ワインのマナーを知って、レストランで恥をかかない
ワインのマナー、身についていますか? おしゃれなレストランやフォーマルな場へ行くと「これで合っているのかな」と悩むこともあるマナー。ワインを飲むことは日本ではまだまだ新しい文化の1つだと思います。難しいことはほとんどありません。ワインのマナーを少しずつ覚えて、自信を持って楽しみましょう。
レストランへ行くとマナーを知らなくて、緊張してしまうことも多かった若い頃。逆に緊張はしなくなった最近も、ワインやレストランのマナーをきちんと知っているわけではなく、開き直っているだけかも……と思うことがあるのです。
レストランで働いていた頃、30代以上のお客様のマナーがなっていないのを見て、気になったことがあります。ワインを楽しむためのマナーというと難しく聞こえますが、実はとても簡単で、あたりまえのことしかありません。
これは絶対にやらなければいけない! ということではなくて、できれば守りましょう! くらいのものです。少し覚えるだけでレストランでの振る舞いに自信が持てるはず。
■タバコや香りの強いものは控える
ワインの楽しみの1つに香りがあります。香水をつけすぎていると、ワインの香りはもちろん、それ以外のお料理の香りも台なしにしてしまいます。
また、喫煙ができるお店であっても、同席している方がタバコが苦手な場合もあります。お料理や周りの人のことを考えて、その場合はタバコも控えるようにしたいです。
最近はスメハラ(スメル・ハラスメント)なんて言葉もあるように、食事の場ではなくても臭いには気をつけたいもの。
とくに、一般の方向けでも試飲会などに参加する時は香水はつけていかないでください。試飲会では香りを楽しむのも重要視されるため、かなり敬遠されてしまいます。
■ワインを注いでもらうときの注意点
・注いでもらうときにグラスを持ち上げない
サービスするのはお店の方の仕事なので、私たち、お客様側は手酌をしなくて大丈夫です(
もしお店の方が注ぎにくそうな位置にグラスがあれば、少し移動させてください)。日本にはお酌をするときにグラスやお猪口を持ち上げて注いでもらう文化がありますが、欧米にはありません。
10年くらい前まではグラスを持ち上げる人も多かった気がしますが、最近はあまり見かけない気がします。ワインが一般的になってきた証拠でしょうか。フランスの女性のように堂々と注いでもらうのを待って。
・ワインを注ぐなら片手で
ソムリエさんがいれば良いのですが、カジュアルなお店でテーブルにワインのボトルを置いてお客様が自分でワインを注ぐスタイルのお店も増えてきています。
そのようなお店で自分でワインを入れる場合は、片手で注ぐのがしきたりです――と、多くのマナーブックには書いてあります。
でも、例外はあります。たとえば女性で手が小さく、ボトルを持ち慣れていない場合は両手でも構いません。落としてしまっては元も子もないですから。
マナーとは他人を不快にさせないようにすることなので、臨機応変に対応したいもの。テーブルの上に頼んだボトルがなければ、注いでください、と伝えてしまいましょう。
また、大きめのグラスでサービスされると、そのグラスに対して量が少ししか入っていない気がしますよね。お店にもよりますが、一般的にはグラスワインは約100mlでサービスされることが多いです。
大きめのグラスでも量はきちんとありますし、たくさん入っていると香りがわからなくなってしまいます。また、バランスが悪くグラスが倒れやすくなります。自分で注ぐときも適量を心がけましょう。
■グラスをまわすときは内側に
香りをとるためにグラスをまわすことはスワリングといいます。必ずしもやる必要はないですが、ワインに興味がある方は、まわして香りを嗅ぐことも楽しみの1つに加えてください。
右手でまわすときは反時計回り、左手のときは時計回り、に回すと万一こぼしてしまった場合、ワインは遠心力で自分のほうにまわってこぼれてきます。
隣の人にかけてしまう心配がないから内側にまわすと良いでしょう。絶対的なルールではないのですが、まわりの人にかけてしまうことのないようにしたいですね。
■グラスは脚の部分を持つのがルール?
こちらは意見が分かれるところではあるのですが、日本ではワインはグラスの脚の部分を持って良いと思います。
手の温度がワインに伝わって、味や香りが変わってしまいますし、味の観点からだけでなく、グラスの脚を持ってワインを口に運ぶ姿は、とてもエレガントに見えるからです。
ただ、実はこのスタイルは日本だけで、欧米では、フォーマルな場ではワイングラスのボウル部分を持つ、と言われています。
恐らく日本でソムリエという仕事が一般化してきた頃に、ソムリエが出てテイスティングしている姿を見る機会が増え、その際に脚の部分を持っていたために、日本ではこのスタイルが定着したと言われています。
もし外国の方が多いパーティに出席される場合などには、周りを見てグラスのボウル部分を持っている人のほうが多ければ、ボウルを持った方がいいかもしれません。
普通のパーティや飲み会、テイスティングをするような場所だと脚を持ったほうが良いですね。ただ、一番大切なのは楽しむこととグラスを落とさないこと。自分が一番持ちやすいところを持ちましょう。
■正式な乾杯は胸の高さで、グラスをぶつけない
ビールなどで乾杯するときにはグラス同士を合わせることが通常ですが、ワイングラスは厚みがなく繊細なものが主流なため、ワイングラスを合わせた瞬間、割れてしまうことも考えられます。
そのため、正式な場所では「グラス同士を合わせて音を立てて乾杯しない」のがマナーです。乾杯するときはワイングラスを胸の高さまで上げて、相手の方に笑顔でアイコンタクトや軽く会釈をしながら、「乾杯」と言うのが良いでしょう。
ただ、ホームパーティーや気軽なビストロでの友人との食事など、カジュアルな場面で、相手が乾杯しようとしてきた場合は、グラスを合わせて乾杯しても良いでしょう。
その際はグラスの最もふくらんだところを軽く当ててください。日本ではそちらのほうが多いので、臨機応変に楽しみましょう。
■テイスティングはソムリエに任せてもOK
ワインを頼んだときの「テイスティングなさいますか?」という質問が、緊張してしまうしよくわからないから苦手だと言う方、多いと思います。
テイスティングはワインが劣化していないかどうか、酸化していないか、コルク内部にカビが生えてその匂いが移ってしまう現象(ブショネといいます)が起きていないかをチェックするものです。
ただ、自分で判断できない場合はテイスティングを断ってしまっても構いません。きちんとしたレストランならば、お客様に提供する前にソムリエがチェックをしています。
また、自信がない場合はソムリエに「お願いします」と頼んでも大丈夫です。たまに、「テイスティングでおいしくなかったら変えてくれるの?」なんて質問を受けることもありますが、好みではなく状態のチェックをしています。
あまり好みではないものを頼んでしまわないよう、ソムリエとお話しながら選べると良いですね。
ルールやマナーはいくつかありますが、時代が変わってきています。国際マナーばかり意識せずに、日本の常識やお店の雰囲気に合わせて気持ち良く楽しく食事できるようにしましょう。
知っておくと少し自信が持てるルールやマナーですが、何よりも周りの人を不快にさせないことが一番大切です。