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貴田加野 - 独立するまで 独立してから #3

一度は専業主婦になるものの「私には合わない?」と気づき、年齢が40歳のときに株式会社LiSA LiSAを起業した貴田加野(きだ かの)さん。企業で働くのではなく、自ら事業を始めよう、仕事を創り出そう。貴田さんの背中を押したのは「娘との時間を大切にしたい」という理由でした。(プロフィールは記事下)

貴田加野 - 独立するまで 独立してから #3

幼少の頃からお洋服が大好きな子どもで、祖母、母と着道楽を受け継ぎ育ってきた私。
いつも買っているお店の人から「もうすぐバーゲンセールが始まるんだけど、人がいないから手伝ってほしい!」と言われたのをきっかけに、20代半ばから神戸にあるアパレル会社で働き始めました。

ちょうどその頃はバブル期に突入し、とても景気の良い時代。
DCブランド全盛期。
そして、その数年後にはインポートブランド時代に。
そう、アルマーニやヴェルサーチが日本で大ブレイクした頃。

気がつけば、アルバイトから正社員になり、店長から中間管理職になり、商品の仕入れはもちろん、各ショップの指導から新人教育、そしてインポートを扱うようになってからは、イタリア出張に出向くことも。ミラノコレクションを見たり、買い付けをしたりと、仕事も充実。

そんなある日、突然会社が倒産。
いわゆるバブル崩壊の頃でした。

■憧れの専業主婦、私には合っていない!?

その後、知人が経営しているイタリアンジュエリーの会社に移り、ジュエリーの基礎知識を学ばせてもらいました。

30歳で結婚してからもずっと働いていたので、子どもを持つという意識がありませんでした。
そろそろ子どもも作らないと……と慌てて、今でいう妊活に取り組むように。
そして、34歳のときに出産。
妊娠がわかった直後に阪神淡路大震災が起きました。

幸いにも被害に遭うことはなかったものの、震災と出産を機に家庭に入ることにしました。
ずっと憧れていた「専業主婦」。やっとなれた! という感じでした。

しかし、数年後、私には専業主婦が向いていない、ということがわかりました(笑)。
主婦業に喜びを見出せなかった、というのが正確かもしれません。

子育てはとても楽しかったけれど、どことなく虚しさを感じることもあり、社会と切断された状態にこれで良いのかなぁ……と考えるようになったんです。

主婦として最低限のことはするけれど、家に一日中いても、室内がピカピカになるわけでも、お料理の品数が増えるわけでもなく(笑)。

これなら働きに出た方がいい……仕事がしたい! と強く思うようになりました。もうすぐ40歳――年齢の壁が私の前に立ちはだかっていました。

その頃はなぜか、女性は40歳代の10年が勝負だと思っていて。
50歳になると更年期などで元気に働けない気がしていて。

■自由を大切にしたくて起業を決意

何かしなきゃ、と気持ちだけは焦っていましたが、一体何をしたらいいんだろうと思い悩む気持ちもありました。

幼い子どもとの時間は大切にしたい。
だから、企業に勤めるスタイルではなく、自由がきくように自分で何か始めなくては。
でも、やってきたことしかできないから、やっぱりアパレルの仕事しかない!
そんな結論に。

でも、ショップを構えると私自身がショップに縛られる。それは子どもとの時間がなくなるからイヤ。というわけで、自宅近くにワンルームマンションを借りて、サロンのような感覚で始めました。
これが15年前。

LiSA LiSA の始まりです。

当初は以前からお付き合いのあったメーカーさんから仕入れたり、真珠の卸会社をしている友人からパールを仕入れたり。
私の周りの友人や昔のお客さまを中心に販売をスタート。

私が30歳代のときに30歳をターゲットにしたファッション雑誌がちょうど創刊されました。
そのとき偶然にも雑誌に載せていただいたご縁で、スタイリストさんを紹介していただき、商品を貸し出しているうちに、モデルさんが身に着けて掲載された商品について、お問合せのお電話が……。

「◯月号の◯ページに載っている商品がほしいんですけど、商品を送ってもらえますか?」
えーっ!? 雑誌を見て注文が入るなんて……!

