川崎貴子さん×勝部元気さん――大人の恋愛対談・前編「なぜ現代社会でダメ男が目立つようになったのか?」
できることなら関わりたくない「ダメ男」。でも、ダメ男ばかりつかまえてしまう女性がいるのも事実です。とはいえ、そもそもダメ男とはどういう人種なのか? どうすればダメ男を避けられるのか? あるいはダメ男をデキる男に育成できるのか? 今改めて、ダメ男について真剣に考えてみたい!
著書に『愛は技術』などがあるジョヤンテ代表取締役の川崎貴子さんと、著書に『恋愛氷河期』があるコラムニスト・社会起業家で、リプロエージェント代表取締役の勝部元気さんに、ダメ男をテーマに対談していただきました。
ダメ男認定されるハードルが低くなっている
勝部さん(以下、勝):最初に、どんな男性がダメ男なのか決めたいですね。川崎さんはダメ男の定義って何だと思いますか?
川崎さん(以下、川):前提として、DV男やモラハラ男は除外しましょう。彼らは付き合ってはいけない最上級にダメな相手ですし、万一関わってしまったら「逃げて!」と注意したい。大きくは(1)ふたりの間で決めた約束やルールを守れないダメ男、(2)向上心がないダメ男の2パターンに分けられると思います。
勝:付き合ってもメリットがなさそう……。
川:デメリットの方が大きい、ともいえますね(笑)。ダメ男でも話が面白かったり、マッサージが上手かったり、一緒にいて癒されたりと、女性側が彼の「光るもの」を見出していれば、そう悪くないのかな。
勝:点数がかなり低い教科もあるけれど、それ以外は及第点以上取れている、みたいな感じでしょうか。ただ、中には相手の一部分だけを見て「この人、ダメ男!」と決めちゃう女性もいますよね。
川:もったいないですよね。完璧な人なんていないのに。
勝:近年、良い意味で「ダメの水準」がどんどん上がっているなと感じています。女性が発信力を手に入れたことで、これまでダメ男に分類されなかった人も、冷静に考えると「この人はダメ男なんじゃないか?」というケースが増えてきていると思うんです。ただ、一方で社会が複雑になればなるほど様々な能力が必要になり、極端な話、今までは3個できていれば合格だったのが、最近では10個できないとダメ男認定されてしまう。その点に関しては男性もちょっと気の毒です。
川:昔は終身雇用のレールに乗っていれば、ダメ男要素があっても、ダメ男認定されませんでした。それが今となっては……(苦笑)。あともうひとつ、SNSの普及も関係していると思います。言葉は良くないかもしれませんが、基本的にSNSは自慢大会みたいなもので、良い部分だけが切り取られています。「彼が素敵な宿を取ってくれた」「夫が美味しい料理を作ってくれた」といった他人の情報発信を見て、「それに比べてうちの彼(夫)は……」とどうしても比較しちゃう。
勝:SNS上で見せていない裏側では、大変なことやツラいこともあるのに。SNS時代ってどうしても“青い芝”が目立つ傾向にありますよね。
男性に頼れないキャリア女性がダメ男を増やしている
川:男性がやらないといけないことは、昔と比べて格段に増えていますよね。私の父親世代(70代前後)だと、大半が専業主婦家庭でしたから、ただ外で稼いでくれば良かった。でも、今の時代は夫婦のあり方も多様化していて、専業主婦家庭だけではなく、共働き家庭も多くなっています。そのぶん、夫は稼ぐという役割を果たすだけでは済まなくなっている。だって、家族サービスという言葉自体、もうNGでしょう? 求められているのは「自ら望んで家族と楽しく過ごす夫」像です。
勝:お手本となるような男性が少ない中、時代のニーズに自ら適応できない男性たちが投げやりになり、ドロップアウトしてしまう。
川:以前「キャリア女性がダメ男を量産している」というテーマで記事を書きました。彼女たちは息子を溺愛する母親のように男性の世話を焼き、相手のすべてを許してしまうんです。たとえ相手が浮気をしても、ごめんと謝られると許してしまう。ビシッと怒れない女性は少なくありません。
勝:恋愛の場でネゴシエーション(交渉)できない、ということですね。ちなみに、ダメ男を量産する傾向は、キャリア女性に特徴的なんですか?
