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眠るときだけは、「自分の時間」。女性用ふんどしに込められた想い

「ふんどし」が「自分の時間」を作るスイッチになる。

眠るときだけは、「自分の時間」。女性用ふんどしに込められた想い

忙しいと、つい自分のことは後回しになってしまう。

ご飯は適当に外食やインスタント食品で済ませ、睡眠時間はいつも不足気味、頭の中は常に仕事や人間関係のことでいっぱい。

自分の時間は、どこにいっちゃったのだろう。

少しのもどかしさを抱えながら眠りにつき、翌朝、けだるいまま仕事に向かう。

せめて、眠るときだけでも「自分のための」時間を作ろう。
女性用のふんどし「sharefun®(しゃれふん)」は、そんなコンセプトのもとに生まれた。

sharefun®(しゃれふん)

ゴムやワイヤーなどの締め付けから解放し、体をゆるめて、ぐっすりと快適な睡眠に導く。
赤ちゃんが使えるオーガニックコットンや、通気性に優れた軽やかなリネンは、生産者の顔がわかる最高級な品質の素材の生地でできている。

左:中川ケイジさん/右:細川優実さん

カラフルで、横にリボンで結ぶ、ちょっと可愛い「ふんどし」はどのように生まれたのか。
「sharefun®(しゃれふん)」を販売する有限会社プラスチャーミングの代表取締役の中川ケイジさんと、商品企画・デザインアドバイザーの細川優実さんにお話を伺った。

■育休をとったことで「本当に届けたい人」が見つかった

――中川さんは以前からリラックスウェアとしてふんどしを販売し、日本ふんどし協会の会長としても普及をし続けてきた、現代ふんどしの先駆者ともいえる方ですよね。今回「sharefun®(しゃれふん)」という形で大幅リニューアルをしたのは、どのような経緯からですか。

リブランドでは、大人の女性がリラックスウェアとして導入しやすいイメージに

中川ケイジ(以下、中川):「誰に届けたいか」ということが自分の中で明確になったからですね。それまでは、男性用と女性用で特に大きな区別はなく、ユニセックスのリラックスウェアのような売り方をしていました。

というのも、もともとは自分が体調を崩したときにふんどしを使ったらぐっすり眠れて回復した、というのがふんどしを商売にする上での原点だったんです。知れば知るほど奥深く魅力がたくさんあるふんどしを、とにかく多くの人に広めたいと思っていた。

――以前は、男女問わずふんどしを届けたいと思っていたんですね。

中川:そうですね。ただ、2011年にふんどしの販売を始めてから、だんだんと他のふんどしブランドも増えてくるようになりました。ふんどしを広めるという役割は終えたのかな、と思う中で、だんだんと自分が売る商品のデッドコピーのようなものも目につき始めて……。自分がやってる仕事って、誰でもできる仕事だったんだな、って落ち込みましたね。

中川:改めて自分の仕事やふんどしへの思いを振り返っていた時期に、ちょうど私が3カ月間の育休をとることになりました。今まで育児をしてくれていた妻に代わって、引き受けようとしたんですね。そしたら、あまりの大変さに驚きました。やってみて初めて気づいたのですが、「これなら仕事の方がずっと楽だ!」って思うほどでしたからね。

――具体的に、どういった点が大変でしたか。

中川:とにかく、眠れないことです。妻を寝かせるため、ミルク当番は私がしていたのですが、そうすると2時間おきに起きなければいけない。たとえ多少寝る時間がとれても、もし赤ちゃんに何かあったら、と思うとぐっすりは眠れません。

途切れ途切れの睡眠が、土日関係なく毎日続く。そんな日々を2カ月・3カ月と過ごしていたせいで、可愛いはずの赤ちゃんに対してすらイライラしてしまう。男の僕ですら、こんなに大変なんです。産んだあとで体調が万全ではない妻は、もっと大変だろうということに気づきました。

そして、妻に限らず、こういった負担を抱えている女性は多くいるのではないか、と思ったんです。私にとってふんどしは、体調を回復してくれたことに感動して始めたものでした。改めて「じゃあ、今の僕は誰に届けたいのだろう」と自問自答し、「一緒に暮らす妻のように、ゆっくり睡眠すらもとれない女性」に届けたい、と心の底から思えました。

■女性はそこまで「ふんどし」に必要性を感じない?

