すべての結婚は異文化体験
すべての結婚は異文化体験です。「夫がアメリカ人で……」と言うと「国際結婚は大変でしょう」とよく言われるのですが、どんな結婚も同じ。海外留学や国連勤務、国際結婚など、積み重ねてきた異文化体験は、ハッピーな結婚生活を送るのに大いに役立っています。結婚後もふたりの関係を大事に育てていきたい人へ向けた連載をお届けしていきます。
目次
「すべての結婚は異文化体験」――これは、しばらく前にご縁をいただいて出版した書籍『国際結婚一年生』に書いた一文です。自分のクローンと結婚するのでない限り、人はみんな違う価値観をもった別個の生き物。
私自身、アメリカ人の夫と国際結婚をしていて、よく「国が違う人との結婚は大変でしょう」と言われますが、日本人同士でも、そしてどんなに似たような環境で育っていたとしても、どこかしら違う考え方をしてあたりまえなのです。
■最初から「違い」が明らかな国際結婚
言葉の違いや文化の壁があって大変だと言われる国際結婚ですが、「違いがあることが明白だ」という点では、日本人同士の結婚よりもわかりやすいという面もあるでしょう。
「習慣が違う」「考え方が違う」それでも一緒にいたい、ということで交際し、うまくいった場合は結婚に至るわけですから。ただ一方で、その「違い」の幅が極端に広いことも確かです。
うまくいく人たちは、お互いに「許容できる範囲で違っている」とも言えるでしょう。私がそんな考え方をするようになったのは、10代のときに始まった海外体験が基になっています。
■私の異文化体験歴
高校時代のドイツ交換留学
私は日本で生まれ育ち、初めて外国を訪れたのは高校2年のときです。AFS交換留学生としてドイツに行ったときでした。
11ヶ月間、ホームステイをしながらドイツの学校に通い、慣れない生活でこれでもかという孤独感を味わいましたが、それと同時に、言葉もよくできないアジア人に対して親切にしてくれる人もいるんだと実感しました。
国や文化が違うからこそ味わう孤独もあれば、違いがあっても「同じ人間だ」と感じられる瞬間もたくさんありました。
アメリカ大学院へ留学、そして国連へ
ドイツから帰国後、東大に進学・卒業、そして大学院で今度はアメリカに留学しました。志望通りに国連に就職し、再びドイツへ。
国連という職場では、実に多様な国籍や文化的背景の人と一緒に仕事をしました。最初の上司はエチオピア人でしたし、仕事でアフリカの南部の国に出張に行き、世界の広さ、人間の多様さに触れる機会にもなりました。
世界のあちこちでいろいろな生き方をする人たちに触れ、自分にもできそうなこと、そして絶対にできそうもないこと、という許容範囲のラインもだんだん明確になっていきました。
アジア系アメリカ人夫との出会い
ドイツ勤務の後、日本の事務所での勤務になり、趣味を通じて現在の夫となった人に出会いました。当時の私はスウィングダンスに夢中で、将来のパートナーとなる人はダンスができる人でなければと強烈に思い込んでいました。
外国人である彼と結婚することで起こってくる「人生の不都合」はなんとなく視野には入っていたものの、それらが「一緒に踊れる人」という未来像より優先されることはありませんでした。当時28歳で若かったこともあり、「またアメリカで再出発してもなんとかなるだろう」という気持ちで結婚し、国連を退職して渡米したのです。
12年に渡るサンディエゴ生活
仕事を辞め、結婚してアメリカに移住したものの、最初の数年間は、日本にいたときの自分と、アメリカにおいて「移民」「アメリカ市民の妻」という立場でしかない自分のギャップに苦しみ、アイデンティティ・クライシスを味わいました。
今までの学歴もキャリアも通用しない世界。『国際結婚一年生』は、このときの経験があったから生まれた本でもあります。
楽しさの中でも悶々とした日々でしたが、渡米して4年目に入った頃、今までの経験やスキルを使えて、キャリア形成という点からも申し分のない仕事に就くことができ、それとほぼ同時期に妊娠しました。
仕事と子育てに追われ、あっという間に月日が流れていました。
■うまくいくカップルとそうでないカップルの違い
夫との結婚生活は、すべての夫婦関係につきももの山や谷はありながらも、大体において順調でした。もちろん、異文化体験なりのチャレンジはありますが、それらは冒頭にも書いたように、国際結婚だからというよりは、違う考え方をもった他人と家族になることを選んだからこそのチャレンジです。
一方で、サンディエゴで暮らしていくうちに、周囲でうまくいかずに苦しんでいるカップルに数多く出会い、うまくいくカップルとそうでないカップルは何が違うのか? ということを常日頃考えるようになりました。
そして、いずれは他の国で暮らしたいと考えてコーチングの資格を取る勉強をしているときに、結婚やパートナーシップをテーマに仕事をすることに決め、現在に至ります。
■結婚生活を続けることは、意思を持ってふたりの関係を育てていくこと
約2年前の春頃、ルミネの広告に使われたコピーに「恋は奇跡、愛は意思」というものがありました。私も、結婚生活を続けるというのは、その相手を毎日パートナーとして選ぶことだと思っています。
好きな人と結婚して、結婚した相手を好きでいること。どうすればそれが可能になるのか、日夜研究しています。
「非婚時代」ともいわれる昨今、せっかく結婚してもいいかな? と思える相手と出会うという奇跡が起こったなら、結婚した後も、その大事な関係を意思をもって育てていこうという方のお役に立ちたいという気持ちで、これからDRESSで書いていきたいと思います。