ノーベル賞は、ダイナマイトの発明者として知られるアルフレッド・ノーベルの遺言に従って1901年から始まった世界的な賞です。
物理学、化学、生理学・医学、文学、平和および経済学の「5分野+1分野」で顕著な功績を残した人物に贈られます。
ノーベル文学賞は、文学の分野において理念をもって創作し、最も傑出した作品を創作した人物に授与されます。
アルフレッド・ノーベルは少年時代から文学に関心を持っており、特にバイロンとシェリーの詩に熱中して自らも詩を書いていました。
また母語であるスウェーデン語に加えて、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ロシア語に堪能であり、外国の文学作品の翻訳も趣味でした。
晩年になっても戯曲「ネメシス」の執筆しているなど文芸に強い関心を抱いていました。
このためノーベル賞の構想時にも、科学だけでなく文学も人類にとって重要であると認識し、遺言の中で「理想的な方向性の ( in an ideal direction )」文学を表彰の対象に含めました。
ノーベル文学賞はその作家の作品、活動の全体に対して与えられるものであって、一つの作品に対して与えられるものではないとされているが、場合によっては特に代表的な作品や選考の上で評価された作品などの名前が賞記に記されることもあります。
原則として選考の時点で生存している作家が対象であり、追贈は行いません。
資格を持っている各地のペン・クラブや大学、文学者などから候補が推薦され、これをスウェーデン学士院が選考します。
授賞式は、ノーベルの命日である12月10日に、「平和賞」を除く5部門はストックホルム(スウェーデン)のコンサートホール、「平和賞」はオスロ(ノルウェー)の市庁舎で行われ(古くはオスロ大学の講堂で行われた)、受賞者には、賞金の小切手、賞状、メダルがそれぞれ贈られます。
映画『天才作家の妻ー40年目の真実ー』感想。ノーベル賞の栄光に隠された愛と嘘とは
【シネマの時間】第53回は、本年度アカデミー賞最有力作品。『危険な情事』のグレン・クローズ &『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジョナサン・プライスのW主演で贈る映画『天才作家の妻ー40年目の真実ー』をピックアップ! 栄誉を手に入れた夫と支え続けた妻。しかし彼の傑作にはある疑惑があった。1月26日(土)より全国公開!
こんにちは。アートディレクターの諸戸佑美です。
ノーベル文学賞といえば日本では、作家のカズオ・イシグロ氏や大江健三郎氏、川端康成氏が受賞していますが、直木賞や芥川賞なども含め、権威ある文学賞を受賞するのは大変なことですね。
【シネマの時間】第53回は、”ノーベル賞の栄光に隠された愛と嘘” 映画『天才作家の妻ー40年目の真実ー』をお送りします!
作家である夫を慎ましく支える妻のジョーンに扮するのは、『危険な情事』『アルバート氏の人生』などでアカデミー賞に6度ノミネートの実績を誇り、第76回ゴールデングローブ賞で主演女優賞を受賞した女優グレン・クローズ。
才能がありながら”天才作家の妻”として生きた女性の内なる激しい葛藤を、繊細かつ重厚に演じ、すでに本年度オスカー最有力との声も高まっています。
ジョーンを愛しながらも男のエゴをさらけ出すジョセフをリアリティーを持って巧みに演じるのは、『未来世紀ブラジル』『キャリントン』の名優ジョナサン・プライス。
さらにクリスチャン・スレーターが夫婦の秘密を探る記者役で絶妙な演技を披露。
クローズの実の娘アニー・スタークが若き日のジョーンに扮し、母娘の本格初共演も話題です。
メガホンをとったのは、映画のみならず演劇の分野でも活躍するスウェーデンのベテラン、ビョルン・ルンゲ監督。
毎年スウェーデンのストックホルムで華やかに行われるノーベル賞授賞式を背景に、人生の晩年に差しかかった夫婦の危機を卓越した心理描写でスリリングに描いた本作は、結婚や仕事、人生の意味を観るものに問いかけ深い余韻を残します。
1月26日(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー。
ぜひこの機会に映画館でお楽しみください!
■ノーベル文学賞とは?
