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なんじゃこりゃ!! メルボルンで“頭に落雷”

今や日本を代表するアボリジニアートのコーディネイターとして、数々のメディアに登場する内田真弓さん。華やかな日々を謳歌していた彼女が、どんなきっかけでオーストラリアに渡り、アボリジニアートと出会い、何を感じたのか。日々に少し息苦しさを感じているあなたにこそぜひ読んでもらいたい物語。第1回です。

なんじゃこりゃ!! メルボルンで“頭に落雷”

初めて降り立ったメルボルンは美しく、大きな街だった。1年ぶりに日本食を食べお土産も買い、この国ともお別れかとセンチメンタルな気分で歩いていると、突然の雨。「お金もないし、どっかで雨宿りしようとして目に入ったのが、ある画廊でした」。

足を踏み入れた瞬間、頭に雷が落ちたような衝撃を受けた。「なんじゃこりゃー!!って」。内田さんと、アボリジニーアートとの出会いだった。心を揺さぶられた。内側から湧き上がってくる、言葉にならない感情。動けぬまま1枚の絵の前に突っ立っていたら、あっという間に閉館時間。物珍しかったのか画廊のオーナーが声をかけてきた。「お前は日本人か? 日本ではアボリジニアートはどう評価されているんだ? って」。

当時、アボリジニアートに関心をもっている日本人はほとんどいなかった。内田さん自身も知識はほぼゼロ、でもなぜか惹かれることを素直に伝えると、閉店後の画廊で、オーナーはアボリジニアートについてレクチャーしてくれた。初対面の貧乏若者の私に、なぜこんなに熱っぽく語ってくれるんだろう。もしやこの後、食事にでも誘われる?なんて明るい妄想すら抱いたものの、オーナーは愛車のロールスロイスで宿泊先のボロボロのバックパッカーまで送ってくれ、そして紳士的にお別れ。

その晩は、そのボロボロ宿で興奮のあまりほとんど眠れなかった。頭の中には、あの不思議な力をたくさん放っていた初めて観たアボリジニアートのことがぐるぐると駆け巡る。いったいあの絵が持つ言葉にならないエネルギー力はなんだろう……。
「現在、アボリジニアートはモダンアートとして扱われているけれど、そこに描かれているのは脈々と伝承されてきたストーリーと知りました。文字を持たない民族である彼らが、例えば水の出る場所を仲間に伝えるために描いたりするのだと」。聞けば聞くほど興味深く、惹かれていった。

翌日、ホテルをチェックアウトした内田さんは、最後にもう一目、絵を見たくて画廊へ立ち寄った。オーナーは続けて2度もやってきた内田さんを面白がり、いつかこの画廊で働けばいいと言ってくれた。
いったんは帰国した内田さんだったが、アボリジニアートが忘れられない日々。新たな夢を叶えるべく、日本でアルバイトを掛け持ちしてお金をためた。そしてオーナーに国際電話をかけると、本当に受け入れると言ってくれ、美術の知識ゼロの内田さんがスペシャリストビザをとるために尽力もしてくれた。「どうせ無理、行かなくてもいいやと、やらない理由を探して諦めるのはラク。でも、自分の中にモヤモヤと何かあるのなら、ちゃんと向き合わなきゃもったいない」。

そして再びオーストラリアに戻ることを叶えた内田さん。だが、本当の苦労と喜びを知るのはここからだった。

>>次回
https://p-dress.jp/articles/1506

内田 真弓
アボリジニアート・コーディネイター。1966年茨城生まれ。大手航空会社でキャビンアテンダントを経験後、26才で退職しオーストラリアでボランティアの日本語教師に。1994年よりメルボルンのアボリジニアートの画廊に6年間勤務。2000年に独立、「ART SPACE LAND OF DREAMS (http://www.landofdreams.com.au )」を立ち上げ現在に至る。 著書に『砂漠で見つけた夢』(K.Kベストセラーズ)。今年10月、東京銀座三越にて「内田真弓プロデュース・アボリジニアート展(仮)」を開催予定。

DRESS編集部

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