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産後うつで離婚危機。「夫は仕事、妻は育児」をやめたら、夫婦仲が劇的に良くなった

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「夫は家族を養い、妻は家事・育児をするべき」……約3年前、子どもが生まれた直後から、そんな性別的役割分担に苦しんだという薗部さんご夫妻。いまはそのような“夫婦の役割”を手放して、互いにサポートしあっています。おふたりに、今の心地よい暮らしができるまでの経緯を伺いました。

産後うつで離婚危機。「夫は仕事、妻は育児」をやめたら、夫婦仲が劇的に良くなった

「男は外に出て、稼いでくるべき」「女は家事・育児を完璧にやるべき」
令和になったいまでも、そんな“性別的役割分担”に苦しめられている人は少なくありません。

今回インタビューした薗部雄一さん・陽花さんも、以前はそんな呪いをかけられていたご夫婦。ワンオペ育児と産後うつから離婚もよぎったけれど、少しずつ“性別分業”の呪いを解いていったのだと言います。

妻の陽花さん曰く、それは「頭の中の辞書を書き換える」作業。では、ふたりはどんな試行錯誤を経て、各々に課せられていた役割を手放したのでしょうか?(聞き手:菅原さくら)

■「夫は仕事」「妻は子育て」の分業で、家族がバラバラに

――まずは、いまのお仕事や暮らしのスタイルについて伺いたいです。

雄一:僕は在宅勤務がメインのライター、彼女はおもにコーチングなどを手がけていて、夫婦ともに自営業です。3歳の息子は保育園に通っています。家事・育児は決まった分担がなくて、そのときどきに融通のきくほうがやるスタイル。ホットクックなどの便利な家電も活用しつつ、無理のない程度に毎日こなしています。

陽花:とはいいつつ、家事はほとんど彼がやってくれていますね。私は、やりたいときにやりたい家事をするくらい。

――にこにこ話される様子からも、おふたりがとてもうまくいっているのが伝わってきます。

雄一:いまはそうですね。でも、子どもが生まれてすぐのときは本当に大変でした。僕が外で仕事、陽花さんは専業主婦という完全分業だったんですが、全然うまくいかなくて……

陽花:わたし、産後うつになっちゃったんですよ。

――当時の状況を詳しく教えてください。

雄一:息子が生まれたとき、僕はあるメディア運営会社に勤めていました。業務委託だったんですが、結婚・出産したからには正社員にならなくちゃと思っていたタイミング。それまでと同じ働き方では、家族が養えないんじゃないかという焦りがあったんです。だから、片道1時間半の通勤にも耐えて、バリバリ頑張っていました。

――陽花さんのほうは、どんな暮らしだったんですか?

陽花:息子を産んだあと、しばらくは夫の実家にお世話になっていました。でも、産後のイライラなどで同居がつらくなり、すぐ夫婦の家に戻ってしまって……夫は激務でほとんど家にいないのに、なし崩し的にワンオペ育児がはじまったんです。それでも、3カ月くらいはどうにか頑張れたんですよ。もともと完璧主義だったから、子どもの睡眠や授乳をアプリでしっかり管理して、家もぴかぴかにしつつ、夜遅く帰ってくる夫にはアツアツの食事を何品も用意して……。

――聞いているだけで、なんだか苦しくなってきます。

雄一:その生活は、僕としては快適だったんですよね。働いて帰ってきたら、きれいな家にかわいい妻子がいて、ごはんもおいしい。自分の役割である“外での仕事”に、思いきり集中できる状況でした。……いま思えば、まじでクソですよね(笑)。

陽花:本当だよ(笑)。やっぱり、そんな生活を続けているうちに、私は朝起きるのがどんどんつらくなっていったんです。この暮らしは、いつまで続くのかなって……。そのうえ、子どもを産んだのも義実家を出たのも自分なんだから、しんどくても自分でなんとかしなくちゃいけないって思い込んでいたんですよね。でも、そのストレスがある日抑えきれなくなって、爆発したんです。

雄一:朝いつもどおり仕事に行こうとしたら、陽花さんが「今日は休んでほしい。家族より大事な仕事って、なに?」と言ってきたんです。それでも僕は「だって、仕事をしないと家族が養えないんだよ。気持ちはわかるけど、行かなくちゃ」って、彼女をなだめた。

