈の違いとが一目でわかるからです。

テニスやサッカーだと身長の違いがなかなか伝わらない。でも卓球であれば、台をはさんでお父さんの小さな身長が伝わりやすいと思いました。


――監督自身の心にとくに残っている気に入りの場面はありますか?


ひとつだけ挙げるのであれば、ディアーヌの両親とのディナーの後に、アレクサンドルとディアーヌのふたりが夜道を歩いているシーンですね。

あのシーンで彼らは、自分たちの本音を語り合っています。それが本当に感動的で、とりわけアレクサンドルのこれまでの苦悩というのが手に取るようにわかるんですよ。このシーンが一番好きです。

女性の魅力は、胸の内に秘めている勇気

――この映画を観る人に感じとってほしいことは何でしょうか?

私たちは誰もが他の人とは違い、同じ人間はこの世の中にいない。
でもきっと他者に対して自分の方がちょっとダメかなとか劣等感というのを、みんながどこかで感じていると思うのです。

主人公のアレクサンドルは、低身長であることでまわりから奇異な目で見られることもあり、劣等感に苦しんでいますが、それに卑下することなく知性やセンスを磨き、それを乗り越え今や世界的に活躍する建築家であり人望もあります。

苦しさがわかるからこそ他人の痛みにも敏感で、愛をもって接することができる優しさを感じてほしいと思います。
 

――映画では、男性の価値について描かれていますが、監督にとっての女性の魅力(価値)とは何ですか?


この映画の中に登場する女性の価値(魅力)は、胸に秘めている勇気だと思います。

アレクサンドルは身長が小さいという劣等感を感じていますが、それを乗り越えていこうとする勇気を持ち努力しています。そしてディアーヌにも、他人の目を気にしないで、それを受け入れようとする勇気がある。

自分の感情に素直になって、それを伝えようとする。真実の心を相手に伝える勇気を持っています。そういうところが男性もそうですが女性の価値(魅力)だと思います。


(インタビュー/諸戸佑美、フランス語通訳/人見有羽子)

■Laurent Tirard /ローラン・ティラール監督ープロフィール

1967年2月18日、水瓶座、フランス生まれ。

ニューヨーク大学で映画の勉強をし、芸能ジャーナリストとして働き、1999年に短編映画で監督デビューを果たす。

ウディ・アレン、マーティン・スコセッシ、ジャン=リュック・ゴダール、ロマン・ポランスキーなどの映画作家たちのインタビュー集「Leçons de cinéma」を出版。

脚本・監督を務めた『モリエール 恋こそ喜劇』(10)は第33回セザール賞脚本賞にノミネートされる。

監督作品『プチ・ニコラ』(10)がフランスで観客動員552万人を超える大ヒットを記録。

本作ではグレゴワール・ヴィニュロンと共同脚本を務めている。

■映画『おとなの恋の測り方』作品紹介

6月17日(土)より全国ロードショー!
公式ホームページ http://otonanokoi.jp
©2016-VVZ PRODUCTION-GAUMONT-M6 FILMS

原題:Un homme à la hauteur
製作年:2016年
製作国:フランス
映倫区分:G
配給:松竹
上映時間:98分
監督:ローラン・ティラール
原作:コラゾン・ド・レオン
脚本:ローラン・ティラール、グレゴワール・ビニュロン
撮影:ジェローム・アルメーラ
美術:フランソワーズ・デュペルトゥイス
衣装:バレリエ・アウティグ=コルノ
音楽:エリック・ヌブー
楽曲提供:エミリー・ガサン

■映画『おとなの恋の測り方』キャスト

ジャン・デュジャルダン=アレクサンドル
ヴィルジニー・エフィラ=ディアーヌ
セドリック・カーン=ブルーノ
ステファニー・パパニアン=コラリー
セザール・ドムボイ=ベンジー
エドモンド・フランキ=モニク
マノエル・ガイヤール=ニコル
ブルーノ・ゴミラ=フィリップ

【シネマの時間】
アートディレクション・編集・インタビュー・絵・文=諸戸佑美
©︎YUMIMOROTO

諸戸 佑美

本や広告のアートディレクション/デザイン/編集/取材執筆/イラストレーションなど多方面に活躍。

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