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見えない将来が不安すぎて、今を楽しめないあなたへ

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良い学校に入って、良い就職、良い結婚、良い老後……。先々の「良い」を追い続ける生き方って、本当に幸せなのだろうか? “コンプレックス解消家”としても活動する、ライター・講演家 朝倉真弓さんのコラム連載、第3回。

見えない将来が不安すぎて、今を楽しめないあなたへ

あなたは、「アリとキリギリス」の寓話を覚えているだろうか?

ある夏の日、キリギリスはバイオリンを弾きながら歌を歌っていた。そのそばを、食料を巣に運ぶアリが通りかかる。
「こんなにたくさん食べるものがあるのに、なぜ一生懸命に集めているの?」
こう尋ねたキリギリスに、アリは答えた。
「今はたくさんあるけれど、冬になったらなくなっちゃうからね」

夏も秋も音楽三昧で暮らしたキリギリスは、冬になり、ひもじい思いをする。
そこでアリに食料を分けてもらおうとするが、「遊んでいたあなたが悪い」と断られてしまう。
今ラクをしていると、先々痛い目にあうという教訓だ。

■将来は不安なものと思い込んでいないか?

私たちは小さいころから、「将来を見据えて行動しましょう」と教えられてきた。

習いごとをするのは、心豊かな大人になるためです。塾に行くのは、少しでも良い学校に行くためです。良い学校に行ったら、将来の選択肢が増えますよ……。

学校に入学してからも、繰り返されるのは、勉強→テスト→成績表のループ。知らず知らずのうちに「将来は不安なもの」という一文を人生の定規に刻み込み、「少し先の幸せのために、今、辛くても努力しなければならない」という思考を身に付けていく。

そして、この思考は死ぬまでついて回る。
良い学校に行ったとしても、次は良い就職、良い結婚、良い家庭、良い老後。さらには、ピンピンコロリなどと表現される、良い死に方……。

その「良い」って、誰にとっての「良い」なのだろうか。
先々の「良い」を追いかけ続ける生き方って、本当に幸せ?

■将来に追い立てられるのは、自分の「今」を信頼していないから

ここで、少し私のことをお話させていただきたい。

私の就職活動は、俗に言う“就職氷河期”の1年目に引っかかり、希望の業界がことごとく採用を控えた年に当たってしまった。のちに知ったのだけれど、結果的に各社ひとりとかふたりだけの採用だったその年の新卒組は、ほぼ男性ばかりだったという。男女雇用機会均等法はあったものの、それが当時の現実だった。

最終面接まで行くのに落とされるということを繰り返した私は、結局、まったく違う業界の会社に入社した。当時も、その後再び転職活動をしたときにも、私は自分の運命を呪いまくった。

そんなこんなで、学歴やら成績やらがまったく意味をなさなかった就職氷河期を超えた私は、将来というものを絶対視しなくなった。
だって、将来に備えて今頑張っても、それが報われるとは限らないから。

でも、当時もがいた経験は無駄ではなかったと感じている。
そのまま違う業界にいたら? とか、最初から希望の業界に入れていたら? などと妄想してみても、結局過去の私がたどってきたのと同じような時間の過ごし方をして、今の人生につながるんじゃないかな、なんて思う。

就職活動だけじゃない。
恋愛、結婚、キャリア上の決断。あなたも、その時々に悔しい思いをしたり、第一希望ではない選択を強いられたりしたこともあっただろう。でも、なんだかんだ言って、あなたはそのときに取れる最善の選択をしてきたはずだ。

もちろん、頑張ることは大切だし、先々を見据えることも大切。将来のための資格試験にトライするのも素晴らしいことだ。ただし、不安な将来に備えて今頑張るべしという「定規」に縛られるあまり、今の生活を押しつぶし、今の楽しみを全否定することがあったとしたら、それは本末転倒だと私は思う。

将来というものは、「今」を誠実に積み重ねていくことでしか開けない。
楽しみ、時に羽目を外した「今」だって、私たちを形作る美しいひとかけらだ。

■見えない将来は気にしない

将来を見据え、先回りして努力してきた人ほど、見えない将来を気にしてしまいがちだ。でもそれは、時に自分の首を絞めることになる。

たとえば、本当は転職したいのに、先々の収入やキャリア上の不安を気にして思いきれない、なんていう話をよく聞く。でも、今の収入を絶対に維持しなければいけない理由って、何だろう? 一時的に収入が少なくなっても、やっていける方法もあるのでは?

