結婚のすすめ?
結婚していない男はダメ、という男の心理。実は、妻は夫のお世話係でいるべきだという理屈を強化したいだけでは。それはダメ女を見下して発散する女と一緒です。
酒に酔って暴力を振るった男性が、被害者に面会したら「結婚しなさい」と諭されたのだとか。事情は知らない。どういういきさつでそんな会話になったのかは私には分からない。ただ、このニュースを読んだときに、なんだかざらっとした後味が残ったのだ。
このケースがどうかはともかく、独身男性を指して「あいつは結婚していないからダメなんだ」という言い方をする男性は確かにいる。
なぜか、女が女に「あの子は結婚していないからダメなのよ」と言うのは聞いたことがない。女は「あの子は結婚していないから分からないだろうけど」とは言うけれど、ダメとは言わない。この男女の違いはなんなのか。
結婚していない男はダメ、という男の心理はどんなものなのだろう。
家族を養う責任感のある男こそが一人前、という思いはあるだろう。責任が生じるから、いい加減な生き方は出来なくなると。それは確かに一理ある。
だけど私は、人によってはそれはあくまでも建前で、本音は違うのではないかと勘ぐってしまう。
もしかしたら、「結婚していない男はダメ」の本音は、俺たち男にはお世話係が必要なのだ、という開き直りなのではないか。
こどものころには、ママがいた。おとなになってからは、セックスがしたいのでママでは困るけど、やっぱりママみたいな人にそばにいて欲しい。だって、お世話してもらえないと僕たち、生きて行けないから。
男ってさ、そういう生きものなんだよ。ご飯作るとか、掃除とか、育児とか、そういうのダメなの。自分で出来ないの。お仕事っていう、大事なもののために一生懸命だからね。そんな僕たちを、励ましてお世話してくれる人がいないとね、僕たち、すぐにダメ人間になっちゃうの。
っていう甘えがないか?自立してない部分をごまかそうとしていないか?
そういう男にとっては、あいつはひとりだからダメなんだ、という言い方は、批判のように見せかけているけど、実は自己弁護だ。妻は夫のお世話係でいるべきだという理屈を強化するために、「だからあいつは」と批判してみせる。
見ろよ、男ってのはさ、お世話してもらえなきゃ、ああいうろくでなしになっちゃうんだよ、だから俺をお世話するのは当然だよ、という女へのアピールであり、俺は真人間であるために、女に母親のようにお世話され続ける当然の権利を持つのだという開き直りに他ならない。
だから女は「あの子は結婚していないからダメ」とは言わないのだ。女の結婚は、男に真人間にしてもらうためのものではない。男はママの代用品にはならないからだ。男の金はあてになるけれど、男がママのように自分の世話を焼いてくれることは、多くの場合、期待できない。
「あの子は結婚していないから分からないだろうけど」はたいてい、好き勝手に生きているように見える女を批判するときに使われる。
そういう言い方をする女にとっての結婚は、我慢だ。私はこんなに大変な思いをして、一生懸命生きている。でもあの女はわがまま放題なんて、許せない。
結婚は面倒なことを抱え込んで、我慢を重ねて生きて行くこと。でも、それこそが私を真人間にしてくれる。この我慢を知らない女は、自己中心的なダメ人間に違いない。という理屈で、「あの子は分からないだろうけれど」という上から目線発言が正当化される。本当は、自由が羨ましいだけなのに。
こうして見ると、「あの子は結婚していないから分からないのよ」女と、「あいつは結婚していないからダメなんだ」男の言い分は、見事に対をなすではないか。ダメ男を味方に付けて甘えを正当化する男と、ダメ女を見下して抑圧を発散する女。
結婚てそういうものだというメッセージを出し続けたら、したくなくなる女が増えるのも、もっともだと思う。