その頃はまだ電話とFAXの時代。
携帯もパソコンもありません。
そして、通信販売で買うなんてほとんどない。
雑誌を見て注文をいただけるという現実に、ただただ驚くばかりでした。

すると、知らない間に全国にお客さまが増えてきて、それならカタログを作っちゃおう! と思い立ち、通信販売を始めることになったんです。

■駆け抜けてきた15年は早かった

年に2回、自社のカタログを作り、テレビや雑誌の通販も手がけるようになり、中でもショップチャンネルでは、カリスマゲストとして全国のお客さまにLiSA LiSAを発信する機会をいただき、6年目を迎えました。

昨年にはコスメライン「KANO」がデビュー。
女性なら誰でも、いつまでも若く美しくありたいと願うもの。
その原点は健康であること。
それを確信したのが、50歳になった頃でした。

健康であるためには、毎日使うものや食べるものには、本当に良いものが必要だと思い、試行錯誤を繰り返し、5年目にしてやっとできあがった想いの詰まった化粧品。

年を重ねるごとに必要となるものが変わっていく。そのときどきに必要なものを発信していけたらいいなぁ、と思っています。

今年でLiSA LiSAを立ち上げてから15年。
無我夢中で走り続けてきました。
もちろん順風満帆ではなかったけれど。

どうして始めちゃったんだろう?
私はこれをいつまでやるんだろう?
と、何度も思いました。

■5年前、LiSA LiSAを続ける意味がすとんと落ちた

美辞麗句を並べるつもりはないですが、

「いつも素敵な商品をありがとうございます」
「LiSA LiSAの商品を身につけていると褒められるんです」

などというお客さまからのメッセージがいつも私を救ってくれました。


ブログを始めて8年目。
始めるとき、自分自身とこんな約束をしました。
1日1回必はずアップしよう、と。

書けるネタがないときも、寝てしまうときもあるけれど、とにかく更新を続けること!
今ではたくさんの方が毎日の日課として、楽しみにしてくださっています。

「いつも元気をもらっています!」
「色々な情報を発信してくれてとても嬉しい」
そんなメッセージが日々の励みになっています。

起業から10年ほど経ったときに、LiSA LiSAを続けている意味がなんとなく自分の中にすとんと落ちた瞬間がありました。

それはLiSALiSAを通じて、皆さんが元気になれることや、笑顔になれることを発信していくこと。

15年を迎えた今もそれに変わりはありません。
毎日をどんなふうに過ごすのか……どうせなら笑いあふれる楽しい1日を過ごさなきゃ!

実はLiSA LiSA は「りさ」という一人娘の名前を元にしています。
「はい。LiSA LiSAでございます」と電話に出る度に「仕事をしていてもママはあなたのことを忘れていないよ」という娘への想いを込めた名前。

その娘も成人式を迎え、私も55歳に。
想像していたのと全然違って、50代がこんなにも楽しいだなんて……と思える50代を過ごせています。

これは、40代を無我夢中で頑張ってきたご褒美かもしれないなぁ、なんて思うことも。

これからも、皆さんに笑顔を届けられるLiSA LiSAであり続けます。

■貴田加野(きだ かの)さんのプロフィール

株式会社LiSA LiSA 代表取締役社長。芦屋生まれ、芦屋育ち。55歳。
2001年にカタログを中心とした通信販売による大人の女性のためのファッションブランド「LiSA LiSA」をスタート。
自社カタログやTVショッピング、雑誌などでも独自の感性で商品を展開。ファッションアイテムからビューティーアイテムに至るまで、神戸・芦屋流のオシャレをトータルにプロデュースするライフスタイルブランドを展開。
http://lisalisa-jp.com/
http://ameblo.jp/lisalisa-ashiya/

DRESS編集部

いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。

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