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ダイエットをやめたら出会えた最高の性愛

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希望をくれる女性に会いたい――日々すり減っていく心に光を灯してくれる人に。そんな想いから始まった、女性の生き方を追う文筆家・芳麗による『希望をくれる女性の話』。今回お会いしたのは、真実の性の語り部・作家・カウンセラーとして活動している夏目祭子さんです。

ダイエットをやめたら出会えた最高の性愛

■ダイエットするとセックスが嫌いになる

私は私の体とずっと闘ってきた。幼少期に両親と暮らせなかった時期の寂しさを食で紛らわせて小児肥満となって以来、ダイエットとリバウンドを繰り返してきた。
20歳の時には軽度の摂食障害を患い、およそ、1年間の引きこもりも経験している。
その後、さまざまな出会いと経験のおかげで、20代半ばに差し掛かる頃には、一見、まともに社会生活を送れるまでに至った。けれど、ダイエットという迷宮から抜け出せたわけでも、自分の体を大好きになれたわけでもなかった。
自分の体を愛せなかったせいか、長らく恋愛にも不器用で、セックスも嫌いだった。人に体を触られることや、支配されることに嫌悪感があったのだ。

そんな、ダイエットと自己嫌悪に疲れ切っていた20代の頃の私に、作家であり、カウンセラーの夏目祭子さんの『ダイエットやめたらヤセちゃった』という作品は、希望をくれた。現在、夏目さんはダイエットのみならず、性愛についてもその真理を追求。多くの痛んだ心に優しく寄り添った作品を生み出し続けている。

「ダイエットと恋愛やセックスは密接に結びついているんでしょうね。私の場合は、芳麗さんと逆だったの。思春期からダイエットに何度も失敗して、“自分の体なんてどうでも良い”という心の闇を抱えてしまったところまでは芳麗さんと一緒だけど……。私は体への劣等感を拭おうと、恋愛感情がなくてもいろいろな人とのセックス体験を繰り返していた時期がありました。ダメ出しばかりしていた自分の体も、男女関係においては優位に立つ術になる。女性の体は男性にとって魅力的な“武器”となるものだからと。そこには前向きな感情があったから、自分に自信が持てない分を、性の力で補おうとしていたのね」


世界に対して自分の体を閉じてしまうのも、体を開きすぎてしまうのも、自分をうまく愛せないことの現れだ。

「女性の体には素晴らしく豊かなパワーが宿っていますし、性愛を交わすことは汚らわしいことなんかじゃない。本来、人を幸福感で満たせることですよね。だからこそ、女性には自分を大切に扱って欲しいんです」


言葉を発するときも受け止める時も瞳をそらすことなく、まっすぐにこちらを見つめる。その視線は強くも柔らかく、観察されているというよりも包まれているような気持ちになる。

■好きなものを自由に食べたら痩せられた

ダイエットにまつわる夏目さんの書籍には、表面的な減量を繰り返すほどに苦しくなってしまう人々の心のからくりや、真なるダイエットとは、「ダイエットをやめることである」という逆説の真理について書かれている。

「私がダイエットにのめり込んだきっかけは些細なことでした。少女漫画のカッコいいキャラクターや外人モデルみたいにスレンダーな体に憧れて自分もそうなりたいなと(笑)。当時はメディアでも特別太っていない人に向けてファッション目的のダイエット特集が組まれることもなかった時代ですが、私は自分がいいと思った美意識に取り憑かれてしまったんです。
でもね、私の場合は必死でダイエットすると、必ず反動でリバウンドする。自己否定感が募って、ますますダイエットに取り憑かれてしまうという悪循環でした」


