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【駐妻のリアル #2】仕事を辞め、突然専業主婦になって思ったこと

駐妻になった私は仕事を辞め、専業主婦として日々を過ごすようになった。でも、その暮らしは楽しいばかりではなく、葛藤や不安もあふれていた。モヤモヤした期間を経て気づいたのは、人の役に立っているという実感を、どんな形でもいいから作ることの大切さだった。

【駐妻のリアル #2】仕事を辞め、突然専業主婦になって思ったこと

まさか、自分が専業主婦になるとはなあ……。

バンコク行きの機内で配られた、入国審査の紙。職業を書く項目で手が止まる。そうか、今日から私は“Housewife”なんだ。

夫の海外転勤に伴い、勤めていた会社を退職した話は前回の通り。

【駐妻のリアル #1】駐妻のセレブ生活 vs 積み上げたキャリア、どちらを選ぶ?

https://p-dress.jp/articles/2992

駐妻とは夫の海外転勤に帯同する、駐在員の妻のこと。プール・ジム付きの高級コンドミニアムに、メイドや運転手がいる生活。そんな駐妻になれば、セレブな海外生活が期待できる一方、閉鎖的な人間関係に悩まされたり、それまで築き上げてきたキャリアを犠牲にするリスクも……。もしパートナーが海外転勤になったら、あなたはどの道を選ぶ?

駐妻になることが決まったとき、私の周りには「いいな」という人もいれば、「すぐ仕事したくなるよ」「逆にストレスが溜まりそうだね」とか反応もいろいろだった。

今回は、20代の大半を仕事に費やしてきた筆者が、仕事を辞め、主婦になった心情について、自身の体験をもとに綴っていきたいと思う。

■仕事を持たない駐妻となり、夫への感謝と、無力感から来る後ろめたさが生まれた

共働きの頃は、何もかもが対等の関係だった。夫とは給与も残業時間もそこまで変わらなかったので、生活費は割り勘、家事も平等に分担していた。

それが、駐妻になってからは、金銭面は全て夫が負担することになる。

毎月決められた額のお小遣いをもらい、その中で好きなものを食べて、ほしいものを買う。人のお金で旅行に行く。

家事は私の担当だが、家には掃除をしてくれるメイドサービスがあり、子供もいないため、世の専業主婦に比べたら大した負担ではない。

私にできることは、料理と、飼っているネコのトイレ掃除くらい。

言葉も文字もわからず、誰も知らない土地で生活する寂しさはあるけれど、夫が慣れない環境で必死に働くなか、大した労働もせずに生活できているのは、純粋にありがたいなと思う一方で、どこか後ろめたさを感じていた。

■夫の稼ぎに頼る生活がけっこうストレスに

会社員だった頃は、毎月一定額の給与が銀行口座に入り、最悪何かあっても生きていける程度には経済的に自立していた。

しかし、今は完全に夫の給料頼みの生活で、今後のマネープランは夫のがんばり次第。

自分でも意外だったのだが、この、“家計を100%人任せにする”というのが、心理的にけっこうストレスになった。

しかも、自分が仕事を辞めたことで、世帯収入は半減している。物価が比較的安い国だから生活できているものの、帰国後に同水準の仕事に就ける確証はない。

5年後、10年後したら業界のトレンドが変わり、その仕事さえなくなっているかもしれない。

野村総合研究所の試算によると、10~20年後には、日本の労働人口の約49%が就いている職業は、人工知能やロボットなどで代替可能になっているという。

夫のことは頼りにしているけれど、この先数十年、安定的に稼いでくれる絶対的な保証はどこにもない。

■駐妻になり、仕事をしなくなって感じたこと

専業主婦になると社会と接点がなくなってツラい、とはよく聞いていたが、駐妻の場合、いきなり知り合いがほとんどいない海外に来るので、社会どころか誰ともつながりがないところから生活が始まる。

夫の知り合いからは「◯◯の奥さん」と呼ばれ、日本で何の仕事をやってきたのか、興味を持たれることもない。

タイに来ることは強制されたワケではなく、自分で決めたことだ。だけど、平日の昼間にぼーっとしていると、私は何のために勉強して大学に入り、必死に働いてきたんだろう……とふと虚しさに襲われる。

働いていた頃に比べて確かにストレスは減ったし、眠たいときに寝られる幸せも味わった。

だけど、仕事で同僚に頼られたり、お客さんから感謝されたり、チームで一喜一憂したり、そんな人との繋がりの中で生まれる、日々のちょっとしたときめきが、実は自分にとってとても大事なことのように思えた。

人は「誰かの役に立っている」という実感が持てると嬉しいし、常に誰かに頼られたい生き物なのかもしれない。

■自分の存在価値は自分で作る

専業主婦がいいとか、悪いとか、ここでそんな議論をするつもりはない。

向き不向きがあるだろうし、必要なお金だって、夫婦の価値観やライフプランによって変わるだろう。
さらに海外赴任中は、妻は働きたくても働けない現状もある。

モヤモヤ期間を経て、結局私はタイで仕事復帰するわけだだが、就職せずとも子育てに力を注いだり、ボランティアをしたり、フリーランスで仕事をしたり、ブログで発信したり、海外にいても人や社会に貢献できる場はたくさんある。

居場所は自ら作る必要があるけれど、「自分は誰かの役に立っている」という実感は、自信になるし、何より精神的な安定をもたらすのだと、身をもって感じている。

川嶋 ハナ

タイ在住のフリーライター/駐在妻。広告代理店勤務を経て、夫の駐在を機にバンコクへ移住。2017年からは駐妻生活に終止符を打ち、自身も駐在員として働くことを決意。海外転勤族の夫&愛猫と一緒に暮らしながら、国に縛られないワークス...

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