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カンボジアで不動産会社を創った私が振り返る、良かったこと、悪かったこと

数カ月後には給料がゼロになる――そんな状況になったらあなたはどうしますか? カンボジアで不動産会社を起業した荒木 杏奈さんが自身の起業生活を振り返りながら、良かったこと、悪かったことを考えていきます。

カンボジアで不動産会社を創った私が振り返る、良かったこと、悪かったこと

こんにちは、カンボジアで不動産会社・アンナキャムパートナーズを経営するアンナ(荒木杏奈)です。実は、独立して社長になりたいとは思っていなかった私。むしろ、環境がそうさせたと言うべきかもしれません。

まずは起業したきっかけからお話しします。カンボジアで暮らし始めた当時の勤務先は、日本とカンボジアの合弁会社で、日本からの投資や進出などの問い合わせの窓口を担当していました。

それから1年ほど経った頃のある日。日本側から「日本の投資に注力をするからカンボジアの事業を縮小する」と連絡があったのです。
「縮小」とは単なる言い回しであり、要はもう人を置かないことにしたということ。イコール、私は数カ月後からお給料がゼロになる、ということ。私の頭の中には「?」だらけ。人生で初めての経験でした。

普通なら、日本に帰るという選択をされる方が多いかもしれません。しかし、その選択は出てきませんでした。なぜなら、日本で会社を辞めてカンボジアに行ってきますと旗をあげた以上、1年くらいで戻ってしまってはカッコ悪いから。六本木のお洒落なイタリアンレストランや、青山の和食屋さんなどで職場仲間や友人やクライアントに送別会をしてもらった負い目もあります。

そして、カンボジアの成長を肌で感じており、ここで撤退するなんてもったいない、もっとできることがあると感じました。

■女性は強し!?

焦る気持ちより、何とかなる、何とかするという気持ちの方が大きく、今の自分に何ができるかを考えました。このようなピンチに直面したとき、女性は精神を強く持っていられるのかもしれません。私はカンボジアに行ってから、自己資金でカンボジアの不動産投資(コンドミニアムへの投資)を行い、この投資が成功する可能性が高いと確信していました。

というのも、カンボジアで外国人の不動産投資が許可されたのはここ数年の話であり、前回「NYに憧れた私がアジアに飛び出した理由」にも記載した通り、投資環境の良さは調査済みだったから。

事業縮小の連絡を受けてから、どうするか考えた結果、独立して不動産会社を立ち上げることにしました。自分の投資の経験と、まだまだ同国の成長を肌で感じている点、これだけが強みです。

そんな私が起業して良かったことと悪かったことをそれぞれ5つまとめてみました。
今後、考えが変わるかもしれませんし、だいぶ偉そうなことを記載していますが、起業して3年で感じたことです。まずは、悪い方から。

■起業して悪かったこと5つ

1.信用力がない

カンボジアで起業してから一年経った頃の話です。東京で、あえて、知り合い以外の不動産会社に行き、賃貸物件を探してもらったことがあります。勉強のためにも、優遇されることのない、普通の対応を見たかったからです(冷やかしではなく、本当に物件を探していました)。

時間がないので、あまり時間をかけず、立地や管理会社を重視。気に入った物件があったので、すぐに申し込んだところ、審査落ちしました。賃料を払う資金はありますが、外国企業で日本では収入がないので、要は信用がないわけです。結局、自分の状況でも受け入れてくれる優良物件があり、即決しました。

お金を借りる場合も同じです。実際は方法がありますが、サラリーマン時代に信用力のある会社に頼り、住宅ローンを組むべきだったことに気づかされました。銀行口座開設やクレジットカード作成などは、銀行や会計士さんからの紹介でクリアできましたが、通常は難しい場合があるようです。

2.責任が増える

カンボジアでは、日本人とカンボジア人スタッフ10人くらいを雇っているので、当然、彼らにはお給料を払わなければいけませんし、その他の経費もたくさん発生します。彼らの人生を背負っているぶん、頑張らなければいけないという責任があり、ときには心配で眠れない日や夢でうなされる日もあります。

ただし、いつも恐怖を感じていると物事はうまくいかないので、会社が潤うために、まずはお客さまに潤っていただけるよう考えています。

3.仕事とプライベートが混じり合う

趣味は仕事。いつの間にか、こうなっていました。休暇を取っても、結局は仕事のことを考えてしまい、気がついたらホテルでパソコンに向かい、仕事をしていた……なんてことはしょっちゅうです。

