聡明な女性は結婚前後で変わらない――はあちゅうさん×松岡宏行さん対談・中編
順調にキャリアアップを重ね、トレンドに沿ったファッションとメイクを美しく着こなしているにも関わらず、恋愛においてはなぜか常に「イタい女」。そんなアラサー・アラフォー女性に顕著な「一発逆転の思考癖」を、恋愛エキスパートの松岡宏行さんとはあちゅうさんに語り合っていただきました。対談の中編です。
前編はこちらから
(https://p-dress.jp/articles/2086)
■結婚で人生を一発逆転させる、は可能か?
松岡宏行(以下、松):前回、恋愛で得をしようと思ったら、女性はものすごくブレてしまうんじゃないか、という話をしました。
はあちゅう(以下、は):年収ももちろんですけど、得をしたいっていうのは、「この人なら自分を高めてくれそう」「この人と付き合えば箔がつく」みたいなことですよね。恋愛って本来すごく純粋な気持ちと気持ちの結びつきなはずなのに、余計な気持ちがまとわりつくと自分でも後ろめたくなってくるし、人から見てもイタい女になっていくのかな、と思います。
松:特に結婚で一発逆転をしようとしている女性って、そもそも自分の人生が行き詰まっているんだよね。競馬にたとえちゃうけど、負け続けている人って最後のレースで1日の負けを取り戻そうとするわけ。そうすると、最後に高い馬に賭けることになる。
は:つまり、それは……。
松:このままじゃキャリアも築けそうにないし、年収も上がりそうにない。どうしたらいいのかわからなくなっている。すると、自分の人生の負けを男でひっくり返そうと、倍率の高いターゲットに賭ける。でもそんな男は来やしないんですよ。30代で恋愛に苦しんでいる女性には、そういう傾向があるんじゃないかと僕は見ています。
は:もしかすると、30代より前かも知れません。結婚で逆転したい人って、会社で何となくうまくいっていなくて、この先の人生が明るくないと感じている人なんじゃないでしょうか。でも30歳を過ぎると、逆転までしなくてもいいからとにかく結婚したい、みたいな気持ちにグラデーションで変わっていく。自分のことも少しずつわかってくる年齢なので。
松:なるほど。ただひとつ言えるのは、しっかりした女性というのは、結婚する前と結婚した後で印象が変わらないんだよね。一発逆転型とは対照的。はあちゅうさんは変わらないんだろうな。
は:そうですね……今の彼とはもう2年くらい付き合っていて、ほぼ一緒に住んでいるので、籍は入れていなくても、結婚しているような生活スタイルではあるんです。でももし今の人生に彼がいなかったとしても、私自身の仕事など、恋愛以外の人生は変わっていないと思います。だからこそ、別に結婚しなくてもいいかなという気持ちが芽生えてきました。
松:結婚という型に縛られる必要がないということ?
は:子どもがほしくなったらとか、2人で住むほうが経済的だからとか、何かしらきっかけができたらするかもしれませんけど……。ただ結婚ってすごくプライベートなことだし、ちょっとした宗教みたいなところもあるとは思っていて。結婚という形をとるかとらないかは、信じている宗教の違いみたいなものかな、と。もし結婚しても、あえて世間に公表しなくてもいっか、と最近は思ってますね。
松:はあちゅうさんと僕の世代では価値観が違うからなぁ。愛し合っていたら結婚するというのがあたりまえの時代だったから、結婚=宗教論はちょっとわからないな。
■「相手を失いたくないから結婚する」のに違和感
は:愛し合っていたら結婚するのがあたりまえ、という考え方には疑問を持っています。私、今までの恋愛だって、毎回相手をすごく愛してきたんです。だから、過去の相手の誰と結婚していた可能性もあると思う。でも、結婚を決めるのって、結局「●歳だからそろそろ結婚しよう」とか、反対に「まだ若いから結婚は早いかな」とかで……それは結局世間体でしかないのかなって。
松:僕の場合は、「この人だけは失いたくない」と思ったときに自然と結婚したな。恋愛って、100パーセント終わるものじゃないですか。だから、愛し合っているだけじゃ絶対離れていくと思った。今この人を手放したらもったいないと思ったから、迷わずに結婚した。
は:私は、恋愛が2人の間になくなっちゃうんだったら、お互い別の関係性にステップを踏んだほうがいいと思います。過去の経験でも、一度別れた相手とは、時間はかかったとしても「あのとき別れてよかった」っていう境地に必ずたどり着くんです。結婚っていう制度で縛ってしまうと、本当は別れたいけど別れられない、という事態にもなってしまいそうで……。
松:そうなったら、もはやピュアな関係じゃない感じがするもんね。
は:はい。私、究極のロマンチストなのかもしれません。それから、子どもと自分が生きていけるくらいのお金は自分で稼げると思っちゃうんです。うちは両親が熟年離婚していて、惰性で家族を続けるなら、むしろ父親のいない家族で良かったと思っているんです。そのほうがむしろ、父とは良い関係を築けたかもしれません。だから私は、世の中の結婚の価値観に縛られたくない。
松:うーん、そうか……。でも一般的な女性にとってはなかなか難しいよね、特に経済的に。
は:会社員時代の私だったら、そういう考え方にはならなかったかもしれません。でもこんな時代だし、子どもをどこで育てるかは国内に限らず世界レベルで考えてもいいし。大学に行かせなくてもいいと思っているんです。
松:それは意外だったな。
は:私自身はすごく大学名に助けられたんですけど、反面、大学で勉強したことがそこまで実社会で役に立っているわけではないので。だったら、もっと子どもに自由に選ばせるような教育をしたいなと。もうなるようになるな、としか思わないんですよね。とはいえ、相手によってはまったく変わってくるかも知れないです、結婚も堂々と公表しちゃったりして。意外と相手の恋愛観には染まりやすいタイプなので(笑)。
(後編につづく)
構成=波多野友子
はあちゅうさん
ブロガー・作家。慶應義塾大学法学部政治学科卒。在学中にブログを使って、「クリスマスまでに彼氏をつくる」「世界一周をタダでする」などのプロジェクトを行い、女子大生カリスマブロガーと呼ばれる傍ら、レストラン、手帳、イベントをプロデュースするなど、幅広く活動。2009年電通入社後、中部支社勤務を経て、クリエーティブ局コピーライターに。2011年12月に転職し、トレンダーズで美容サービス、動画サービスに関わる。2014年9月からフリーで活動中。
月額課金制個人マガジン「月刊はあちゅう」、オンラインサロン「ちゅうもえサロン」「ちゅうつねサロン」などを運営。著者に『疲れた日は頑張って生きた日 うつ姫のつぶやき日記』(マガジンハウス)、『とにかくウツなOLの、人生を変える1か月』(KADOKAWA/角川書店)、『自分の強みをつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『恋愛炎上主義。』(ポプラ社)『半径5メートルの野望』(講談社)など。雑誌、オンラインメディアなどでの連載多数。催眠術師資格を保有する。
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