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40歳までは人生の前半戦。これからは、しんどかった自分をまるごと褒めていこう

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40歳までは、好きじゃない人とでも社会勉強のために会ってみたりした。でも、これからは嫌なやつとも、嫌なこととも付き合わなくていい。

40歳までは人生の前半戦。これからは、しんどかった自分をまるごと褒めていこう

今のアラフォーは、学生時代は、過酷な受験戦争を強いられ、社会に出た頃にはバブルが崩壊、就職氷河期とぶつかり、多くがフリーターや派遣という非正規人生を歩むこととなった「受難の世代」。


そんなアラフォー世代の女性たちが抱えている不安や困難にスポットを当てた『非正規・単身・アラフォー女性 「失われた世代」の絶望と希望 』(光文社新書)を刊行した雨宮処凛さんと、大阪国際大学准教授・全日本おばちゃん党代表代行の谷口真由美さんという、同じ年のおふたりの対談。


アラフォー女性たちの抱える「生きづらさ」を生む原因は、日本の社会構造にあることを語っていただいた前回に続いて、ここでは「これから先の希望」を探っていただきました。

左:雨宮処凛さん/右:谷口真由美さん

■ワンオペ家事育児。頼りになるのはコミュニティとのつながり

雨宮処凛さん(以下、雨宮):独身の女性ももちろんなんですが、働きながら子育てもしてという女性が、同世代でも、すごく大変そうに見えて。夫が同世代くらいだと、本当に何もやらない人も多いんですよね。

谷口真由美さん(以下、谷口):うちはもっと悲惨で、一回り上なんで、家のことなんてほとんど何もやらなかった。おまけにインドに単身赴任に行ってしまって。

雨宮:一回り上の世代で、それでインドに行ってるとなると、家事とか育児とか、家のことをなんとかしようと思っても頼りにできないですね。

谷口:そういう意味でいうと、ワンオペ育児をずっとやってきたので。シングルマザーと違うのは、養育費がちゃんと入ってくるかどうかというだけの問題くらい。

雨宮:大学で働きながら、家事や育児をどう乗り越えてきたんですか?

谷口:頼りになったのは、女コミュニティ。助けてくれたのは、女友達だったし、ママ友だし、近所のおばちゃん。同じマンションの、隣の部屋のおばちゃんとか上の階のおばちゃんとかに、よう子どもの面倒を見てもらってて。

雨宮:今時そんなことあるんですね。普通、挨拶もしない感じじゃないですか。

谷口:小さいマンションで、お互いの顔が見えるからだったかもしれませんけど、立ち話を嫌がらずにやってました。近所のおばちゃんがしゃべりかけてきて、それがけっこう長くて「ああ、もう!」みたいなこと、あるじゃないですか。そういうときも、あんまり「うえー」ってならずに付き合ってたんです。そうすると、「ちょっとお漬けもんを、ようさん漬けたから持って帰る?」とか、「そろそろ、子ども迎えに行かなあかんのです」って言うと、「ほな、ご飯を炊いといたるから、後で取りにおいで」とか。

雨宮:その家のお米を、炊いてくれるってことなんですか?

谷口:そうそう。お米炊いてくれはったやつを分けてもらうんですけど。

雨宮:それ不思議。茶碗でくれたり?

谷口:タッパで。「これで足りる?」みたいな。お味噌汁とかも一緒にくれる。たぶんそこまでしゃべるのに付き合わせたという罪悪感があるんです。ご飯の用意をするはずの時間を、自分がしゃべって奪ったから、代わりになんか持っていってあげるわ、って。

雨宮:それ、だいたい何分くらいしゃべるものですか?

谷口:30分か1時間。

雨宮:けっこうな時間ですね(笑)。

谷口:けれど、そうやって「みなさんの愛で、生きてます」みたいなことをやってきたんで、なんとか生き延びてきました。わたし、インフルエンザの後に肺炎になって、本当に動けなかったときがあるんです。

雨宮:そのときもご近所に助けてもらった?

谷口:そう。当時、幼稚園と保育園に行っていた子どもたちが、隣の家に勝手に行って、「お母ちゃんが倒れて動けないので、朝ご飯を食べさせてください」と言っていたのを知って、「よーし、私が死んでも、この子らは生きていけるわ」と思った(笑)。ワンオペ育児で怖かったのは、自分に何かがあった時に、この子たちをどうしようということだったので、逃げ道をとにかく何本も持っておくということだけ、心がけて生きてきたんです。

雨宮:今の話を聞いて思い出したんですが、大阪で子どもを餓死させてしまった事件(※)の下村早苗被告は、インフルエンザになったとき、誰も手助けしてくれなかったらしいですね。彼女はシングルマザーでしたが、本当に孤立していた。

※大阪二児餓死事件:2010年に発生した大阪市西区のマンションで3歳女児と1歳9カ月男児の子どもふたりが母親の育児放棄によって餓死した事件。

谷口:ああいう事件を見てるたびに思うんですけど、糸が切れてしまうことの怖さってあるじゃないですか。人間ってひとりで生きていけない、1匹で生存できないからこそ、糸をたくさん持っておかないといけない。とにかく糸をたくさんつくるということを教えることが大切だと思います。サバイブするために、コミュニティとどうやってつながるとか。