■映画『天才作家の妻ー40年目の真実ー』あらすじーノーベル賞の栄光に隠された愛と真実。
1990年代、米コネチカット州。
ある早朝、現代文学の巨匠として名高いジョゼフ・キャッスルマンと妻ジョーンの元に、スウェーデンから国際電話がかかってきました。
「今年のノーベル文学賞は、あなたに決まりました!」
待ちに待った吉報を受け、抱き合って喜び合うふたり。
友人や教え子らを自宅に招いたお祝いの席のスピーチでは、最愛の妻に感謝の言葉を告げるジョセフ。
「ジョーンは人生の宝だ。彼女なくして、私はいない」
満面の笑みを浮かべて寄り添うふたりは、その場にいた誰の目にも理想的な仲睦まじい夫婦に見えました。
夫婦は、ノーベル文学賞受賞式に出席するため、スウェーデンのストックホルムへ訪れます。
駆け出しの作家である息子のデビットも旅に同行しますが、実は偉大なる父に劣等感を抱いています。
ノーベール文学賞授賞式を前に、家族は慌ただしいスケジュールをこなしていきますが、ジョーンは有頂天となり無遠慮な言動を繰り返す夫の世話にほとほと疲れてしまうのです。
そしてひとりでホテルのロビーにいたところ、記者のナサニエルに声をかけられます。
ジョセフの伝記本を書こうとしているナサニエルは、夫婦の過去までも事細かに調べ上げていました。
ふたりが大学で教授と学生という関係で出会い、情熱的な恋に落ちたこと。
すでに妻子がいたジョセフをジョーンが奪い取る形で結ばれたこと。
作家としては当時、二流だったジョセフが、ジョーンとの結婚後に次々と傑作を世に送り出してきたこと。
そしてナサニエルは、「あなたはうんざりしてるのでは? 影として彼の伝説作りをすることに」と自信ありげに核心に迫る質問を投げかけます。
「すごい想像力ね。小説でも書いたら?」と切り返して立ち去るジョーンでしたが、心中は穏やかではありません。
実は若い頃から文学の才能に恵まれていたジョーンでしたが、(1960年代前半)出版業会に根づいた女性蔑視の風潮に失望し、作家になる夢を諦めた過去がありました。
そしてジョセフとの結婚後、常に控えめに寄り添いながら、夫の世界的作家としての成功への道を支え続けてきたのでした。
さらに追い打ちをかけるように、ナサニエルは息子のデビットにも近づいて両親の秘密を吹き込み、その後一波乱が起こります。
夫が栄光のスポットライトを浴びようとしている陰で、ジョーンは彼を愛していながらも、心の奥底に押しとどめていた怒りや不満の感情が沸き起こってくるのを抑えられなくなってきます。
誰も想像だにしない夫婦の秘密とは、一体何なのか……?
おしどり夫婦に人生最高のときがようやく訪れたと思いきや、この栄誉が40年築きあげてきた夫婦の絆を危うくしてしまうのです。
世界最高の権威を誇るノーベル賞授賞式を背景に、人生の晩年に差しかかった夫婦の危機を見つめた本作。
男女間の心の機敏をリアルかつ残酷にあぶり出し、男女の社会的地位の格差というテーマに切り込み、仕事の成功や結婚、人生の意味について問いかけます。
複雑な感情をひた隠し華やかに正装した夫妻は、人生最高の晴れ舞台であるノーベル賞授賞式の会場へ。
はたしてジョーンは、夫がスポットライトを浴びる陰でいつものように慎ましく完璧な“天才作家の妻”を装うのでしょうか。
それとも本当の人生を取り戻すために、衝撃的な真実を世に知らしめるのでしょうか……!?
■映画『天才作家の妻ー40年目の真実ー』作品紹介
2019年1月26日(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー!
公式サイト:http://ten-tsuma.jp
監督:ビョルン・ルンゲ
原題:The Wife
原作:メグ・ウォリッツアー
脚本:ジェーン・アンダーソン
製作:ロザリー・スウェドリン、ミタ・ルイーズ・フォルデイガー、クローディア・ブリュームフーバー、ジョー・バムフォード、ピアース・テンペスト
製作総指揮:ジェーン・アンダーソン、ビョルン・ルンゲ、ゲロ・バウクネット、マーク・クーパー、フローリアン・ダーゲル、トマス・エスキルソン、ガード・シェパーズ
プロダクション・デザイン:マーク・リーズ
撮影:ウルフ・ブラントース
衣装デザイン:トリシャ・ビガー
音楽:ジョスリン・プーク
日本語字幕:牧野琴子
製作年:2017年
上映時間:101分
映倫区分:G
製作国:スウェーデン・アメリカ・イギリス合作
配給:松竹
後援:スウェーデン大使館
ⓒMETA FILM LONDON LIMITED 2017
■映画『天才作家の妻ー40年目の真実ー』キャスト
グレン・クローズ=ジョーン・キャッスルマン
ジョナサン・プライス=ジョゼフ・キャッスルマン
クリスチャン・スレイター=ナサニエル・ボーン
マックス・アイアンズ=デビッド・キャッスルマン
ハリー・ロイド=若い頃のジョゼフ・キャッスルマン
アニー・スターク=若い頃のジョーン・キャッスルマン
エリザベス・マクガバン
【シネマの時間】
アートディレクション・編集・絵・文=諸戸佑美
©︎YUMIMOROTO
本や広告のアートディレクション/デザイン/編集/取材執筆/イラストレーションなど多方面に活躍。