子なし夫婦の私、「産まない覚悟」が揺らぐとき
子なし夫婦として、夫とふたりで心地よく過ごしてきた筆者。産まなくても十分幸せ。でも、喉に引っかかるこの小骨は何だろう。結婚6年目で子作りを急かされた筆者が「産まない」とほぼ決めているのに、モヤモヤしてしまう理由は。
「……今日結婚したこの新しい夫婦に、多くのことは望みません。ただただ普通に家庭を築き、普通に子どもを育ててほしい」。親友の結婚式の最後、新郎のお父さまのスピーチが私の胸をチクリと刺した。
“普通”――やっぱり、結婚したら、次は子どもをと思うのが世の中の普通なんだな。豪華な披露宴会場で、友人の慶事に昂揚していた気持ちが、すうっと冷えていくようだった。幸い、結婚した友人自身は子どもを望んでいる。“普通”を望むご家庭と縁を結んだ彼女が、順調に子どもを授かりますようにと願いながら、会場を後にした。
■子なし夫婦で幸せに過ごしてきたけれど……周りの“善意”がつらくなってきた
私たち夫婦は結婚6年目。子どもはいない。これは、子なし夫婦のあるあるだと思うけれど、まぁ本当にどこへ行っても「お子さんは?」「早いほうが良いわよ」「そろそろ本気で考えないと」と悪意のかけらもない声を、毎度のように浴びせられる。「またか……」と内心思いながらも、笑顔で「授かり物ですから」とやり過ごしてきたが、最近ちょっとつらくなってきた。
というのも、私は今32歳。今年33歳になる。定期的に通っている婦人科の医師から、「産みたいなら子作りは今年が勝負よ!」と告げられたからだ。
■仲よし子なし夫婦だけど、妊娠・出産を迷う理由
なぜ、私が「よっしゃ、子ども作る!」となれないのか。それは、ここ10年ほど自律神経系の病気を患っていて、投薬治療を受けているから。
飲んでいる薬の中には胎児に影響を及ぼすものもあるので、妊活の前に断薬をしなくてはいけない。病気持ちにとって、薬が飲めないというのはなかなか不安だ。
でも何より心配なのは、産んだ後。今でも調子が悪くなると寝込んだり、日常生活にもいろいろと制約があったり、健康体の人よりも自由のきかない生活を送っている。
そんな私が「子育て」という子ども中心にまわる生活に、堪えられるんだろうか。頼りない母親に育てられるしわ寄せが子どもにいかないだろうか。
夫は仕事が忙しく、実家も遠方にある。民間サービスを利用するにしても、限度があるだろう。そう考えると、どうしても積極的に産む気になれない。
夫とは、「子どもはいても、いなくても、どちらでも良い」と合意して結婚した。これまでも折に触れて話し合ってきたが、今回、医師にせっつかれたことで改めてじっくり話し合った。
その結果、「ふたりでの生活に不足は感じない。十分楽しい。無理して子どもを作らなくても、うちの夫婦にはうちの夫婦の生き方があるはず」と、結論が出た。子なし夫婦として生きていく選択肢もある、と。ならばもう、何も悩む必要はないはずだ。今の夫婦のカタチを大切にして、のびのび過ごせばいい。