妊娠しにくくなる? はしたない? 偏見まみれの私が「低用量ピル」を試してみたら……
生理の症状や重さは人それぞれ。けれど、「女性の体に毎月やってくるものである」という点は共通しています。世の女性たちは、それぞれどうやって生理と“折り合い”をつけてきたのでしょうか。今回は、3年前から低用量ピルを服用しているというライターの社領エミさんに寄稿いただきました。
DRESSをご覧の皆さま、はじめまして! ライターの社領エミと申します。
皆さん、生理と仲良くやっていますか?
私の生理デビューは、中学1年生のとき。部活中、「なんだかお股に違和感があるな?」とトイレに行ってみると、下着に血が……。混乱のあまり「痔だーーー!」と叫び、一緒にいた友達を驚かせたものです。
あれから15年。いまではすっかり生理と仲良しです。
最初は辛かった生理痛も、生理初日に腹巻・カイロでしっかり冷え対策をすることでほとんど解決。ストレスで夫に当たってしまうこともありますが、気分が落ち着いた瞬間にすかさず「ごめんなさい」と伝え、自分の体調を報告することで解決できるようになりました。
そして何よりも私の生理に欠かせないのが、「低用量ピル」。
かつては多少の偏見も抱いていましたが、今ではなくてはならない存在です。
■低用量ピルは「妊娠しにくくなる」?「はしたない」?
もともとは避妊のために低用量ピルを飲み始めたものの、以前は勝手な思い込みがありました。
長いこと使うと何か病気になるんじゃないか、妊娠しにくくなりそう、避妊で使うのはちょっと「はしたない」感じがするな、などなど……。
そんな私が本格的に低用量ピルの使用を視野に入れ始めたのは3年前のこと。アメリカではピルの常用が一般的だという情報を耳にし、「なぜアメリカではみんなが使っているんだろう?」とインターネットで調べ始めたことがきっかけでした。
まず、低用量ピルは「ホルモンに似た成分が含まれている薬」のこと。内服することで卵胞の成熟を抑え排卵を起こさせなくするので、妊娠を避け、生理周期を安定させることができるのだそうです。
さらにいろいろなクリニックやお医者さんのサイトを見ていくと、体質に合えば、低用量ピルはさまざまなメリットをもたらすことがわかってきました。(※)
・子宮内膜の肥厚を抑え、子宮内膜症の予防に効果的
・生理周期を整えることができ、出血量や生理痛が軽くなるケースもある
対してデメリットですが、
・喫煙者は血栓症のリスクが高まる可能性がある
ちなみに私が調べた限りでは、「低用量ピルが原因で太る」「妊娠しにくくなる」ということはほとんどないようでした。
(編集部※)低用量ピルの効果や副作用には個人差があります。詳細は後述の監修医コメントをご参照ください。服用される場合は、医師へ相談し適切なチェック、指導、処方をしてもらうようお願いいたします。
画像はイメージです
正しく服用すれば、確実な避妊効果が得られる上に生理が整って軽くなるなんて、メリットだらけの薬じゃん!
私、偏見まみれだったんじゃん!!
というわけで、すぐさま自宅近くの婦人科に出向きました。
「避妊のために低用量ピルを使う」と言ったらどんな反応をされるだろう……と、お医者さんや看護士さんに言うのが少し不安でしたが、そこはさすがお医者さん。「あ、低用量ピルね、はいはい」と普通に処方していただき、拍子抜けと同時にとてもうれしかったのを覚えています。
ちなみにピルにもいろいろ種類があり、私が処方してもらったのは「ファボアール錠21」。毎日決まった時間に1粒ずつ服用するのを21日間続け、その後7日間は服用をお休みする、という28日のサイクルを繰り返す薬です。
価格は1シート28日分で月3000円。3シート分までまとめて処方してもらえるので、約3カ月に一度、9000円の出費があります。この金額を高いと感じるか安いと感じるかは人それぞれだと思いますが、私は夫と割り勘にしているため、そこまで負担ではありません。
ファボアール含め、多くの低用量ピルは保険が効きませんが、月経困難症の治療薬として使われている「ヤーズ」「ルナベル」等は保険が効くそうですよ(その際、年1回の婦人科検診・血液検査が必須だそう)。
■パートナーとの仲をスムーズにするのにも有用な低用量ピル
で、「合わなければやめよう」と思いながら処方してもらった低用量ピル。
結果的に、この薬のおかげでいろんなことが楽になりました。
低用量ピルは多くの場合、飲み始めた頃は副作用として毎日少量ずつの出血があります(期間や副作用の内容には個人差があります)。
私の場合は初めの1カ月で、その期間は毎日ナプキンをあてるので、少し面倒だったのです……が!