川:社会に出てがんばっていて、プライドもあって、男女平等だと考えているキャリア女性は、夫のおしりを叩いて伸ばす鬼嫁タイプの専業主婦のように男性を頼ったり、「頑張るあなたが好きよ」と言ったりできないんですよ。
勝:自分も(または自分のほうが)外でハードに働いている自負があるから、「頑張るあなたが好き」なんて言いにくいし、言いたくない気持ちもあるでしょうね。男性にネゴシエーションできず甘やかしてしまうのは、仕事とプライベートのスイッチを切り替えすぎてしまっているからなのかと。
川:でも「あなたが頼りなのよ」と言われたいのが男性です(笑)。
勝:逆にいえば、キャリア女性であろうとなかろうと、「あなたのことを頼りにしている」と男性のおしりを叩かなければ、男性はがんばらなくなってしまう?
川:そうでしょうね。「僕はがんばらなくて良いんだ」という選択肢があるわけですから。キャリアダウンしていく夫の事例は何件も見てきましたよ。
男女間コミュニケーションに興味のない男性たち
川:「恋人はいらない」とか「結婚はどうでも良い」と思う男性が増えています。それは個人の自由で良いとしても、適齢期の女性と付き合っているのに、いつまでも結婚を決められない男性もダメ男だなと感じます。
勝:日本の都市空間はおひとりさま用に作られていると、都市デザインの専門家が解説していました。人との関わりを持たなくても生きられる社会が、どんどん進行しているのかと。長年そういう環境で過ごしてしまうと、おひとりさま志向をやめられない男性も多いのではと思います。私もひとりで過ごすのは好きな方です(笑)。
川:そうなんですか(笑)! うちの夫もひとりの時間を大事にしたがるタイプなので、その気持ちもわかりますが(笑)。でも、おひとりさま志向が強いからダメ男だ、というわけではないですよ。たとえば、彼女の結婚・出産・育児のビジョンを聞いても、何ひとつアクションを起こさなかったり、ただダラダラと交際し続けたりするのは、明らかにダメ男だなと思うのです。
勝:確かに。自分のビジョンやポリシー、プランを持っていないことや、それを相手に伝えようとしないことはダメですね。
川:それなら別れたら良いのに、と思うんですよね。私が主宰する婚活塾に来る女性の悩みを聞いていると、将来どうしていくかはっきりせず、コミットしない男性の多いこと多いこと。結婚できないわけでもないし、別れたいわけでもないのに、彼女任せにしているんです。だから私は女性に対して「(男性を)引っ張って!」と言い続けています。
勝:ふたりの価値観に何かしらのギャップがあるなら、埋める意思や努力が必要だと思いますが、それがなく、試みようとしないのはダメかと。婚活塾の生徒さんは女性ですよね? 同じ取り組みを男性向けに展開してもウケないというか、ほとんどの男性はそのあたりの向上心がないように感じます。男女のコミュニケーションに関する真面目な勉強会を開いても、女性参加者が8〜9割を占めますから。
川:男性は男女間の円満なコミュニケーションは努力しなくても、成功すれば後から自動的についてくる、と思い込んでいます。成功する日なんてこないかもしれないのに(笑)。普通に会社員として働いていると、年収が5〜10倍に上がる確率なんてかなり低いですよ。
(後編に続く)
勝部元気さん
1983年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒。働く女性の健康管理を支援するコンサルティング会社「株式会社リプロエージェント」の代表取締役を務めるなど、各種ソーシャルビジネスに携わっている。専門はジェンダー論、現代社会論、コミュニケーション論、教育論等。他にも幅広い知識習得に努めており、所持資格数は66個にのぼる(2015年8月現在)。ブログ『勝部元気のラブフェミ論』は、男性なのに子宮頸がん予防ワクチンを打ったレポートで話題となり、一躍日本における男性フェミニストの代名詞的存在に。現在、雑誌・TV等でコメンテーター活動をしている他、Webでは女子SPA!と朝日新聞社WEBRONZAにて連載中。Facebookは「genki.katsube」、twitterは「@KTB_genki」。著書『恋愛氷河期』(扶桑社)が発売中。
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