 悪循環から抜け出せたのは、ある偶然の発見がきっかけだった。

「あらゆるダイエットを実行し続けても、痩せないばかりか逆に、人より食べていないはずなのにジワジワと体重が増え小太りしてきたので、『人一倍痩せにくい体質になってしまった』と絶望していました。ところが、たまたま目新しいダイエットが見つからずにいた時に、急に食べ物を美味しく感じるようになって、それまで『太るから絶対食べない』と決めていた炭水化物中心の『タブー食品』、例えば、お寿司とかカツ丼、ホットケーキ、チョコレートパフェなどを、『まぁ、いいか』と自分に許すようになったんです。そうしたら罪悪感に陥るどころか『こんなに美味しい物だったんだ! 食べて良かった!』って、すごくうれしい気持ちで食べていたんですね。すると、1~2カ月経った頃から、『痩せましたよね?』といろんな人に声をかけてもらうようになったんです。まさかと思って確かめてみたら、何もしていなかったのに自然と体重が落ちていて、それからするすると体型も体調もベストな状態に整っていきました」


人間の体はきちんと食べたほうが痩せられる。

それは、20年以上も前に夏目さんが発見したひとつの答えだった。今でこそ、体重や体脂肪を左右するのは消費カロリーや摂取カロリーだけではないという認識も広まっているが、当時、「食べても痩せられる」という言説は受け入れられ難かったという。

「医学的に証明できないことだと言われ、反発も多かったです。今ではダイエットの鍵を握るのは、ホルモンや神経、腸などでもあること。それらを整えるためには、食べることが必要だという論も一般的になりましたよね。
食欲を制限するダイエットでは一時的には痩せても、キープするのは難しい。それは、欲求が満たされないと、体の代謝が脂肪を溜め込む方向に傾く性質があるからなんです」

■過剰なダイエットは、本能への虐待行為

欲求制限型のダイエットとは、自分の本能である食欲を虐待している行為だと夏目さんは語る。

「自分をいじめていることと同義ですよね。一方、ダイエットをやめたら痩せられるのは、食欲という本能を肯定しているから。本来、私たちが本能に素直に従えば、体が上手にバランスのいい状態に調整してくれるはずなんです」


 とはいえ、食べたいものを好きなだけ食べたら、やはり太ってしまう人も多々いる。焼肉、お寿司、シャンパン、チョコレート、ケーキ……etc.

「たしかに目についた物を片っぱしから食べていたら太りますよね(笑)。それは、食欲が正しく作動していないからだと思います。体が必要な栄養を求めている“本物の食欲”ではなく、脳が欲している食欲ですから。かつて、私はそれを“ニセの食欲”と名付けたんですけど、ニセだからと言って不必要なものではなく、それもまた必要なものだと今は思っています。
たとえば、ジャンクフードを過食したい欲が湧いたら、過食したいだけの理由が自分の中にあるんですよ。たとえば、耐え難いストレスだったり、心の渇望感だったりね」


心身の飢えが、食を求めて彷徨い続ける。かつての私にも覚えがあった。ダイエットという行為が虐待しているのは、体だけではない。絶望的なほどの強烈な食欲は、飢えた心が助けを求め叫び声をあげているサインなのだ。

■抑圧された心の飢えを満たしてくれるものは?

ダイエットとリバウンドを繰り返して自己否定感を募らせてしまう人には共通点があるという。

「それは、自分の心や行動に制限をかけてしまうことです。たとえば、『痩せなければ水着は着られないし、海にも行けない』ですとか。もちろん、ダイエットすること自体も大きな制限ですよね。あれを食べたらダメ、これを食べたらダメ……なんて自分を抑圧するほど、心は壊れ、体は反乱を起こしてしまう」


しかし、どれほど自己否定感が募っても、心が壊れても、解決策はシンプルだ。自分を抑圧しているのは他ならぬ自分であることに気づくこと。自らの心と体の声を丁寧にすくい上げ、尊重すること。

「もっと自分の体や心と仲良くすることです。『思いっきり海で泳ぎたい』と思うことも、『美味しいものが食べたい』という欲求も、大切な本能ですよね。愛や喜びを欲することを抑圧するから、心まで枯渇してしまう。体は心を守ろうとして、脂肪を溜め込むんですよ。
欲求に素直に従って、心身が満たされていれば、食欲は正しく作動するようになる。すると、体は自動的に不要な脂肪を手放すようにできています。自分と仲良くできたら、心とともに食欲は安定するし、内臓の調子は活発になり、ホルモンバランスも整いますから」


