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子供がいない=幸せじゃない、なんて誰が決めたの?

子供がいない=幸せではない、と考える人もいるけれど、そんなことはないと思う。子供がいて味わえる幸せもあれば、子供がいないからこそ感じられる幸せもあるのだから。

子供がいない=幸せじゃない、なんて誰が決めたの?

「優しい夫と、かわいい子供に囲まれて、毎日幸せに過ごす◯◯さん……」。家庭を持つ女性を描写する際の定番ともいえる表現だ。

「優しい夫とふたり暮らしの◯◯さん。子供はいないが、夫婦で毎日充実した時間を過ごしている」。こちらも家庭を持つ女性の描写。

ただ、先ほどとは違って、子供がいないと、「でも幸せ」と表現されることが多い。「子供がいないこと」と「幸せ」は逆接の関係なのだろうか……?

■子供がいないことは不幸ではない

幸せな家庭像の典型として、夫婦と子供が揃った様子が思い浮かべられるのは、変なことではないと思う。それを否定する気はない。

でも、子供がいなかったら幸せではないという図式には、はっきりとNOと言いたい。

もちろん、子供がいないと味わえない幸せもあるが、同時に子供がいないからこそ感じられる幸せもあるのだ。

だから思う。子供がいること、いないことに、幸せの優劣はないのだと。

■子供がいないからこそ得られる幸せとは

子供がいない夫婦は、まず、争いごとの種が少ない。子育てが始まるとどうしても、やらなければいけないことが増える。以下は子供を持つ夫婦からよく聞く事柄だ。

そうすると互いに余裕がなくなるし、イライラを募らせたり、ことあるごとに口論になったり、もめごとが増えたりするという。

お互い仕事を持っていれば、どちらが仕事を多少セーブして子育てに時間を割くことになる。ここでもうまく折り合いがつかないと、場合によっては夫婦間の決定的な溝になるらしい。

子供がいなければ、ふたりの間で問題になるのは、せいぜい家事分担くらい。育児と違って人の命はかかっていないので、どちらかが少々ミスしても、そう深刻にはならない。

仕事もお互いに理解さえあれば、ふたりとも好きなようにできる。子供の発熱でどちらが仕事を休むか揉めなくて済む。キャリアを大切にしたい夫婦にとって「夫婦ふたり家族」はのびのび働けるスタイルだ。

旅行や外食も気軽にできる。子供が小さいうちは、旅行の移動手段はどうしよう、宿泊先や食事先は子供連れでも大丈夫なように整っているか、など準備も手間もどっと増える。

外食しようにも、子供OKの店を選ぶから候補が限られてしまうし、お店でも子供に食べさせるのに必死で、結局親は疲れた……という話は珍しくない。

夫婦ふたりなら、思い立ったときサクッと出かけて、好きなところに行って、好きなものを食べ、自分たちのペースで行動できる。とにかく自由だ。

なにより、いつまでもお互いに「男と女」という意識を持てる。もちろん子供がいなくても、結婚生活が長くなればトキメキというより穏やかな愛情に変わっていくし、逆に子供がいてもずっと恋人同士みたいな夫婦もいる。

でも、大方の傾向として、やはり子供がいる夫婦は「父親」「母親」としての役割が強くなり、夫婦として、男女として向き合う感覚は薄れていきやすいらしい。

現時点で子供がいない夫婦で、子供を望んでいる人も多いだろう。中には、願っていてもなかなか授からなくて、苦しい思いをしている人も少なくないと思う。

そういう人たちに、万が一希望通り授からなかったとしても、夫婦ふたりで生きる人生も楽しく幸せである、と少しでも伝われば嬉しい。

子供がいなければ結婚の意味がない、幸せじゃないなんて、そんなふうに悲観的に考えないでほしい。結婚したら、愛する人と、気持ちの上でも、法律の上でも家族になれるのだから。こんな嬉しいことはない。

■「選ばなかった道」を恋しがらないで。自分の道に花を植えればいい

ただし、先述のように、子供がいるからこそ得られる幸せも当然ある。我が子を腕に抱く喜び、自分や配偶者に似ている点を発見しては嬉しくなる喜び、親に孫を抱かせてあげられる喜び、愛する子供が日々成長していく喜び。

膨大な時間と労力は奪われるけれど、言い尽くせない幸せがそこにはあるんだろう。

つまり、子供がいようが、いまいが、幸せなこともそうでないこともある。

なのに、私を含め人間は、どうしても自分が選ばなかった道の景色のほうが美しいと思いがちだ。手に入らなかったものの価値が高く感じられる。選ばなかった選択肢への未練がたびたび頭をもたげる。

でも、ずっとそんなことをしていても虚しい。どちらにもメリット・デメリット両面あることを踏まえた上で、自分にとって重要な価値は何かを、意思を持って選び取ることが大切だ。

そして決めたら、もちろん変更できるならしてもいいけれど、自分の選んだ道の価値に目を向けよう。進まなかった道で見られたかもしれない風景よりも、進んだ道で見られる風景に集中しよう。自分から、道に花を植えるくらいの勢いで。

吉原 由梨

ライター、コラムニスト。1984年生まれ。東大法学部卒。外資系IT企業勤務、教授秘書職を経て、現在は執筆活動をしながら夫と二人暮らし。 好きなものは週末のワイン、夢中になれる本とドラマ、ふなっしー。マッサージともふもふのガ...

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