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「私なんて」はもうやめる。頑張り屋で自分を卑下しがちなあなたへ

「あの人に比べたら、私なんて」。そう思って努力するのもすばらしいことですが、自分への評価軸を変えてみるという解決策もあります。“コンプレックス解消家”としても活動する、ライター・講演家 朝倉真弓さんのコラム連載、第2回。

「私なんて」はもうやめる。頑張り屋で自分を卑下しがちなあなたへ

会社を定年退職したおじさまが、いつまでも退職前の肩書きを捨てられないという話を聞いたことはないだろうか?

実際私は、「某大手商社 元部長」という肩書きの名刺をもらったことがある。そのとき、思わず真顔で尋ねてしまった。
「今は何をされていらっしゃるのですか?」
しまった、と思ったのも後の祭り。その男性の顔に浮かんだ憮然とした表情を見て、慌てて話題を変えたことを覚えている。

このように、何かの権威がないと自分を話せない人は、男性ばかりではない。女性だって会社の名刺に書いてあるような説明になる人もいれば、○○の母、夫は○○会社の人など、誰かの付属品のような説明をしがちな人もいる。

それを禁じて自己紹介をしてもらうと、「結婚してなくて……」「家に引きこもりがちなんです」「○○が趣味なんですが、まだ下手なんです」など、いきなりコンプレックスを開示して、マイナスな印象を与える言葉遣いをする人もいる。

それが上手な自虐ネタになっていればいいのだけれど、大体は反応に困るだけ。自虐ネタが盛り上がるのは付き合いの長い間柄に限るということは、ぜひ学校教育で教えておいてほしい基本だ。

■自分の特長をシンプルに言葉にしてみる

では、自虐なしで自己紹介をしてみたら?
「私は自分の家が大好きな独身です。趣味として○○を始めたところです」
同じ事実でも、とてもシンプルに、自分の特長として伝えることができる。

正直なところ、「家が好きな独身」と伝えることで、相手が「丁寧な暮らしを楽しんでいる人なんだな」と捉えるか、「寂しい人だな」と捉えるかまではコントロールできない。その事実をどう受け止めるかは、相手の性格や重ねてきた経験による。ならば、わざわざ自分を貶めず、シンプルに事実だけを伝えたほうが絶対にいい。

「家がお好きなんですね。どんなおうちなんですか?」
「アジアのキッチュな雑貨が大好きで、派手な色使いの部屋なんです!」
「あら、丁寧な暮らし系のナチュラル派だと思いました。素敵ですね」
……なんて、話が弾むかもしれないのだから。

■あなたは努力が足りない!……って、本当?

このように、自分を卑下し、極端に厳しい目を向けてしまう女性は、本当に多い。たとえてみれば、自分に向けている定規の目盛がマイナスしかないようなもの。何をしてもプラス評価にならず、「どうせ自分はダメなんだ」と思い込んでしまう。

そして、こうした人が憧れの目を向けがちなのが、人生も仕事も楽しんでキラキラして見えるような女性だったりする。だが、常に親や友人、夫や子どもなど、誰かの意向を優先して他人の目を気にしてきた人は、「キラキラ女子」と自分とを比べて、また深く落ち込んでしまう。彼女は持っているのに、自分にはないものばかりが気になって仕方がない。

あえて厳しい言い方をしよう。
「キラキラ女子」だって、人知れず努力を重ね、苦痛に歯を食いしばった経験があるはずだ。
自分に自信がない人は、他人を言い訳に、冴えない自分を容認してきただけ。圧倒的な努力もせずに愚痴ばかりこぼしている大バカ者だ!


……なんて、キツいことを書いたけれど。

実は私、ものすごく出不精で、1週間外に出なくても全然苦痛ではない。知らない人との交流会が苦手で、決して社交的なほうではない。さらには、人の顔と名前を覚えることができず、若いころから人の名前が出てこなくて怒られてばかりだった。

ちょっと前までは社交的になったほうがいいと考え、月に何回と数値目標を立てて、なるべくたくさんの交流の場に行くようにしていた。そんな場には、社交が得意で小粋なトークを楽しめる「キラキラ女子」がたくさんいた。

でも、苦手なものは苦手で、慣れることはあっても、得意に変えることは難しい。交流会のあと、もらった名刺に顔の印象を事細かに書き込んでみても、覚えられないものは覚えられない。

そう気づいてから、私は無理に自分を修正しようとするのはやめた。そして、自分自身に当てている定規の目盛をマイナスからプラスに変えることにした。それだけで、自分の評価は180度変わる。

出不精→家が整っている、自分のペースがある
社交的ではない→自分の内面に入り込んで考えることができる

自分の特性を受け止め、マイナスをプラスに言いかえるだけで、ちょっとは気が楽にならないだろうか?

■苦手は克服すべきものではなく、付き合い方を工夫すべきもの

さきほど、「他人を言い訳に、冴えない自分を容認してきただけ」「圧倒的な努力もせずに愚痴ばかりこぼしている」と書いた。たしかに「自分なんて取るに足らない」と卑下してしまう人のなかには、こうした努力不足の要素も少なからずある。

でも、苦手を得意にするための努力は、10代、20代の学生や、社会人になりたての若者までで良いと私は思う。ある程度年を重ねてきた女性であれば、苦手と感じるものから少し距離を取る生き方を覚えてもいい。できない自分を責めて自信をなくすよりも、よっぽど前向きな対処法だ。

自分に対して厳しすぎる定規の目盛を書き換えてみよう。
他人と比べてコンプレックスに感じていることを認めてみよう。

40代に入り、一度自分を丸ごと認めて肩の荷を下ろしたことで、改めて苦手の克服にチャレンジし始めた人を知っている。
どんなダイエットも続かなかった女性が「太っている」というコンプレックスを受け入れ、「ふくよかさこそ私のチャームポイント!」と開き直って人生を楽しみ始めたら、ストレスによる過食が減って体重が自然に減ったのだとか。だったらもっと痩せてみようと、筋トレまで始めたそうだ。

そんな女性の前向きな話を聞いていると、私もワクワクしてきてしまう。過去の名刺の肩書きにしがみついているおじさまよりも、今の自分をなんとか輝かせたいともがいている人のほうがよっぽど素敵だ。


Photo/ぽんず(@yuriponzuu

朝倉真弓さんの連載「人生の『定規』を書き換えよう」バックナンバー


#1 「目立つな」「個性的であれ」の狭間で苦しんだあなたへ

#2 「私なんて」はもうやめる。頑張り屋で自分を卑下しがちなあなたへ

朝倉真弓さんの連載「人生の『定規』を書き換えよう」は、毎週水曜日の更新です。次回もお楽しみに!

朝倉 真弓

ライター、講演家。「人生もうひと花咲かせる」をテーマに活動中。自著は『「グレイヘア」美マダムへの道』ほか8冊。ユニリーバ社DoveのCMに出演。

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