 ただし、長らく飢え続けた心身が満たされるまでには、少々、時間がかかるとも。

「思い切ってダイエットをやめて自分を満たすことに専念したら、いったん太ることもあると思います。それでも、満たし続けること。自分の体と仲良くすることです。
それからね、自分の心身を満してくれる喜びは、食事だけではないということも知っていてほしい。日常の小さなこと……たとえば、部屋に好きな香りを漂わせることや、心地よい緑の中に身を置くことでも満たされますし。もちろん、誰かと愛し合うことや、愛しいものを抱きしめることは、自分の深い部分に快感をもたらしてくれますよね」

■ダイエットをやめたら、本物の愛に出会えた


負のダイエットループから抜け出せた頃、夏目さんにはもうひとつの大きなターニングポイントが訪れた。

「私を心から愛してくれるパートナーと出会いました。自分を愛せるようになったから最愛のパートナーが現れたのだろうし、彼に宝物のように大切にされるという体験があったからこそ、私は自尊心を取り戻すことができたのだと思います」


ダイエットが題材の作品でデビューした夏目さん。17年前からは、“真実の性の語り部”を名乗り、性愛についての真理を深く追求した著作やカウンセリングでも知られている。

「なぜだか、私は子どもの頃から、女の体に生まれたことに誇りがあったんですよね。おかしな話だけど、処女の頃から性に対して『プロ意識』みたいな誇りがあったという変わり者で、例えば娼婦という職業に対しても『お客様を喜びに導く』専門職という意識でやるなら、やり甲斐のある仕事だろうと心惹かれてもいました。ただし今の世の中では、お金や愛情の欠乏感のために仕方なく働いて、心や体を傷つけられるケースも少なくないと感じています」


 食欲を肯定するのと同じように、自分の性欲や性愛を交わすことを肯定して欲しいと話す。

「性愛も食も、どちらも人間を豊かに満たしてくれる素晴らしい本能です。性欲は食欲以上に穢らわしいものだと扱われがちですし、性に罪悪感や苦手意識を持っている人がまだまだ多い。でもね、長い歴史や社会の風潮の中でそう思い込まされているだけ。
もう、そんな間違った固定観念やしがらみからは、抜け出しても良い時代ですよね。
真実の性愛って奪われるとか押さえつけるとか、支配するとか支配されるとか、そういうものじゃない。愛する人と本能的な喜びを分かち合う、自然で豊かな体験です。私たちはもっと、自分の快感や喜びを満たすことに無邪気になって良いんですよ」


ひと通りの取材が終わった後も、一緒にケーキを食べながらいろんな話をした。近頃の20代のセックスレス事情が話題に上ると、「今の20代は、男性でもこれまでの暴力的なポルノ表現に嫌悪感を覚える人が増えていて、それでセックスが嫌いだと言うのは、繊細な感受性を持っている証拠。それも、もっと思いやりのある性愛のスタイルに移行するための、進化の過程だと思う」と夏目さん。
性愛や食のみならず、人間や世界に対しても肯定的な視線に心が温まる。自分を健やかに愛する人は、世界を肯定的に見つめることができるのか。

もっと自分を満たすことに無邪気になって良い――。夏目さんの最後の言葉を心の中で反芻すると、ふわりとした希望に包まれた。

『希望をくれる女性の話』のバックナンバー

#1私たちは希望を探して出会い続ける

#2創意工夫と手間を惜しまない。それが書き手として私が生き残る唯一の道だと思う

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芳麗

“新しい女性の生き方”を探して、取材、考察、執筆し続けている文筆家。著名人など多種多様な人物にインタビュー、女性誌「andGIRL」やWEB媒体「cakes」などにコラムや対談の連載を持つ。 著作に「3000人にインタビュー...

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