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絵画だけじゃないブレラ美術館の魅力〜ミラノ通信#36

ブレラ美術館(Pinacoteca di Brera)と言えば、14〜15世紀のヴェネツィア派、ロンバルディア派など北イタリアを中心にしたルネサンス作品が充実していることで人気。ここに中世からの貴重な書物150万冊余を蔵する、雰囲気も中世さながらの素晴らしいライブラリーがあるのをご存知ですか。

絵画だけじゃないブレラ美術館の魅力〜ミラノ通信#36

ブレラ美術館(Pinacoteca di Brera)にある、中世からの貴重な書物150万冊余を蔵する、雰囲気も中世さながらの素晴らしいライブラリー。

今回は絵画だけではない、ブレラ美術館の魅力的な空間をご紹介します。

夕暮れのブレラ美術館

ドゥオーモ広場からガレリアを抜けてスカラ座へ。スカラ座の脇の偉大な音楽家の名を冠したジュゼッペ・ベルディ通り(Via Giuseppe Verdi)は、信号を越えるとブレラ通り(Via Brera)へと名前が変わります。

その先にあるのがブレラ美術館。元はイエズス会の修道士のために建てられた宮殿建築内に、当時ロンバルディアを統治していたオーストリアの女帝、マリア・テレジアにより、1770年、当時不足していた教育のためのライブラリーが開設されました。

1776年に美術学校も創設、学生たちが本物の芸術に触れられるよう、絵画の収集がスタートします。

図書館、美術館の他に、ロンバルディア科学・文学研究所、天文学観測所、自然植物園も併設され、当時としては斬新な複合施設が誕生しました。

オーストリア支配下からナポレオン統治に変わってからは、文化政策によりさらにコレクション増大、遠征し勝利を収めた先での教会や屋敷の所蔵物が続々とコレクションに加わります。

ナポレオン40歳の誕生日を祝う形で、1809年に一般公開され、数々の買収や寄贈を経て、現在の素晴らしいコレクションを世界各地から訪れる人々が見られるようになったのです。

中庭には、戦いの女神ニケを右手に乗せたナポレオン像が

美術館への入り口

建物に入ってすぐ、左右に別れた大理石の大階段をのぼると、美しい回廊を取り巻くように絵画の展示室が並びます。

近年の大改装により、部屋ごとに塗り壁の色が変わり、その落ち着いた鮮やかなカラーに浮かび上がるように配置された展示作品は、部屋を仕切る典雅なるアーチや円柱の存在と相まって、見事としか言いようがありません。

塗り壁とライトの色調が美しい展示室

円柱が効果的な展示室

そしてここには絵画だけではない、必見の図書館(Biblioteca Nazionale Braidense)も一般公開されているのです。

美術館とは入口が異なり、建物内1階のブレラ美術学校を進んでいくと、左手に威風堂々とした階段が見えてきます。

ブレラ美術学校の学生が行き交う1階廊下

図書館へと続く大階段

扉を開けると、そこはまるで中世の屋敷にある書斎のような空間。ここで身分証明書を提示して、受付を済ませます。

その際に、バッグ類は階段脇の小部屋にあるロッカーに預けておくことが決まりで、ノートやパソコン、筆記用具や携帯電話など、必要最低限のモノのみ携帯が許されています。

図書館の受付、書斎風の空間

まず、右手扉の向こうにある創設者マリア・テレジアの名を冠した広間(Sala Maria Teresa)を見てください。一歩足を踏み入れると、荘厳かつゴージャスな空間に圧倒され、息を呑むほどの感動に自然に歩みが止まります。

床から中二階まである高い天井まで、価値のある古い書物で覆い尽くされ、中央には18世紀ボヘミアンクリスタルの豪華なシャンデリアが静かな輝きを放つ空間は圧巻です。

マリア・テレジアの広間

天井まで並ぶ古書が圧巻

その先はリサーチルーム(Sala Cataloghi)、図書館の心臓部であり、保存されているあらゆる書物、マイクロフィルム、CDなどオンライン検索できる情報サービス部門で、関係者のみ入場及び使用することができます。

