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30代後半は「過渡期の女」~働く女性・ボロボロとキラキラ~【塩村あやか】

働く女性がキャリアもプライベートも難なく手に入れられる社会を目指し、政治家の道に入った東京都議会議員・塩村あやかさん。いわゆる「ロスジェネ世代」にあたる塩村さんが、リアルタイムで感じていることを月1回の連載コラムでお届けします。

30代後半は「過渡期の女」~働く女性・ボロボロとキラキラ~【塩村あやか】

 現在、東京都議会議員。前職は放送作家。その前は自動車ライター。こう書けばカッコいいと思う人もいるでしょう。時にクイズやバラエティ番組に出演しているので「チャラチャラとキラキラの狭間」と思う人もいるかもしれない。

 でも、DRESS読者の皆さんはもう気づいているはず。
「キラキラの輝く女性の経歴」に見えるけど「かなり不安定な人生ね」って。私は30代後半の自分の世代のことを「過渡期の女」だと思っています。

 都議会議員が安定した仕事なら、キラキラかもしれない。だが、しかし。都議会議員選挙は毎回1/3が入れ替わる選挙です。自民や公明、共産などの組織がしっかりした政党の議員や、一部の民主など地盤が固い議員で2/3の議席が固まっていると言われています。つまり、残りの1/3を選挙時の風など世論の動きを掴んだ政党の候補者が埋めるわけです。私は紛れもない後者。当時はみんなの党という政党で当選しました。が、ある日突然なくなってしまった。次回の選挙は来年に迫っていますが、ベースの政党票がないので、当選は難しいといわれています(泣)。なんて安定しない仕事なんだ。

■男女「平等」でも「公正」ではない世界

 前職の放送作家だって、非正規雇用。しかもフリーランスの職です。29歳のとき、前職の自動車ライターと掛け持ちをしながら、見習い放送作家を始めました。番組制作会議には「ネタ出し」というものがあり、自分の提案をしたネタ(企画)が採用されていけばコーナーを任せてもらえたり、局員さんと組んで企画書を書かせてもらえたりします。
 
 私は『恋のから騒ぎ』(日本テレビ)という人気番組の出演者で年間MVPを獲得した猛者であり、番組への貢献があったことから局へ出入りできていたというラッキーなスタートではありましたが、経費削減の徹底が開始されており、番組会議に入れてもらうのは至難の業。常に深夜まで(時に泊り込み、椅子を並べて寝る)局内で仕事をし、ネタを書き、企画書を作成し、歩いている知り合いのプロデューサーやディレクターがいれば、つかまえて企画書を見てもらう。ダメだしの嵐ですし、感想すらもらえないことも多かった。

 そうしているうちに、知り合いも増えていって私の感性やキャラが生かせそうな新番組などに正式に呼んでもらえるようになりました。「あいつ、頑張っているからちょっと呼んでみようか」という具合です。こうしたことからもわかるように、男性と同等の体力と根性と頑張りを見せないとそのチャンスを掴むことはできなかったわけ。そう、一昔前、女性は男性作家と同じ土俵に立つには不利でした。マスコミは仕事に関しては男女「平等」です。しかし、「公正」という考えが外部の出入り業者にまではあまり配慮がなかった。そんな時代です。

 この1~2年は安倍政権の掲げる女性活躍、そして私も関係する「都議会セクハラやじ」騒動もあり、急速に男女共同参画やハラスメント撲滅が進みます。いまは「公正」の部分にまでマスコミも配慮がなされているかもしれません(平等と公正の違いの説明は必要ないですよね?)。

 そして、放送作家は不規則で不安定で社会的な保障がない仕事。厚生年金もなければ、失業手当も、育休も産休もないも同然。バブルの時代なら、ギャラが高額でしたから自己責任の中で各種保険に加入をする余力もあったでしょう。しかし、私は現在37歳で「ロストジェネレーション」いわゆる「就職氷河期」「ロスジェネ」世代の代表。つまり、短大を卒業した年には希望する職種(日系航空会社など)が、こぞって採用を見送ったように、多くの会社が正規雇用に慎重だった年なのです。卒業時の有効求人倍率は0.48で、過去最低のリーマンショック翌年のそれとほぼ同じ水準。当時の過去最低であり、現在もワースト2の年となっています。

