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イタリアのパスクワ〜ミラノ通信#37

イタリアではパスクア(Pasqua)と呼ばれるイースター、十字架に架けられたキリストが3日後に復活したことを祝うこの日は、カトリックの国で最も大切な祭日とも言われています。

イタリアのパスクワ〜ミラノ通信#37

春分を過ぎ最初の満月の後の日曜日、と決められているパスクア、毎年日付が変わり早ければ3月下旬、遅い年は4月末の日曜日となります。昨年は4月1日、今年は4月21日でした。

■旅行、ピクニック……パスクアの過ごし方

パスクアの翌日は天使の月曜日(Lunedi dell`Angelo)、一般的にはパスクエッタ(Pasquetta)と呼ばれている祝日なので、毎年必ず連休となり、パスクアの時期によっては前後の祝日と合わせて大型連休となることも。

今年は4月25日の解放記念日、そして5月1日のメーデーが控えているので、間の平日を休んで最大12連休! イタリアでは飛び石連休の概念はなく、「橋をかける(ポンテ)」と言って繋げて連休にするのが当たり前なのです。

気候のいい時期の連休には、日焼けしにビーチに繰り出すか、海外旅行が定番のイタリア。「クリスマスは家族と、パスクアは好きな人と(Natale con la famiglia, Pasqua con chi vuoi)」と言われていますが、パスクアで旅行に行かない場合は、家族や親戚が集まってランチ、が一般的です。

翌日のパスクエッタには、パスクアで食べきれなかったご馳走を持って、公園や山や海などでピクニックをする日と言われ、親しい仲間と連れ立って自然の中で春の訪れを楽しむのが定番。

■パスクアに友人の友人宅でガーデンバーベキュー

以前、友人に誘われて、友人の友人宅でパスクアを過ごした時のことをご紹介しましょう。ちなみに、イタリア人はホストに事前に聞くことなくゲスト自身が勝手に誰か自分の友人を誘ったりします。なので、当日はホストも知らないうちにかなり人数が増えていることも。でも、これは失礼なことではなく、想定内の当たり前なことなのだそう。

「マルコの友人のマリアです、初めまして!」「ようこそ、マリア。会えて嬉しいよ、こっちへ来て。僕の家族を紹介するよ。」と、いたってフツーにウェルカムされて、初対面のぎこちなさや緊張感など微塵も感じさせません。

そんな環境で育っていて、それが当たり前なので、人の輪を繋ぐのがとてもさりげなくて上手だなぁ、と日本で育った私はいつも思うのです。
もちろん、初対面の挨拶に名刺や会社、肩書きなども存在しません。両頬にキス(Baci)して「会えて嬉しいわ」でおしまい!

この日は、ミラノから25分くらい車で走った郊外の屋敷へ。パラッツォと呼ばれる元・大きな屋敷をアパートメントにしたミラノ中心地でよくあるものではなく、正真正銘の一軒家、塔までついたお屋敷。こちらには、一族が代々住んでいて、今は親子兄弟の4世代が一緒にいるそう。

藤の花が満開、イタリアでは日本より早く開花します

テラスでアペリティーボ

室内でゆっくり過ごす人も

ガーデンバーベキュー、子豚の丸焼きとビーフパテ

だんだん人数が増えてくる頃を見計らって、サルシッチャ(イタリアンソーセージ)や牛肉などがグリルされ、テーブルに大皿が次々と運ばれる度に、遊具で遊んでいた子供や、テラスや室内でおしゃべり、あるいは庭を散策していた大人が集まって来ます。

そして、メインの子豚が焼きあがると、どこからともなくみんなテーブルに集合し、ホストが手慣れた様子で子豚を解体していきます。まずはパリパリに焼けた皮を試食、ジューシーな脂ののった柔らかい肉は、どの部位もそれぞれ味わい深く、絶品。

メインの子豚が焼きあがると、ホストが解体

そのあとも座ったり立ったり、歩き回ったり、食べて飲んでちょっと休憩したり、それぞれのペースでゆっくりと時間をかけながらのランチは続きます。ワインは十分に用意されているけど、あくまでも食事のお供、意外とイタリア人のペースはゆっくりです。そして、ちゃんぽんしないのが鉄則。

ビールに始まり泡、白ワイン、赤ワインなんて、「悪酔いするから絶対しない」のだそう。せいぜい、スプマンテで乾杯して、そのあとは好みのワイン、白でも赤でも同じ種類のものを飲み続けます。

それぞれのペースでゆっくりと、夕刻まで続くランチタイム

そして、集合がかかり、室内でデザートタイム。パスクアの伝統的なお菓子といえば、復活祭のシンボルである鳩をかたどったスポンジケーキのコロンバ(Colomba)と、ウサギや卵の形のチョコレートです。

今ひとつ鳩に見えない、四葉のクローバーのようなコロンバは、クリスマスのパネットーネと作り方も材料もほとんど一緒だとか。アーモンドトッピングが特徴です。

そして、クリスマス前後に食べ続けるパネットーネと同じように、コロンバもパスクア当日だけでなくしばらくの間、朝食や食後に食べ続けるイタリア人。毎年恒例で、飽きないとのこと。

ホストの誕生日ケーキも用意されていたテーブルと、手作りパスクア菓子

パスクア近くなると山積みされる伝統菓子、コロンバ

■パスクアが喜ばれるのは、宗教的理由だけじゃない

卵型のチョコレートは、子供たちへのパスクアのプレゼントの定番。大きな卵のチョコレートを割ると、沢山の小さなチョコレートに混じってオモチャのサプライズが一つ入っているので、子供はワクワクしながらその瞬間を待っています。

パスクアの料理も、卵でスタート。大量のゆで卵の半割りにアンチョビやオリーブなどトッピングして前菜にするのがお手軽で人気です。

そして、本来はパスクアの日のメインは子羊なのですが、最近ではこだわらずに、牛肉、豚肉、鶏肉など馴染みあるものをメインにする家庭が急増。
バーベキューをする、というのも最近、よく見られる光景です。

春の訪れを感じる季節のパスクア、大抵この時期を境に、グレーな冬から一気に初夏の気候に変わるイタリアなので、待ち望んだ太陽が照りつけるシーズン到来のパスクアは、宗教的な理由だけでなく、人々に待ち望まれる嬉しい祝日なのです。

河見 恵子

日本航空で15年間、国際線客室乗務員として勤務。退職後はミラノに居住し、東京と往復する生活。ミラノ・ブレラ地区を中心に、身近な情報をブログやFBで発信。ミラノでは在イタリア日本人のために料理教室をオーガナイズ、開催。ワイン好...

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