お金に関する「定規」については次回改めて書くつもりだけれど、実はお金の縛りから解放されるだけで、面白いように自己主張できるようになる。自己主張ができるようになると、他人の目を気にしすぎて萎縮することがなくなってくる。

キャリア上の不安も同じで、今や「大企業だから安心」なんて言える時代ではない。先々の不安を気にしすぎると、身軽に動けなくなって人生の楽しみを見失ってしまう。

友人のファイナンシャルプランナーが、不思議なことを言っていた。
病気を恐れて身の丈以上に高額な保険に興味を示す人ほど、のちに「大きな病気にかかってしまった」と報告してくるという。もちろん、科学的なエビデンスがある話ではない。でも、ありそうな話だなとは思う。“引き寄せの法則”のようなものだろうか。

病気の心配があるならば、見えない将来を不安がる前に、今の自分を十分にメンテナンスすべきだろう。定期的に人間ドックにかかるとか、ストレスを減らす生活を心がけるなど、今できることはたくさんある。

心配のしすぎは、大きなストレスを生む。ストレスは、健康をむしばむ。健康を失ってしまったら、今も将来も楽しめなくなってしまう。

■大切なのは「今」と「見える将来」

見えない将来を心配しすぎる人は、意外と「見える将来」にズボラな人が多い。
見える将来というのは、「○年後に子どもが義務教育を終える」などといったこと。
もっと小さなことで言えば、たとえば私が今直面している「この春から町内会の役員が回ってくる!」なんていうのもある。役員……。いったい何をさせられるのだろう!?

こういった見える将来に対する不安は、逆算すれば対応できる。
役員をしなければならないことがわかっているのであれば、1年前から前任者の動きを見て、何月あたりが忙しそうだなと把握しておくだけでも心の余裕が保てるはず(やっておけば良かった……)。

子どもの進学が近づいてきたら、少しずつ家計を引き締めようとか、自分もパートに出てみようなど、金銭的な対策を考える人もいるだろう。逆に、思春期の子どもを精神的に支えるために仕事を徐々にセーブしようという選択をする人もいるかもしれない。
見える将来なら、漠然とした不安を具体的な「やることリスト」に落とし込むことができる。

キリギリスの失敗は、「見える将来」の冬に対処しなかったことに尽きる。
アリたちに音楽を聞かせることで食料を分けてもらう契約を結ぶとか、ひとまず暖かな家を確保するぐらいのことはしておこう。
私たちは人間なのだから、そのぐらいはできるはず。

その先の見えない将来……アリの一部が契約を守ってくれなかったらどうしよう、とか、翌年が長雨で冷夏になるかも、なんてことは、ひとまず考えなくてもいい。

Photo/ぽんず(@yuriponzuu)、Model/kicchan(@_kicchan25

朝倉真弓さんの連載「人生の『定規』を書き換えよう」バックナンバー


#1 「目立つな」「個性的であれ」の狭間で苦しんだあなたへ

#2 「私なんて」はもうやめる。頑張り屋で自分を卑下しがちなあなたへ

#3 見えない将来が不安すぎて、今を楽しめないあなたへ

朝倉真弓さんの連載「人生の『定規』を書き換えよう」は、毎週水曜日の更新です。次回もお楽しみに!

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朝倉 真弓

ライター、講演家。「人生もうひと花咲かせる」をテーマに活動中。自著は『「グレイヘア」美マダムへの道』ほか8冊。ユニリーバ社DoveのCMに出演。

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