 「社会に出た瞬間から非正規雇用」。年金の積み増しも健康のことも、日々の生活に追われ後回しで手つかず。保険も最低限の国民共済のみ。そんな非正規雇用やフリーランスで頑張っている人が多い世代です。

■女として人として、犠牲にしてきた数々のこと

 私が都議会議員を志した理由の一つに「日本一の都市の東京の女性がこんなに大変なんて、夢も希望もないじゃん」と痛感したこと。30歳を超えて長く続く番組に出会え、生活も少し楽になりました。そんなとき、出産のことを考え始めた。フリーランスという形態の放送作家は「育休」はもちろんありませんし、「産休」は法的には取得可能ですが番組に迷惑をかけてしまいます(期間限定で入ってくれる作家に取って変わられてしまう可能性もありますし、クライアントに長期間休ませてくれなんて言えません)。1回放送ごとのギャランティ制なので休んでいる間は自身の収入が0になります。また、待機児童問題を抱える東京においてフリーランスはポイントが足りず、待機児童になってしまうことが明白でした。これでは出産前と同じだけ仕事を続けるのは無理です。

 子どももほしいけれど、生活も大事。こうした悩みやジレンマを抱える女性や家族が東京に多いのは間違いない。意を決して都議会議員選挙に立候補しました。
 
 選挙では朝から晩まで駅に立ち、演説。主義主張の違う方から怒鳴られたり殴られたり。当選をすれば少人数の党派ということで正論すら通らず、弱いものいじめ状態。セクハラやじのときよりも精神的に耐えがたい犯罪紛いの嫌がらせも多く、何度も警察に相談をしています。仕事はてんこ盛りで、帰宅は深夜2時を超えることはザラ(始業が遅めなのでご心配なく)。数時間睡眠を取り、仕事に出かける……の繰り返し。美容院には年に3回ほどしか行けませんし、爪を切る時間すらもったいないときがあるほど。

 それでも経歴だけみれば、輝く女性かもしれません。
 ロスジェネ世代の代表として「なにくそ」と頑張ってきましたが、この生き方とキャリアのつむぎ方が正しいとは全く思えないのが今の正直な感想。なぜなら「女性」として「人間」として、犠牲にするものが大きすぎるから。

 冒頭に30代後半が「過渡期の女」と書いた理由はここにあります。自分のやってきたことを下に押し付けていては、変化していく時代に追いつくことはできません。頑張りすぎてくたびれた姿を見せて「ああなりたくはない」と思われてもいけない。下の世代が「キャリア」も「プライベート」も不本意に捨てることなく、両立できる下地を作っていくことが責務の世代だと感じています。しんどい世代なのです。しかし、自分一人という時代でもない。見渡せば、少なからずいる。そうした仲間と一緒に時代をステキにしていけたらと思い、日々理不尽と闘っています。

 「過渡期の女」はスーパーウーマンではありません。能力のある女性が不本意にキャリアを諦めている現実があります。逆に「過渡期の女」は彼女たちが得ているものを未だ得ていないわけですが、スーパーウーマンではない「過渡期の女」が頑張ることで世の理解を深めていくことができるかもしれません。
 今はボロボロになりながら、キラキラしているフリをして頑張るしかない。それが今の私を含む「過渡期の女」の役目だと思っています。

塩村 あやか

東京都議会議員。モデル、自動車ライター、放送作家を経て、社会の問題は全て政治に行き着くと気づき政治の道を志す。維新政治塾1期生。2013年にみんなの党より都議会議員選挙(世田谷選挙区)に初出馬、当選を果たす。2014年には初...

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