飲み続けると、生理中の腹痛や生理不順がなくなり、経血の量も激減。幸い頭痛・吐き気などの副作用は見られませんでした。
ピルの服用をお休みする7日間のあいだに生理がくるので、生理の日程を確実に把握することもできます。
服用の日数を調整すれば生理がくる日をずらせるので、プールや旅行などの予定が入っている月はそれはもうものすごく便利でした。
そして、私にとって生理と切り離せないのが「セックス」……!
パートナーとの仲をスムーズに運ぶのにも、低用量ピルは有用なんですよ!
生理の日程が確実にわかるため、夫も「今日はできないな」と事前に把握することができストレスがありません。
そもそも我が家は「今日セックスをしたいか、したくないか」は双方の事前申告制なので(寝る前の「セックスするかしないかモゾモゾするせめぎ合い」がめちゃめちゃイヤだった)、自由に生理をコントロールできる低用量ピルは我が家のやり方にもとても合っていたんです。
というわけで私は、低用量ピルのおかげで生理ととてもうまくやっています。
ただ、以上はあくまですべて私の実体験と感想です。
たまたま体質に合っていたお薬が処方され、副作用もしんどいものではなかったのが幸運でしたが、「吐き気が耐えられなかったのでやめた」という友人もいます。
服用する人によって、また服用する低用量ピルによって、得られる効果や副作用もまったく違うと思うので、いろいろご自身で調べ、医師に相談した上で検討いただければと思います。
■毎月排卵し、毎月生理がきてくれることのありがたさ
「男性は女性の生理のつらさをわかってあげられない」という話を耳にすることがありますが、ある意味私も男性側に近いのだと思います。
私の生理人生は割とイージーモードでしたから、冷や汗をかくほどの腹痛も、悶えるほどの吐き気も味わったことがありません。
しかし「みんなが自分の生理について気軽に発言できるようになればいいな」という思いで、このコラムを赤裸々にしたためました。
生理がつらい人がいるということも、私のように軽い人がいるということも、低用量ピルを使う人(と、そのさまざまなメリット・デメリット)のことも……。
まずは、「さまざまなタイプがある」ことが世の中に伝わって、人それぞれの体調について気遣い合える世の中になればいいな、と思います。
私なりに、面倒だし、ニオイが気になるし、お金がかかるし荷物が増えるし、本当にイヤだなーと思っていた生理ですが……。
最近妊活を始めてから、排卵検査薬を使ってみたり、タイミングを合わせてセックスをしてみたりして。そういったことで、自分の身体が毎月排卵して、毎月生理が来てくれていることの大切さ、ありがたさをようやく少しずつ味わっています。
身体の大切な機能である生理。
皆さんも心地よい関わり方ができるよう願っています!
text/社領エミ(@emicha4649)
1990年生まれ、京都府在住のアホなフリーライター。取っつきにくいことをわかりやすく噛み砕いたり、みんなが気になることをインタビューしたりしています。
■産婦人科医の言葉
社領さんのように、避妊目的のために薬を内服することに「はしたなさ」を感じたというのは、日本人の文化や奥ゆかしさもその背景にあるのかもしれません。
しかし、日本の中絶件数は減少傾向にはありながらも、1年間に16~18万件あることを考えると、妊娠の可能性がある年代の女性は、避妊に対しても真剣に向き合う必要があります。
月経困難症治療剤である「ヤーズ」や「ルナベル」といった薬剤は、基本的には低用量ピルと同様の薬剤であるため、排卵を抑制し、避妊効果もあるといえます。
中には、保険薬で避妊ができると言って処方している婦人科もあると聞きます。ただ、「避妊目的」は病気の治療ではないため、その処方は保険診療上正しくありませんし、薬剤にその効能が記されていない以上、あいまいな処方をしていることになります。
低用量ピルを内服する上で大切なのは、処方する医師側も内服する患者側も、
・避妊が目的なのか
・月経痛を改善したいのか
・その両方なのか
・生理の時期をコントロールしたいのか
など、意図を明確に持つことだと思います。
低用量ピルを正しく内服することが、その効果に「女性の生活改善薬」という意味をもたらすものと考えます。
医療監修/山中智哉(オリーブレディースクリニック麻布十番院長)
Photo/池田博美(@hiromi_ike)・Shutterstock
Styling/hitomi matsuno(@hitomi_matsuno_) model/土田心愛・杉山史織
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