陽花:そんなことはわかってるじゃないですか。わかっていてヘルプを出してるんだから「ふざけんなよ!」って怒鳴りました。もう恫喝です(笑)。

雄一:それほどの剣幕で「今日会社に行ったら一生恨むから」って言われたのに、僕は、家を出ちゃったんですよ。そのまま出社していたら、きっと離婚していたと思います。でも幸いにも、駅までの道で思い直して、家に戻りました。「会社がなくなっても仕事はほかにあるだろうけれど、家族がなくなったら一生後悔する。そもそも大事な家族のために仕事をしているのに、いまの僕は、その大事なものを傷つけている」って気づいたんです。

会社に「今日は休みます」って電話を入れたら、あっさりOKでした。電話一本で済む簡単なことなのに、どうして僕はいままでこのチョイスができなかったんだろう、と思いましたね……。

陽花:いまとなっては、私ももっと早めに言うべきだったなと思います。「彼の仕事がなくなったら生きていけない」とか「正社員になってもらったほうがいい」などと考えて、つい黙ってしまったんですよね。爆発する前に対処してくれなかった彼だけでなく、ここまで我慢をしていた私も悪かったです。

■“性別の常識”を信じて“自分”を疑ったら、苦しいばかり

――陽花さんの大爆発を経て、その日は会社を休んだ雄一さん。以降、どんなふうに働き方を変えていったんでしょうか。

雄一:まずは、会社側に「これからは在宅メインで、やれることをやっていきたいです」と相談したんです。やってみればそんなに難しくもなく、2週間も経たないうちに、家で働きながら家事・育児をやれる体制が整いました。「遠くても通勤して働くしかない」「僕の役割はそれしかない」と思い込んでいた、過去の自分を殴りたかったですね。

――一方、それまでの陽花さんは完璧主義で、家事も育児も100点満点を目指していました。でも、雄一さんが家にいるようになって、きっと物理的な負担は減ったはず。そのうちに、陽花さんの「妻は家事育児をキッチリこなすべき」というそもそもの意識は、やわらいでいったんでしょうか?

陽花:産後うつまっただなかのときは、やっぱり“母親の役割”にとらわれていました。子育てって「3歳までは子どもとずっと一緒にいるべき」「母乳が一番」みたいな神話が、すごく多いじゃないですか。それでも一生懸命こなしているうちに、心と体のバランスを崩してしまった。だけど、だんだん「私だけがこんなにつらい思いをするのはおかしい! 『家事・育児は母親がやるべきだ』という常識のほうがおかしいんじゃないの?」って気づいたんです。

雄一:だって、家事・育児は誰がやったっていいことだもんね。

陽花:そうなの! 「母親がやるべき」っていう謎の常識を信じて「それができない私はおかしいのかも」って自分を疑ったせいで、どんどん苦しくなっちゃったんですよ。そこからは、頭のなかの辞書を書き換える作業。「母親=家事・育児をやる人」ではなく「母親=ただ子どもを産んだだけの人」だと考えるようにしました。

■モヤモヤしても、実現したい生き方をとにかく続けること

――次は、雄一さんの心境を伺いたいです。ひとまず働き方を変えてみたけれど、雄一さんにも「夫はバリバリ働いて家族を養うべき」という性別的役割分担の意識がありましたよね。その考え方と、実際の新しい生活とのあいだに、ジレンマは生まれませんでしたか。

雄一:ジレンマ、ありましたよ! 最初のうちは「妻がつらそうだったから仕方なく働き方を変えた」と思っていました。だから、日中にベビーカーでお散歩したりスーパーで買い物したりしていると「ほかの旦那さんが外で働いているときに、俺は何をやっているんだろう……?」「朝から晩まで仕事ができたら、どんなに幸せだろうか」とか思っちゃって。

「働き方を変えて、めでたしめでたし」じゃないんですよね。江戸幕府が崩壊して明治政府になるときだって、揉めたじゃないですか。僕のなかでも当時は戊辰戦争が起きていて、新旧の価値観が入り混じっていたんです(笑)。

――どうやって、その新旧の価値観をすり合わせていったんですか。

雄一:「仕方なく」「やらされている」とか思っていても、とにかく続けることだと思います。「男なのにこれでいいのか」とモヤモヤしたって、とにかくおむつを替える。実現したい生き方を考えて、仕事より家のことを優先する。脳って自分の行動を正当化していくから、続けているうちに慣れるし、こっちが正しいと思えてくるんです。

陽花:そのとき妻のほうにできるのは、パートナーを信じることじゃないでしょうか。夫に変わってほしいと思っているなら、まず正直に伝える。「これを言っても受け入れてもらえない」「夫のプライドが折れちゃう」というのは、夫を見くびっているようなものです。それよりも、「自分の大好きな人なんだからきっと変わってくれるし、変わったあともいままでより良くなる」って信じるんです。