雨宮:そういう知恵を知っていれば、なんとか生きられるんですけどね。

彼女の場合、元夫も、自分の両親も頼れない状況でしたよね。離婚のときに、まるで罰みたいに「家族には甘えません」というような誓約書まで書かされているじゃないですか。

役所にも、一度電話をかけているんです。「もう育てられないから子どもを預かってくれないか」と相談しようと思って。けれども、担当者がいなくて、つながらなかったとかで、結局あんな痛ましい事件が起きてしまった。

谷口:見放された感は大きいな。

雨宮:まだ20代で、ほとんど社会経験のなかった彼女が、ふたりの子どもを育てながら働いて三人分の生活費を稼ぐって、絶対に無理じゃないですか。なんでそれをやらせたかなと。

たとえば、日本社会に、そういう人を助ける制度って、生活保護くらいしかない。けれど、彼女はそれを知っていたとは思えないし、自分がその対象になるとも知らなかっただろうと思う。

■しんどいときには、しんどいって表明する。それが人と上手につながるコツ

雨宮:コミュニティに属すること。これが、生きていくために本当に大切だと思います。谷口さんはこういうコミュニティを作るために、どういう方法があると思いますか?

谷口:インターネットでつながったりっていうのもありますけど、ネットの向こうからはご飯は出てこない。リアルな人間のつながりは、ご飯が出てくるんです(笑)。

たとえば「お子さんと食べて」とか言うて、パイナップルとかもらうとき、「剥いてもらっていいですか」とか頼むんです。「私、パイナップルとかよう剥かんのですけど」って。そうやって、お腹を見せるというか、弱みを見せることって大切だと思うんです。

雨宮:逆に借りを作るんですね。

谷口:そうそう。借りをつくった分、どこかに行ったときのお土産とか、いただきものをおすそ分けするとか。自分のとこだけで美味しいものを食べようというんじゃなくて「お隣さん今日いてはったかな」って持って行って、とかっていうような関係を作ると、継続的につながる。

雨宮:弱みを見せるってなかなかできないですよね。

谷口:日本って恥の概念がすごくあって。自分がしんどいことは、人に聞かせたら駄目なことだというふうに教えられているんです。だけど、しんどいときにしんどいってちゃんと表明する。

だから普段やったら、ごみ捨てに行ったときに30分井戸端会議に参加するんだけれども、今日はしんどいというときは、「もうすいません。しんどいから、今日ちょっと家に帰って横になります」と言ったら、その後、玄関の外出たところに果物が、かかってたりするんですよ。ちゃんとカットしてあるスイカが。

雨宮:なるほど、普段の物言いがここでも生きてくるんですね。

■60歳になったらビル買って、おばちゃんシェアハウスを作る予定

雨宮:私、谷口さんのこれからの人生というか、老後の計画を聞きたいです。

谷口:シェアハウスを作るために、60歳になったらビルを買うつもりなんです。だから、今頑張って働いているのはそれが理由。

雨宮:『非正規・単身・アラフォー女性 「失われた世代」の絶望と希望 』の中にも、「ババア御殿」「ババア互助会」を理想の老後とする女性が登場しているんです。それ以外の女性も、この本に登場した方のほとんどが「老後は女性だけのシェアハウス」と語っていました。なので、ぜひちょっとその計画を詳しく。そのときはもう、パートナーの方はいない前提ですか?

谷口:うん、いない前提(笑)。それこそ、おばちゃん党の仲間とかも含めて、ビル1棟を買おうと思ってて。1階を食堂にしてみんなで働けばお金も稼げる。

雨宮:入居者だけじゃなくて、一般の人を対象にして商売もするんですね。

谷口:料理が得意なおばちゃんいっぱいおるから、近所の人とかも集めて、子ども食堂も併用しつつやったらええ。で、仲間に医者もおると。ほんならとりあえず、クリニックもやろう。ヨガの先生もおるから、カルチャースクールもつくって、とりあえず、1階は収益事業をしようと。

雨宮:それぞれ個室の部屋はあって?

谷口:個室で。女同士も絶対喧嘩するから。ちょっとプリッとなってるときは、それぞれの部屋でプリッとさせといたらええやんって。真ん中に集合できるところがあったらいいんじゃない、というので、ロビーみたいなところと、みんながお茶できるスペースはあって。横に桜の木どーんと植えて、誰かが死んだらその下に埋めて。「ああ、今日も〇〇さん綺麗に咲いてるな」みたいなんでええんちゃうか、って話してて。

雨宮:やっぱりすごい社会資源ですね、おばちゃんは。

谷口:中には、すごく自己評価が低くて、「私は何も持ってないから、そんなん入れてもらわれへんわ」とかいう人いるんです。「ほんまに人生の中で、なんにも得意なことない?」って言うたら、「たぶん、谷口さんよりお片付けは上手」「なら、それでええ」って。断捨離してくれる人とか、掃除してくれる人、大事。

