女性器の悩みやコンプレックスを治療で克服した4人の女性たち
処女膜強靭症や膣のゆるみなど、女性器に悩みやコンプレックスを持つ女性たちは、どのようにしてそれらを乗り越えたのでしょうか。実際にあった悩みやコンプレックスから、それぞれの施術まで、喜田直江医師が詳しく解説します。
婦人科形成という言葉はまだ一般的ではないと思います。仮に知っていたとしても、実際には、まだまだその敷居は高いのではないでしょうか。
「女性器の悩みやコンプレックスは解消できる」や「臭い、黒ずみ、ヒダの大きさ……女性器の悩みやコンプレックスはどう解消する?」「『ヒダ、大きくない?』女性器の悩みやコンプレックスを深刻化させる一言」に続き、今回は私のクリニックで治療を受け、女性器の悩みやコンプレックスを乗り越えた女性たちの治療後の声をご紹介します。
■処女膜強靭症で、セックスができなかった
結婚後3カ月以上経過しても、一度もセックスできずにいる夫婦を「未完成婚」といいます。ある30代中盤の既婚女性Aさんは、セックスをしようとするものの痛みが強く、夫婦の間にセックスのないまま10年が経ち、私のクリニックを訪ねてきました。
そのAさんがセックスで感じる痛みの原因は、「処女膜強靭症」によるものでした。一般的に処女膜は簡単に破れるものとされており、セックスの経験がない人でも破れてしまうことがあるほどデリケートで、柔らかく薄い膜です。しかし、非常に珍しいケースとして、厚くて硬い、文字通り強靭な処女膜を持って生まれる女性がいます。
手術は15~20分程度で、処女膜を切開し、強い痛みの原因であるつっぱりを取り除きます。そして、術後1カ月ほどで痛みのない性交渉ができるようになります。
セックスだけが抜け落ちた結婚にセックスが加わって、ふたりの結婚生活はより親密度を増したようです。
セックスに対する「最初は誰でも痛い。そのうちに慣れてくる」という〝常識〟は実に曖昧なものです。「最初」だけでなく、その後のセックスでも痛みを感じ続ける女性がいるという事実は、この常識は苦しみをさらに強めるものです。理解されないことによる心の「痛み」は、当事者でなければわからない切なさだと思います。
■膣のゆるみを指摘され、傷ついていた
「『こんなにゆるんでるから、自分以外の男とはもう(セックスは)無理だぞ』と主人に言われました」と泣きながら、訴えてきた方は、お子さんのいる40代後半のBさん。
40代後半ですから、夫も昭和生まれだと思いますが、現代女性の感覚からは遠く離れた発言に強い憤りを感じます。しかし、このような男性の心ない暴言もまた、少なくない現実でもあるのです。
体の面で言えば、加齢はもちろん、出産後には確かに膣がゆるみます。それにより、尿漏れや空気の音がする、便のキレが悪いなど、不快な症状を感じる女性も多くいます。これらの症状の多くは膣のゆるみからきていることです。
膣も体の他の部分と同じく筋肉ですから、出産で損傷したことにより、尿道や肛門周りの筋肉もゆるんでしまうのです。出産数と膣のゆるみは関係なく、子どもをひとりでも生んでいれば、それ以前よりも膣は緩んでしまいます。
夫の心ない言葉に深く傷ついたBさんは、「夫を見返してやりたい」という気持ちから私のクリニックに来て、膣縮小の手術を受けられました。1時間程度の簡単な手術や治療で、当日歩いて帰ることができます。
■膣内に空気が入り、セックス中の“音”が気になっていた
30代頭で出産を経験し、その後セックスレス1年半を経て私のクリニックに来たCさんは、第二子を切望していました。夫のことを大切にも感じていましたし、世間の一般的な例とは異なり、夫も彼女を“女性”として見ていたので、どうにかセックスレスを解消したいと考えていたのです。そんな彼女の悩みは「セックス中のおならのような空気の音」。
カウンセリングをすると、産後の出血は1カ月程度でおさまったものの、膣のゆるみはおさまらなかったようです。
「尿漏れが頻繁に起こり、お風呂を出るときに膣から水がドバーッと出ることもありました。ネットで調べてみると明らかに膣がゆるんでいる。まだ30代なのに……と焦ってしまって、自分なりに膣トレーニングをしてみたりもしました。とてもこの状態では、セックスはできないな、と思っていたんです」
とはいえ、もともとアスリート系の彼女。トレーニングの効果を知っているだけに、自分の努力で膣のゆるみは解消できるとも信じていました。なんとなく「(セックスしても)大丈夫かな」と思うようになって、夫と久しぶりにセックスをしたのですが――。
「恥ずかしい話ですが、セックス中の空気の音が止まらないんです。夫も最初は笑ってくれましたが、だんだんとシラけてきて、何より私も『また出ちゃうかも』と思うと集中できずに、その日は途中でやめてしまいました」
その後、何度かトライしてみるものの結果は同じ。Cさんの「セックス中の空気の音」が解消されることはありませんでした。
彼女のような悩みを持つ女性は多くいます。これは出産により膣の中がゆるくなってしまって(膣内に)空気が入ってしまうことが原因です。彼女はカウンセリング後、膣縮小の手術を受け、この悩みは解消されました。「第二子妊娠目指してがんばります」と明るいメールをくれました。
■セカンドバージンによる性交痛
バツイチの50代女性Dさんは、前夫との間に子どもがひとりいます。出産後、前夫とは20年近くセックスレスで、数年前に離婚しました。離婚後、ひと回り年下の彼ができたのですが、「セックスをしようとすると、痛みがひどくて(セックスが)できなかったんです」と言います。
中高年になって久しぶりにセックスをしようとして痛みを感じる例も多いのです。これは加齢とともに女性ホルモンが少なくなったことによる膣萎縮による症状です。
閉経前後から膣の壁は厚くなり、乾いて広がらずにカチカチになります。日常的にセックスをしている人のほうがセックスをしていない人より若干症状は軽めなど、個人差はありますが、閉経前後の女性には例外なく起こる症状です。セックスレスで時間は空いたものの、以前はあたりまえにできていたセックスが、痛みを伴いできなくなるのは切ない現実です。
彼女は、新しいパートナーのために膣萎縮のレーザー治療を始めました。まだ痛みは残るものの、最初の頃の痛みは和らぎ、パートナーとのセックスもできるようになりました。このまま定期的にレーザー治療を続ける予定です。
■女性器の悩みやコンプレックスは解消できる
女性器のコンプレックスはひとりで悩む人が多いぶん、深い迷いになってしまいます。ましてや、コンプレックスを持つ原因がパートナーからの心ない言葉だったりすれば、その傷は生涯残る場合もあります。
顔を整形したわけでも、美容院やエステで手の込んだ施術をしたわけでも、ダイエットをしたわけでもなく、人目には触れない女性器の悩みやコンプレックスを解消しただけで、前向きな気持ちで過ごせるようになる――女性にとって(男性にとっても、かもしれませんが)、女性器は本当に大切な部分なのです。
Text/喜田直江
2016年12月21日公開
2019年7月3日更新