Sala Cataloghi リサーチ・管理部門

受付の正面には、平日の昼間は勉強する学生たちでいっぱいの読書室。お喋り好きなイタリア人もここでは静かに、それぞれの課題に熱心に取り組んでいます。

古い書物に囲まれ、壁には美術館所蔵の絵画がかかり、ヨーロッパ特有の少し薄暗い部屋の中に、日差しが細く差し込む様子は、ハリーポッターの世界のよう。

Sala di Lettura 読書室

Sala Manoscritti 手書きの書物、歴史的アーカイブの眠る部屋

受付左の部屋は、一般利用者が書物の検索などをするところですが、奥に続く歴史的アーカイブのある部屋に、今回お邪魔して貴重な蔵書を見せてもらう機会に恵まれました。

所有150万冊のうち、2367冊の手書き本、4万冊余の自筆初期印刷本を含む、1501年〜1830年までの貴重な蔵書の眠る部屋は、一見司書室のようだけれど、ガラス扉の棚の中に並ぶ書物、ラックに何気なく立てかけてある書物、すべてが素晴らしく貴重なものばかり! 驚きでしばし、言葉が出ないくらい。

「日本に関することが書かれているものもあるよ」と、次々テーブルに広げられる本。皮表紙に金細工が施されたもの、さまざまな色の皮表紙があり、色は褪せても美しい風合いは変わらずに、数百年後の今も生きている。

マーブル模様のような紙に背表紙が貼られたもの、装丁がどれも素敵に美しく、中も今とは明らかに異なる質の紙に記されたラテン語に見事な挿絵、カラー印刷に至っては感動的な美しさです。万一のことがあっては、と緊張しながらも恐る恐るページを触らせてもらいました。

昔の手書きの書簡、日記などの記録も2500冊ほどあるらしく、政治や文化など歴史を知る上で欠かせない重要な財産ですね。

1500年代からの手書きの貴重な蔵書

日本について書かれたもの、イタリアに派遣された4人の少年使節団

有栖川殿下に献上された、特別な着物の柄見本帳

歴史のロマンを感じる、この素晴らしい空間を持つ図書館は、美術館だけでなくぜひ一度は足を運んでほしいところです。

昨年秋に改装されたバール(Café Fernanda)は、美術館の最後の部屋に続く素敵な空間。50年代のファーニチャーが置かれた室内と、外の回廊でも軽食やカフェタイムをゆっくり楽しむことができます。

Café Fernandaの店内

回廊の一角にあるテラス席

普段は入口から見ることのみ許されていますが、年間を通して何度かこの広間を使ってセミナーが開催され、ミラノの大きなイベントの際には会場として開放されることもあります。

2019年のミラノファッションウィークでは、ブランドのショー会場となり、中央はモデルが歩くランウェイに、隣のリサーチルームが控え室として使われていました。

大広間で開催されるセミナー

2019ミラノファッッションウィークでは、ショー会場に

ブレラ美術館は第3木曜日、22:15まで開館。18:00から入場料3ユーロ、音楽学校の生徒による音楽会も開催されています。(18:00〜21:00)

ブレラ美術館 <Pinacoteca Brera>
Via Brera, 28
Tel 02-722631

火曜〜日曜 8:30~19:15
チケット12ユーロ(日曜日は無料)
第3木曜は、18:00から3ユーロ、22:15まで開館
月曜、1月1日、5月1日、12月25日

図書館 <Biblioteca Nazionale Braidense>
月曜〜金曜 8:30~18:15
土曜    9:00~13:45

中庭

河見 恵子

日本航空で15年間、国際線客室乗務員として勤務。退職後はミラノに居住し、東京と往復する生活。ミラノ・ブレラ地区を中心に、身近な情報をブログやFBで発信。ミラノでは在イタリア日本人のために料理教室をオーガナイズ、開催。ワイン好...

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