4.雇用の難しさを知る

前職などで、採用面談は何度かしたことはあるものの、自分の会社で雇用するのとはわけが違います。特に1年目は、社員のための働く環境作りが後回しになり、現地スタッフが定着しませんでした。また、現在改善中ですが、最近ではカンボジア人スタッフが進んで受注し、日本人がサポートする体制もできてきました。全員にたくさん稼いでほしいです。

5.何でも自分がやるしかない

大手企業と仕事をすると、自分の会社がいかに小規模であるかを思い知らされます。「起業して良かったこと」に判断の速さについて書きますが、逆に人数が多い方が数をさばくことができるんです。

独立前は、組織の中の一部門で、一社員として全体の中の一部分をこなせば良かったのですが、独立してからは、それらの仕事を全部自分でこなさなければなりません。申告や請求書や領収書の発行なども、立ち上げ時にスタッフがいなければ、すべて自分で巻き取るしかないんです。会社のありがたみを知ることができました。

「悪かったこと」とまとめましたが、後悔はしていませんし、今があるのはこれらを経験しているからです。ですから、ポジティブに考えています。次に、起業して良かったことをまとめます。

■起業して良かったこと5つ

1.判断が早い

大きな組織ほど、承認する人数が増える傾向にあるため、時間がかかります。また、誰も読まない議事録があったり、意味のない会議があったりするのも同じです。

人間は誰でも考え方が違うので、意見の食い違いがあるのは当たり前ですが、小さな組織では、基本的に最終判断が自分なので、判断スピードが速いです。私の方針は、できることはどんどん採用して、まずはやってみるということ。「何をしないかを決めること」も重要なので、手を広げすぎないように気をつけています。

2.業績が自分の収入に直結

良くも悪くも、成果があれば収入アップ、悪かったらダウン。
このようにダイレクトに自分に返ってきます。私の会社の経営陣は給料制にはしておりません。

サラリーマン時代は、安定したお給料をいただいており、成果報酬という給与形態は考えられませんでしたが、どうやら私の性格はこちらの方が向いているようです。スタッフにも同じ感覚も持ってもらいたいので、ベースのお給料+個人の結果連動にしており、結構いいお給料のスタッフもいます。自分のことよりも、Give and Giveの精神で、お客さまにどれだけのことをしてあげられるかを先に考えることがポイントなのではないでしょうか。

3.自分のやりたいように時間が決められる

スケジュールを自分で自由に決められるのは魅力。日本かカンボジアにいると、結局仕事をしてしまうことが多いので、他国で休みを取ることもあります。

現在、日本とカンボジアの直行便がないので(2016年9月から直行便ができます!)、シンガポールやタイなどに行くことが多いです。平日に休むと、美容院やデパートなどが空いていてゆったり過ごせるのはうれしい!

4.付き合う相手が変わる

経営者や投資家・資産家・有名な会社の社長さんなどがお客さまになる場合もあり、応援していただけることが何よりうれしいです。あら探しをするより改善策を見つけ、どうやったらお互いがプラスになるかを自然に考えられる方が多い気がします。

5.「Time is money:時は金なり」をより深く考えるようになった

誰と過ごすか?
この時間を何に使うか?
このお金をどこに投資するか?
この投資先は投資に見合ったリターンが得られるか?

これらをよく考えるようになりました。

自由(独立)とは責任を意味します。それを恐れる方が多いと思います。私もそのひとりでした。起業という観点で見ると、海外だろうと国内だろうとあまり変わらない気がします。私の場合は、やりたいことがたまたま海外にあっただけなのかもしれません。

もし、起業をするかどうか悩んでいるなら、後悔する前にやってみてはいかがでしょうか。失うものは以外と小さいですし、良いことも悪いこともひっくるめて、私は楽しんでいます。後悔しない生き方のほうが、きっとハッピーになれますよ。

※この記事は2016年2月10日に公開されたものです。

荒木 杏奈

宅地建物取引士。1984年生まれ、東京都出身。大手ネット広告代理店(株)セプテーニ入社。その後SBIマーケティング(株)を経て、2012年10月よりカンボジア金融機関に勤務。2013年12月から、アンナアドバイザーズ株式会社...

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