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「私はモテる」と思い込んだもの勝ち

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私はモテない、と思い込むより、私はモテると思い込んだほうが、コミュニケーションがスムーズになる。周囲のモテる女友達のふるまいから、小島慶子さんはそう気づいて――。

「私はモテる」と思い込んだもの勝ち

 最近、自分はモテると思うことにした。女子アナなんていう激モテしそうな仕事をしていたので、見え透いた嫌味な謙遜かと思う人もいるかと思うけど、私は「仕切る、盛り上げる、笑わせる」という男の役割(と男性が主張している領域)にずかずか入り込んで、なんなら自分が一番を取ろうとするのですごく嫌がられるのだ。でもしょうがない、女子校でその役割をやっていたものだから、そこ以外に身の置き場がないんだよね。


 というわけでまあ、ものの見事にモテない人生を送ってきて、告白されたのは高校生のときに一度きり。しかも今思えば賢くて結構ハンサムな小学校の仲良しだった元同級生からの意を決した告白の電話を、気が動転して「気持ち悪い」などと言って切ってしまった人生最大の愚行。

 以来、誰からも告白されることなく、こっちが好きになった人にしつこく言い寄っては付き合ってきた。結婚も、3年同棲しても相手から言い出さないものだからそろそろどうかなどと言って切り出したのでまるでサプライズ感もなく、本当に「求められている感」を味わうことなくここまできた。でも、そもそも男受けが悪いのだから、好きな人には好きだととっとと言って、ダメなら引き下がり、いけそうなら押すというやり方しかなかったのだ。


 私の友人に、モテるのがデフォルトの女がいる。今45歳だが、やはり猛烈にモテており、「子どもの頃からモテるので、そういうものだと思っている」と、自慢するでもなく言っている。彼女にとってあまりに普通のことなので、理由を聞かれても答えられない。

 そしてもうひとり、やはりモテる女友達がいる。彼女は「何人かでご飯食べようかーと誘って、いいよと答えた男はこちらを好きな証拠」というかなりざっくりした基準でモテ認証している。「ええっ、でもそんなの、単に暇だからとか、他のメンバーに会いたいとかじゃないのか」と突っ込むと「いい大人はみんな忙しいので、興味のない人間からの誘いにはわざわざ時間を空けない。

 他のメンバーに興味がある場合もあるだろうが、私に興味がなければわざわざ来ないはず」と言う。「イコール異性としての関心とは限らんだろうが」となおも反論すると「あのね、もしかして気があるのかなと誤解されたら面倒くさい人の誘いには行くって返事しないでしょ。都合つけて行くっていうことは、少なくとも彼女の話は楽しいとか、顔見るのは嬉しいとかなんか私に会いたい理由があるのよ!」と力説したのだ。そして彼女もやはり全然イヤーな感じではなく、極めて健全な自己肯定感の高さを感じさせるのであった。


 な、なるほど……「モテる」と思ったもの勝ちなのだな。そこで、私もあらゆる男性からの「出欠確認」「会合の誘い」「5行以上のメール」をすべてモテとカウントすることにした。どう考えてもちげーよというものまで、いやきっとこれもモテ、と考えるようにしてみたら、あら不思議、非常に気分がいい。

 これ、私が勝手に思っているだけなので誰にも迷惑をかけない。相手に「私のこと好きなんでしょ、このこのー」とか言うわけでもないので実害はゼロ。単に、その人に会うときに「きっと私に好感を持っているであろう」という前提でいるだけだ。でも不思議とそうすると、コミュニケーションがスムーズにいくことに気がついた。当然のことで、人は自分に胸襟を開いている人には胸襟を開く。不安や恐れを抱いている人に対しては緊張する。


 働き始めたばかりの頃にいた職場では、「若くかわいい女子であれ」が至上命題だった。そういう仕事だったから。だから、モテる女子でないと排斥されるという恐れからいつも緊張状態にあったし、実際それがうまくできなかったことによって、さまざまな冷たい対応を受けたことも確かだったので、はっきり言ってトラウマになっている。

 でも、大人になるにつれ世の中には「若くてかわいくて従順な女子以外はカス」という基準で女性をはかるようなクソ野郎とかクソ女ばかりではないということに気がついて、気持ちが楽になった。そのトラウマの最後の後遺症が「私は男性からは好感を持たれない」という思い込みであった。


 それをこのたび、勝手に「そうでもないんじゃない?」と書き換えたことによって、非常に楽になった。もはや恋愛には全く興味がなくなってしまった私だが、相手の性別に関わらず「自分は受け入れられている」という前提で話すことができるのはとても助かる。モテる友達ふたりがなぜ素敵なのかというと、基本的に人を受け入れる心持ちでいるからなのだ。

 44歳になってやっとわかった。モテるって、相手を引きつけるってことじゃなくて、安心させるってことなのね。持つべきものは友。今度会ったらよくよく礼を言おうと思う。

2016年11月21日公開
2019年5月19日更新
※文中に登場する年齢や数字は記事公開当時のものになります。

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小島 慶子

タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族と暮らすオーストラリアと仕事のある日本を往復する生活。小説『わたしの神様』が文庫化。3人の働く女たち。人気者も、デキる女も、幸せママも、女であることすら、目指せば全部しんどくなる...

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