雨宮:でも、たしかにそういうコミュニティを作って、助け合って生きていくしかない。

谷口:だから60歳になったらやろうと思って。

雨宮:じゃあ、あと17年後ですね。楽しみです。

■40歳までは嫌なやつとも付き合う価値はある。けど、後半戦になったら「付き合わんでええ」

谷口:17年なんてあっという間ですよ。今年生まれた女の子の平均寿命がどうやら88歳。ということは我々は、人生のハーフタイムなんです。

前半戦がつらくて悲しかったとしたら、これからの後半の戦略を考える時。ハーフタイムだから休憩しながら、前半戦はどうだったとか、後半戦こうしていこうって話をする。アラフォーなんか、まだまだ子どもみたいなものですよ。人生の半分まできてないし。

雨宮:ですよね。折返しですもんね。

谷口:最近、80歳くらいのおばあちゃんに「戻れるとしたら何歳くらいに戻りたいですか?」って聞いたら、「50代」って言いはるの。もう、アラフォーなんて目じゃないというか、「ごめんなさい、まだ視野にも入ってなかったわ」みたいな。

雨宮: 50代になると、女友達という存在が一番大切になってくる気がしますね。50代で女友達がいなかったら、絶対きつい。

谷口:だから男にばっかり目を向けていると、気が付けば周りに女の人がいなくなっちゃうという。悲惨なことになる。こちらには、「40歳過ぎたら、嫌いなやつと付き合わんでええ」というモットーもありまして。

雨宮:それは昔から決めていたんですか?

谷口:うん。年上のお姉さんたちが、「40歳までは嫌いな人間と付き合っても値打ちはある」って。世の中にはいろんな人がいることを学べるから。「ええ、こんな人おんの?」みたいな。

だから、消耗しつつも、ちょっと付き合ってみたり、友達してみたりとかして。それも、人生のハーフタイムまでですよ。前半戦はやっても意味がある。でも、ハーフタイムにもう入ったんやったら、後半戦に向かっては付き合わんでええと。

雨宮:それ、すごい気が楽になるというか、名言ですね。

谷口:後半は、楽に、機嫌良く生きてくための体勢に入っていかなきゃいけないんです。だから、今までしんどかった人というのは、学習機会が多かったと思ったほうがいいんです。トレーニングは十分終わりました。

雨宮:つらい修行も終わり……。

谷口:水泳でも、やりかけの人というのは、すごい力が入って、泳ぐの下手。だけど、泳げるようになったら、何千メートルでも、力を抜いて泳げるから。そんなもんだと思うんです。

だから、前半にしんどいことをやった人は、しんどかった自分をまるごと褒めて、しんどかった私がこれから楽に生きていくエッセンスを、そこから抽出したらええねん。こうやったらしんどなるということがわかっているということは、そこを避ければいいというのもあるわけでしょう。

雨宮:苦手な人とか、苦手なこととか、もうだいたい自分でわかりますもんね。自分の取り扱い説明書の精度が、かなり上がっている。

谷口:今、アラフォーの女性は、生きていることが奇跡。生き延びたことも奇跡。こんなしんどい世の中を、生きづらい社会の中で、生きづらいことを抱えながら、よく今日まで生きてこれた。そういうことだと思うんです。

取材/Text:大泉りか
編集/Photo:小林航平

【前回の記事はこちら】家族やカップルになることが前提の社会で、「おひとりさま」アラフォーはこれからどう生きていく?

雨宮処凛プロフィール

1975年、北海道生まれ。 作家・活動家。 愛国パンクバンドボーカルなどを経て、2000年、自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。 以来、いじめやリストカットなど自身も経験した「生きづらさ」についての著作を発表する一方、イラクや北朝鮮への渡航を重ねる。 2006年からは格差・貧困問題に取り組み、取材、執筆、運動中。メディアなどでも積極的に発言。3・11以降は脱原発運動にも取り組む。 2007年に出版した『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版/ちくま文庫)はJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。近著に『「女子」という呪い』(集英社クリエイティブ)、『非正規・単身・アラフォー女性』(光文社新書)。

谷口真由美プロフィール

1975年大阪市生まれ。大阪国際大学准教授。大阪大学非常勤講師。専門分野は、国際人権法、ジェンダー法、日本国憲法。大阪大学での楽しく工夫された講義は名物となり、大阪大学共通教育賞を4度受賞。2012年には、プラットフォーム「全日本おばちゃん党」を、Facebookで立ち上げる。目的は、おばちゃんたちの底上げと、オッサン社会に愛とシャレでツッコミをいれること。おばちゃん目線でオッサン政治をチェックしながら、問題提起を続けている。現在党員は世界各地から5500名を超える。世界のメディアからの注目が高く、仏紙リベラシオンのポートレイト欄に紹介されたほど。

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大泉 りか

ライトノベルや官能を執筆するほか、セックスと女の生き方や、男性向けの「モテ」をレクチャーするコラムを多く手掛ける。新刊は『女子会で教わる人生を変える恋愛講座』(大和書房)。著書多数。趣味は映画、アルコール、海外旅行。愛犬と暮...

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