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イギリスのイースター ~ロンドン通信#05

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ブレクジットでこれまでにない混乱状態を極めている現在のイギリス。住んでいるものにとって最も不安なのは「次に何が起こるのか全く予測がつかない」ということで、こればかりはいくら様々な分野の識者の意見や予測を聞いてもあまり役には立たない気がします。

イギリスのイースター ~ロンドン通信#05

そんな中でも何世紀にも渡って続いているイースターのシーズンはいつもと変わりなくやって来て、今年も街にはチョコレート・エッグが溢れます。

キリストの復活を祝うイースターですが、その名前の由来はキリスト教以前の宗教の春の女神、イオスタから来ているように、「春の到来を祝う祭り」としての位置づけが色濃く残ります。

卵は「生まれ変わる新しい命」の象徴とされ、ヴィクトリア時代には特にゆで卵にきれいに絵付けしたものをプレゼントしあう習慣がありました。

今は市販で卵の形のオーナメントやデコレーションが売られていますが、学校で工作として卵に絵付けをすることもあります。でもやはり最も一般的なのは、卵の形のチョコレートで、それはヨーロッパ中変わらないのではないかと思います。

10年前くらいからよく目にするようになった「イースター・ツリー」は、テーブル・スタイリストたちが雑誌でネコヤナギの枝に卵の形のオーナメントを飾ったあたりから市販がスタートしましたが、伝統的な飾り付けではありません。

もうひとつのシンボルのうさぎは、多産なところからやはり新しい生命を象徴するものとしてイースターのお菓子やデコレーションに使われます。

イギリスのイースターの食べ物として紹介されるのは「ホット・クロス・バンズ」と「シムネル・ケーキ」ですが、現代では「シムネル・ケーキ」はそれほど誰もが買ったり作ったりするものではないように感じます。

店頭にたくさん並ぶということがありませんし、イギリス人の間でこれを毎年食べるという人が私の周囲にほとんどいないようです。

でも「ホット・クロス・バンズ」はみんな大好き。もともとはイースター時期だけしか販売していなかったのに、今では一年中スーパーに並ぶところがあるくらいです。日本でも時々見かけますが、手でちぎってそのままパンとして召し上がっている方が多いように感じます。

イギリスでの「ホット・クロス・バンズ」は、水平2つに切ってトーストし、断面にバターを塗って食べるもの。こんがりと焼けたところにバターが溶けて、シナモンやドライドフルーツの甘い香りとともに紅茶が進む美味しさです!

朝食にも良いですし、お腹が空いた! という午後のティータイムにもぴったり。イギリスでは紅茶と合わせるのは生タイプのケーキであることがほとんどなくて、ティータイムと言ったら焼き菓子やこういう甘いバンズ、スコーンなどが昔から愛されているのです。

そしてイースターの時期が来ると街路樹の下や庭、店頭にたくさん揺れる水仙の花。ワーズワースが詩にしたくなったのが感覚としてとてもよく理解できる風景です。

庭に咲く水仙やムスカリをテーブルに飾り、春らしい食器で美味しい紅茶と素朴なイギリスの「ホット・クロス・バンズ」を食べる、手間はほとんどかからないけれど何より春の訪れを感じる、贅沢なティータイムです。

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スチュワード麻子

イギリス・ロンドン在住。イギリスと日本で紅茶スクール「インフューズ・スクール・オブ・イングリッシュティー」を主宰。著書は『英国スタイルで楽しむ紅茶』(河出書房新社)など5冊。 雑誌への執筆の他、日本、英国内での講演活動を行...

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