花をもらうことは気持ちをもらうこと
自由が丘マリクレール通りの石畳をずんずん歩く。私の足取りは軽い。胸にはつい今しがたもらった花束を抱えている。早足で歩いたら、風の冷たさを忘れるくらい体がポカポカ暖かい。
**「私」(40代ワーキングママ由樹子)の目を通した「ちょい足しボタニカル生活」をお届けします**
自由が丘マリクレール通りの石畳をずんずん歩く。私の足取りは軽い。胸にはつい今しがたもらった花束を抱えている。早足で歩いたら、風の冷たさを忘れるくらい体がポカポカ暖かい。
昨日の誕生日は最悪だった。別にこの歳になって、歳の数ぶん、ろうそくを立てたケーキで祝ってもらおうなんて期待しているわけじゃない。だけど、家族全員が私の誕生日を忘れているなんてあんまりだ。ちょっと頭にきて、夕食の後リビングに仁王立ちし、カレンダーをガン見するふりをしてみたが、鈍感な夫はげっぷをしながら私の横をすり抜けて、冷蔵庫からビールを出しソファーにごろりと横になった。
最低な誕生日の翌日は、大学時代からの友達4人との飲み会だった。学生時代によく遊んだ自由が丘で彼女たちに会うと、サークルのロゴ入りジャージを着た大学生の頃に、一瞬で戻った気がする。
「由樹子、昨日誕生日だったよね。おめでとう! はい、コレ」
そう言って渡された花束を見て、危うく涙がこぼれそうになった。花束をしっかりと胸に抱えて帰り、すぐに花瓶に丁寧に活ける。私は顔を近づけ、みずみずしい春の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
「ね、ひどいと思いません? やっぱり女友達が一番だわ」
花屋のおばさんはニタニタ笑いながら、私のグチを黙って聞いてくれた。
「花束の花がだんだん傷んでくるでしょう? 傷んだ花を抜いていくと、スカスカで寂しい花束になっちゃう。花束を最後まできれいに飾るにはどうしたらいいのか教えてほしいんです」
「ああ、それならこれを真似してごらん。一輪挿しを使うといいよ」
おばさんは、がっしりした木のテーブルの上に、ところ狭しと並べられた花のバケツを指さした。1つのバケツには1種類の花が入れてあって、花の長さによってバケツや花器の高さが異なる。そして、背の高いのが奥、低いのが手前というふうに、高低差を出すことで大量の花をバランス良く並べることができるのだそうだ。
教わった通り、スカスカの花束をバラし、1本の一輪挿しに1本ずつ花を入れてみる。高いのは奥、低いのは手前。なるほどこうして飾ると、花数は少ないのにボリュームが出るし、何より一輪挿しは扱いやすい。
花をもらうことは気持ちをもらうことだ。最後の1本まで大切に飾りたい。そんな花をくれる友達がいることで、人生はずっと楽しくなる。
+++ もなみのちょい足しポイント +++
複数の一輪挿しをバランスよく配置するコツは2つあります。1つは「高いのを奥、低いのを手前」に置くこと。そしてもう1つは、正面から見て三角形になるように並べることです。一輪挿しがない場合は、栄養ドリンクの瓶などで代用してもいいですね。一箇所に集めても、別々の場所に1つずつ飾っても可愛い一輪挿し。ぜひ気軽に使ってみてください。