雄一:不思議なもので、信じてもらえると大丈夫な気がしてくるんですよね。結果として正社員の道は閉ざされたし、収入も不安定になったけれど、家庭には笑顔が増えた。「一般的な男性の生き方じゃなくても、この道を選んでよかったな」って自然と感じられるんです。そうすると、そもそも「一般的な男性の生き方」ってなんだろう、とも思えてきた。性格も状況もそれぞれ違うのに、画一的である必要はないですよね。

陽花:そうだよね。もちろん激務&ワンオペだって、その夫婦が納得してやっているスタイルなら何の問題もないし、それでもうまくいけばすばらしいことです。でも私たちには合わなかったから、ふたりで考えて、いまのスタイルに落ち着いた。自分たちにとってベストな仕組みを考えることが、なにより大切なんだと思います。

■タスクを握りしめている手のひらを、ひらきたい

雄一:僕も家にいるようになったけれど、家事・育児を夫婦だけでやらなくちゃとは思っていません。お互いにしんどいときはサボったっていいし、アウトソースしたっていい。ご近所さんに息子を預かってもらって夫婦でデートしたり、水回りのお掃除をプロに頼んだり、周りにもうまく頼りながらやっています。

陽花:「夫婦どちらかが分担しなくちゃいけない」っていうルールも、本当はないんだよね。好きでやっているならいいけれど、少しでも義務に感じてしまう作業があるなら、やり方を考えていきたいと思います。

雄一:女性はつい、家事・育児のタスクを自分で握りしめてしまう傾向があると思うんですよ。そうすると男性にはタスクが見えないから、余計に「仕事をしていれば自分の責任は十分果たしている」と思っちゃう。

陽花:「家事・育児をちゃんとできない私なんて、女性として価値がない」とか思ってしまうと、自分の存在意義を保つために、余計にタスクを握りしめてしまうんですよね。

――それはまた、根深い問題ですね……。

陽花:とにかくまずは、自分がどんな作業を握っているのか、それの何がつらいと感じているのか、パートナーに伝えられるといいなって思います。こんまりさんが「収納したいものをすべて引っ張り出して並べる」という片付けメソッドを掲げているけど、それと一緒。並べたうえで、やりたいことは続ければいいし、つらいことは減らしていくんです。

雄一:女性がもし手のひらをひらいて、役割を手放してくれたなら、男性にも代われるタスクがたくさんあると思います。

陽花:知らず知らずのうちに、性別的な役割意識にとらわれちゃっているんだよね。そもそも、出産って交通事故に遭うのと同じくらい身体にダメージを受けるのに、すぐ授乳やら家事やらしないといけないなんておかしいですよ。大変だってこぼしても、経験者の方には「そういう時期もあるから頑張って!」とか言われたりするし。

雄一:目の前で流血してる人に「3年経ったら楽になるから!」とか、普通は言わないよね(笑)。

■勇気を持って、自分たちにとって最適な仕組みをつくる

――「夫だから、父だから」「妻だから、母だから」にとらわれず、自分たちがやりたいことややるべきことを見つめなおす。そのうえで、お互いが心地よく暮らせる方法を考える。これができれば、いつまでも夫婦が仲良く暮らせる気がしますね。

陽花:そうです。一時は離婚危機だったけれど、いまはタスクとリソースの最適化がちゃんとできていれば、自分たちの仲は悪くならないと思えます。

雄一:「男だから」「女だから」なんて、くくり方が雑すぎるよね。世間がどうだろうと、自分たちがどうしたいかを尊重する、そういう勇気を持つのも大事だと思います。

陽花:自分が苦しんだ経験を活かして、いまは女性向けのコーチングサービスも手掛けているんです。「家事・育児は女性がやるべき」という思い込みを外して、それぞれの夫婦に合わせて最適な仕組みを探っていく――そんなきっかけを提供していけたらと思っています。

雄一:僕もライターとして、パートナーシップのヒントは発信し続けていきたいですね。妻の産後うつをきっかけに家事・育児の大半をやるようになった……とか書くと、ヤフコメで「どうせ良いとこ取りしかしてないだろう」とか言われたりするんだけど(笑)。

陽花:本当にやってくれてるのにね(笑)。


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菅原 さくら

1987年の早生まれ。ライター/編集者/雑誌「走るひと」副編集長。 パーソナルなインタビューや対談が得意です。ライフスタイル誌や女性誌、Webメディアいろいろ、 タイアップ記事、企業PR支援、キャッチコピーなど、さまざま...

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