すべての恋愛には価値がある。だから「間」をあけないで――はあちゅうさん×松岡宏行さん対談・後編
順調にキャリアアップを重ね、トレンドに沿ったファッションとメイクを美しく着こなしているにも関わらず、恋愛においてはなぜか常に「イタい女」。そんなアラサー・アラフォー女性に顕著な「一発逆転の思考癖」を、恋愛エキスパートの松岡宏行さんとはあちゅうさんに語り合っていただきました。対談後編です。
前編(https://p-dress.jp/articles/2086)
中編(https://p-dress.jp/articles/2094)
■女性の「私ってまだイケてる?」か知りたい欲求
松岡宏行(以下、松):アラサー・アラフォー女性が、なかなか恋愛できないという問題だけど。僕の観察によると、女性は肉体関係ができると相手を好きになりやすいというデータがあるんですよ。だから相手を好きになるには、先にセックスをしてしまったほうがいい、というのは一理あると思っていて。
はあちゅう(以下、は):そうなんですか?
松:セックスをした後で相手を好きになるというのは、要するに体と心を一緒にしようとする自然な心理なわけです。ただ、アラフォーくらいの女性を見ていると、どうも心と体がバラバラになっていく人が多いような気もするんですよ。心が体についていかないというか……。
は:というのは?
松:体は満足するのに心が満たされないとか、肉体的にはAさんを好きなのに気持ちはBさんを求めてしまうとか。本来そこが一致することが幸せなのに、別々になってしまうと苦しいはずなんですよね。そこが今のアラフォーにとっての大きな課題なのでは、と見ています。
は:性欲と精神的な欲求が、同じ相手によって満たされないということですね。
松:そうだね。それからこれも僕の見解なんですけど、女性の性欲には3種類あると思うんです。コアなのは純粋な肉体的欲求、そして愛し愛されたいという愛欲的欲求。そしてアラフォー女性に顕著なもうひとつの欲求が、「私はまだ女としてイケてるか確かめたい」という欲求。はあちゅうさんにもわかるかな、この感覚。
は:まだイケてるかどうか確かめたい、という欲求はよくわかります。というか、20代からあると思いますけどね。男性と一緒にご飯を食べに行って色っぽい雰囲気を感じなかったら、「私、女性として魅力がないのかな?」って不安になりますね。
松:その欲求って、誘われて断るような場合でも満たされるもの?
は:はい。誘われたということにすごく意味があるんです。「自分から積極的にいくと本格的に誘われちゃうな……」とか思って、自分の出方をコントロールしたり……。そういうせめぎ合いこそが男女のご飯の醍醐味だと思います。女性が積極的なサインを出さない限りは、男性もグイグイはこないじゃないですか。だけど、垣間見える好意の確認だけで、女性はすごく満足できるんです。
松:じゃあアラフォーから急に目覚める欲求というわけでもないんだね。
は:ただアラフォーのほうが、その先に進むのが難しいかもしれませんね。この後こうやって2、3回ご飯して、体の関係を持って、でもいつかは終わる、みたいな展開が経験としてわかってくるので。冷静になるあまり、そこまでがっつかなくなると思います。その瞬間のフィーリングで肉体関係を持つこともあるかもしれないけど、がっつき具合が20代とは違うかも。
松:確かに20代は「とりあえずしておこう」ってなりやすい気がするね。
は:アラフォーになると、「まあしなくてもいいかな」って思うかもしれないですね。でもそれもケース・バイ・ケースでしょうね……。長く貞操を保ってきて20年ぶりの1回だったら、「ここはいっとくか」って思うはずです。でも、10日に1回くらいチャンスがあるような人だったら、そのチャンスを逃しても自尊心は保たれるでしょうし。本当にそれは個体差みたいな気がしますね。
松:もちろんそうだね。男女について語るときは、例外があってあたりまえだし、人それぞれだという前提があるんだけど……。ただあまりに一人ひとり細分化して考えると、頭のメモリがいくらあっても足りないんだよね(苦笑)。
は:男女について意見を言うと、大抵クソリプが飛んでくるものですからね。みんなそれぞれに、自分のあたりまえが、違うから。いろいろな人がいて良いんじゃないかな、と思いますけどね。恋愛に絶対のルールなんてないんだから。
■恋愛の練習もしないのに、結婚で一発逆転ホームランはあり得ない
松:それじゃあ最後に、人生に行き詰っていて一発逆転の恋愛を求めてしまう女性に、我々からエールを贈りましょうか。
は:恋愛で悩みがある人って、他人の基準で世界を見てしまっていると思うんです。「まずは他人じゃなくて自分をちゃんと見ようよ」っていうことを、オンラインサロンなどでもよく言っています。
松:うん、恋愛に損得勘定とか他人の価値観、世間体が絡んでくると、自分がブレブレになってきて軸が定まらない。好きなら好きという1本の軸があればいいや、って思えることが大事だね。
は:はい。好きなら好きでいいじゃない、っていう。結婚で何かが変わると思ってしまう人が多いんですよね。
松:恋愛に行き詰まっている人は、最初から100点を狙うんじゃなくて、50点でも60点でもいいから小さな恋愛を重ねて、少しずつ心を耕したらどうかな?
は:間を空けないことが大事ですよね。理想の恋愛が自分の中で用意されていて、それがまだ降りてこないと思い込んでいる人が多い気がします。でも失敗しながら学ぶのも恋愛だと思うので、いい意味での妥協は必要なんですよ。60点だと思った人だって、付き合ってみたら60点とは限らないですし。
松:無駄な恋愛をしたがらない人って、練習もしていないのにいきなり大会でホームランを打とうとしている野球部員みたいなものだから。とりあえず隣の高校と練習試合をして、負けたり勝ったりして(笑)。何回も練習をした後で本大会に出てください! と僕は言いたいですね。
(完)
構成=波多野友子
はあちゅうさん
ブロガー・作家。慶應義塾大学法学部政治学科卒。在学中にブログを使って、「クリスマスまでに彼氏をつくる」「世界一周をタダでする」などのプロジェクトを行い、女子大生カリスマブロガーと呼ばれる傍ら、レストラン、手帳、イベントをプロデュースするなど、幅広く活動。2009年電通入社後、中部支社勤務を経て、クリエーティブ局コピーライターに。2011年12月に転職し、トレンダーズで美容サービス、動画サービスに関わる。2014年9月からフリーで活動中。
月額課金制個人マガジン「月刊はあちゅう」、オンラインサロン「ちゅうもえサロン」「ちゅうつねサロン」などを運営。著者に『疲れた日は頑張って生きた日 うつ姫のつぶやき日記』(マガジンハウス)、『とにかくウツなOLの、人生を変える1か月』(KADOKAWA/角川書店)、『自分の強みをつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『恋愛炎上主義。』(ポプラ社)『半径5メートルの野望』(講談社)など。雑誌、オンラインメディアなどでの連載多数。催眠術師資格を保有する。
ブログ:http://lineblog.me/ha_chu/
Twitter:https://twitter.com/ha_chu
松岡宏行さん
スイスイ社ディレクタ。新卒で外為銀行に就職、朝が苦手で毎朝退職を考える。25歳で辞め、居場所を見いだせず5年間引きこもり。93年社会復帰のため仕方なく実家の2階で会社を設立。広告とキャラクターの制作会社に。得意分野はイラストとブランディング、著作権ライセンス。雑誌連載のべ900頁、著書は『できる男は不倫する』『タイツくん真実のコースター すぐれた仕事は紙ナプキンから始まる。』など9冊。北海道出身。
Twitter:https://twitter.com/higetch
いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。