――そしてリニューアルへと踏み出すんですね。具体的には何から手をつけましたか。

中川:まずはチームメンバーを作るところからですね。それまでは、ほぼ僕ひとりでやっていましたが、女性に届けたいのであれば、女性がチームにいないと始まらない。また、素材から縫製、デザインやコピーライティング、各分野において自分が信頼できるプロフェッショナルにお願いしました。そこでご相談さしあげたうちのひとりが、デザイナーアドバイザーの細川優実さんです。

――中川さんと細川さんは、どういった経緯でお知り合いになったんですか。

細川優実(以下、細川):もともと、同じ専門学校で非常勤講師をしていて面識はあったんです。中川先生がどういうビジネスをしているのかも知っていたし、ふんどしもいただいていました。その出会いから1年後くらいに、中川さんからこのプロジェクトの相談を受けたんですね。ターゲット層でもあり、縫製とか素材についての技術面もカバーできる、という点でお声がけいただきました。

そのお話をいただいたときに、そういえば私、もらったふんどし使ってなかったな、と。ターゲットとしてドンピシャで、使ってない派だから「なんで自分は使わなかったのか?」というところから考えてできることはたくさんある。だからやってみたいな、って。

――ふんどしをもらっていたのに使っていなかった、その理由はどこにあったのでしょうか。

細川:信じられていなかった、というのはあると思います。いいことはたくさんあると言うけれど、具体的な効能がある薬でもないわけで、効果も短期的にはわかりにくい。そして何より、ふんどしに移行するほど、現状の下着に困っていなかった。そこに「必死さ」はなかったわけです。

たとえば、ご飯が食べられない、といった困り方をしていない。そもそもふんどしは毎日履かなければいけないものではないので、デザートのような楽しさを感じられる存在だったら使うかも、とは思いました。

――そこから具体的にどう変えたのでしょうか。

細川:まずは、見た目ですね。下着ってやっぱり、履き心地と同じくらい、「履いていてうれしくなるか」というのが大切だと思うんです。履いているときのふんどし感を払拭して、可愛らしいルームウェアのような範囲に近づけたいと思って。同世代の友人たちにモニターになってもらって、実際に履いてもらいながら調整をしました。サイズや縫い目の幅などをミリ単位で調整していくことで、よりエレガントな雰囲気になる、みたいな。

ただ、履いたときの心地よさについては、リニューアル前のものがほとんど完璧な仕上がりだったので、そこまで手は加えていません。縫製の面で、縫い方などとても細かい部分ではかなりのブラッシュアップを施していますが、それくらいですね。むしろ、当時の商品を履いたときに、履き心地は十分よかったので、これは入り口さえちゃんと作れば働く女性にもちゃんと刺さるものになるな、という確信がありました。

■ふんどしの紐を結ぶことが「スイッチ」になる

――細川さんを始めとしたさまざまなプロと一緒に進めていく中で、中川さんご自身の中で新たな気づきなどはありましたか。

中川:「メッセージを極限までシンプルにしないと届かない」ということですね。それまで僕は、ふんどしの効果効能について、冷えやむくみ、デリケートゾーンの痒みなど、あれもこれもと語ってきたんですね。

でも、それをプロジェクトメンバーに伝えたとき、「いや、そこは“睡眠”に絞りましょう」という提案がされました。そこまでシンプルにしないと、届けたい人には届かない、と。結局、幕の内弁当みたいな感じで、なんでも入っているのはうれしいけど、特別それじゃないといけないという気持ちにはならないってことなんですよね。

――その「睡眠」というテーマについては、女性である細川さんも共感するところがありましたか。

細川:そうですね。正直、私は睡眠に対してそれほど必死ではなかったんです……。ずっと「ぐっすり眠れないのは仕方ない」と諦めているような状態。それって私に限らず、多くの女性がそうだと思います。

細川:ただ、私は31歳になるのですが、ちょうど質のいい睡眠について考えるような年齢になってきたな、という実感もあります。睡眠についての記事を読むことが増えたり、寝具やアロマのお店がやけに目に入ったり。だから、ふんどしが、睡眠を考えるためのきっかけになったらいいな、とは思っているんですよね。

睡眠って、究極的に自分のための時間じゃないですか。忙しいとつい忘れがちになってしまうけど、その時間を思い出したり意識させてくれる商品があったら、それはすごくいいな、って。その上でも、ワンタッチで履けない、というのはこの商品のかなり大きなポイントなんですよ。

――というと?

細川:要は、ふんどしって履くために紐を結んだり、いちいち工程を踏まないといけないんです。パッと履けるパンツと違って、面倒くささを感じるかもしれないけど、この履くための時間もふんどしの体験のひとつなんですね。自分で自分のサイズに調整して、紐をきゅっと結ぶ。自分を包み込んであげるようなイメージです。それは、自然と自分をいたわる時間につながる。

中川:たとえば、紐を結んだあとは、携帯をオフにして、自分のために夜を過ごす、みたいな習慣を作ってもいいかもしれません。そう考えると、ふんどしは心を切り替えるためのスイッチのような存在になるんですよね。

細川:いまって便利なものも多くて、時短がブームではありますけど、だからこそそういった自分をいたわる丁寧な時間はより貴重になってくると思っています。そして、そんな貴重な時間をこのふんどしが実現できたら、それはすごくうれしいな、って。

取材・Text/園田もなか
Photo/池田博美

「sharefun®(しゃれふん)」公式サイトはこちら

園田 もなか

記事を書く仕事をしています。ハリネズミのおはぎとロップイヤーのもなかと暮らしている。Twitter:@osono__na7

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