DRESSな女の買い物術
自分の目や舌で価値を決めるスマートな消費者になってこそ、DRESSな女性です。
ちょっと前のことだけど、食材の偽装事件で、各テレビ局が様々な実験をしていたのが面白かった。
ある番組では、手ごねハンバーグと機械でこねたハンバーグを比べて、街行く人たちにどちらが美味しいかと問うていた。たしか50名中38名くらいが、「柔らかさが違う」とか「味に深みがある」といったコメント付きで、手ごねハンバーグに軍配をあげた。ところが、実際はどちらも同じ、機械でこねたハンバーグだったのだ。番組としては、“手ごね“と聞いただけで美味しいと感じる人がこんなに多いと証明したかったのだろうけど、それ以上に、多くの人が「舌」より「頭」で味を判断していることが浮き彫りになった。
別な番組では、同じ料理人が作った2皿のエビのチリソースについて、2組のカップルにどちらが美味しいかを尋ねていた。Aの皿は芝エビ、Bの皿はバナメイエビを使っていたが、食材については知らせていない。
中年のご夫婦は「Aのほうが美味しい」と言ったが、若いカップルは「Bのほうが普段食べ慣れた味で美味しい」と答えた。しかし、自分が美味しいと感じたバナメイエビは、芝エビに比べてうんと安いと知ったとたん、若い女性は「味もわからないのに、こういうお料理食べちゃいけないですね……」と悲しそうに言ったのだ。
本来、この質問には正解はない。どちらが美味しいと感じたかを尋ねているだけなのだから。しかも彼女は「普段食べ慣れた味で美味しい」と答えている。今、世の中には芝エビよりもバナメイエビの方が多く出回っているらしいから、彼女の評価は至極正しいのだ。自分が美味しいと感じたものが、安く手に入るなら、それはいいことなんじゃないの?と思ったけれど、どうやら彼女の中では違うらしい。
価格というのは、原則的に需要と供給の関係で決まる。つまり数が少なくて、それを欲しがる人が多いと高くなるのだ。芝エビは最近あまり捕れないらしく、だから(ホンモノであれば)値段が高い。でも、だからといって、安いバナメイエビが美味しくないということにはならない。現に、プリプリなのは芝エビではなく、バナメイエビという話もある(参考:http://www.asahi.com/articles/TKY201311200572.html。値段と美味しさが比例関係にある、という考え自体が幻想なのだ。
だから、もっと自分の感覚に自信を持とう。世の中で高い値段がついているものが、必ずしも自分にとって価値が高いわけではないはず。あるスリランカ人が、「日本人は“定価”がないと買い物できない」と言ってたって聞いたけど、価値を決めるのは買い物する私たち自身。ブランドや値段だけで良し悪しを判断するのは、そろそろやめよう。自分の目や舌でその価値を評価できなきゃDRESSな女とは言えない、と私は思う。