女性が妊娠できるリミットの年齢を42歳と定義したのはなぜか。今回は、年齢ごとに不妊治療をして妊娠できる確率とともに、産婦人科女医で性科学者の宋 美玄(そん みひょん)先生にお話をお伺いしました。
不妊治療とは。内容や費用はどんなもの?
不妊治療って実際のところどうなんだろう? そう思うアラフォー女性の方も多いかもしれません。今回は、不妊治療の内容や費用の詳細について、産婦人科女医で性科学者の宋 美玄(そん みひょん)先生にお話しをお伺いしました。
前回の連載「妊娠の限界」についてかなり反響が大きかったようです。
先日DRESSのシンポジウムがあり、「女のための女の内閣」の大臣のみなさんにお会いしたのですが、そのシンポジウムで妊娠可能年齢についてお話ししたところ、大臣の何人かの方も内容にショックを受けられてしまい、申し訳ないことをしました。
しかし事実は事実なので、私としては知識を早めに持ってもらうようあらゆる媒体で発信することが今そして未来のアラフォー女性のためであると思っております。
もちろん、男性にも知ってもらいたいです。いやむしろ、患者さんの中には女性の方だけが焦り、パートナーである男性の方はのんびりしているという温度差カップルが非常に多いので、男性にこそ知ってもらいたいです。それについてはいずれ詳しく書きます。
■不妊治療とは
さて、高齢妊娠と切っても切れない関係にある不妊治療ですが、実際にどんなものなのかご存じないかたも多いと思うので簡単に解説します。
最も簡単なものは、排卵日のタイミングを見極めるというものです。これでも月に最低2~3回は通わなくてはいけません。
排卵がうまくいっていない場合は(月経が毎月あっても排卵しているとは限らないのです)、排卵誘発剤を使うことになります。
排卵誘発剤には内服薬と注射薬がありますが、注射薬の場合はかなり頻繁に通わなくてはいけなくなります(最近は自己注射できるものもあります)。
そして、ステップアップの順番的には、子宮に精液を直接注入する人工受精になりますが、最近はあまり人工受精で粘らずに、精子と卵子を採ってきて受精卵を体に戻す体外受精早々とステップアップする施設が増えています。
人工受精は、性交痛やセックスレスでセックスをしないで妊娠したい人や、多忙なカップルで夫の精子を凍結しておいて妻の排卵日に解凍して人工受精するといった例でも有効です。
■不妊治療の費用や詳細
人工受精や体外受精になると、施設にもよりますが、月に数万から数十万円かかるので、蓄えが必要になります。また、女性の方は頻繁に通院しなければならなくなるので、働き方を変えることを余儀なくされることも多いです。
都内の不妊治療専門施設に勤める友人産婦人科女医によれば、治療される患者さんの平均年齢は40歳を超えているのだとか。
それは、30代の患者さんは40代の患者さんに比べてすぐに妊娠して卒業していくからだそうです。不妊治療をしてなかなか妊娠という結果が出ないと精神的に辛くなってくる人も多いですが、不妊治療専門施設では効率化して待ち時間を減らすために流れ作業的な診察のところも多く、「この治療でいいのか」という疑問や辛い気持ちなどを医師に伝えにくいと感じる患者さんも多いようで難しいところです。
不妊治療中に精神的に追い詰められた患者さんばかりを診ている心療内科医の友人によれば、妊娠という結果が得られないと、他の方法で心を治療するのは難しいとのことでした。私もそういう相談の経験は何度もありますが、気休めは結局通用しないので本当に難しいです。
「心のケア」と一口に言われますが、人生観の問題ですしね……。
せめて不妊治療自体に明るいイメージができること、経済的な負担を軽くすることなどで軽減できればと思うのですが。
次回は、高齢妊娠してから出産にたどりつくまでの本当のところについて述べようと思っています。
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