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やっぱり東京が好き。東京タワーを見て涙したあの日

医師としてのキャリアを積むために、岩手から東京に出てきたDrまあやさん。自身について「東京が大好きな地方出身者」だと話します。東京で過ごす時間のほうが、それ以外の場所で過ごした時間よりも長くなっている今、東京について思うことを綴っていただきました。

やっぱり東京が好き。東京タワーを見て涙したあの日

私は東京が好きな地方出身者です。

東京に住んでいる多くの人たちが、地方から上京してきた人々でしょう。地方在住の方も、東京在住の方の中にも、「人混みが嫌だ」「街の中が汚いから、好きになれない」「空気が嫌だ」とおっしゃって、地方に移住される方も多いと思います。

とはいえ、人は東京に集まってくる。今回は、「Drまあや的東京」を考えます。

■就職で岩手から東京へ

東京の世田谷で生まれ、3歳まで育ったのち、岩手県北上市へ移り、大学まで岩手に住んでいました。岩手は県庁所在地の盛岡でも、ほとんど遊ぶところはありません。

岩手の皆さんが少し遠出して買い物にいくとしたら、仙台に行く方が多いと思いますが、私の場合は、両親・叔母が東京に住んでいたこともあり、小学生の頃からひとりで東京へ向かい、渋谷・原宿をうろうろしていました。

岩手医科大学医学部を卒業するころ、すでに脳外科医を目指すのは決まっていましたが、どこで修行をするかは悩みました。脳外科医としてのスキルを学ぶことにおいて、岩手医科大学脳神経外科へ入局することは、なんの問題もなく、むしろがんばれば一流の脳外科医だって目指せたかもしれません。

それでも私は「東京」を選んだのです。なぜか?

■東京タワーを見て泣いた

今まで住んだことがある東京、岩手、神奈川、静岡、ロンドン、どの街もそれぞれ県民性のようなものがあり、どこでも地域の人々と楽しく過ごしていたと思います。しかし、東京に戻ってきたときに思うのです。「やっぱり東京が好きだなぁ」って。

ある出張から任期を終えて、東京に戻ったその夜、岡田准一さん主演の『東京タワー』という映画を観に、ひとりで六本木ヒルズへ行きました。映画を観終わって、そこから見える東京タワーを眺めたときに、「東京に戻ってきた!」と涙した記憶があります。

私にとっての「東京」の象徴は、ベタですが「東京タワー」。それよりももっと好きな景色は新宿副都心の景色です。慶應義塾大学病院脳神経外科病棟から一望できた(現在工事中)のですが、その景色と一緒に医師として過ごしてきた私の歴史はあります。

岩手を出ると決めたときに、脳外科の医局の先生方に残らない理由を「変わらない窓の景色に耐えられるかわからないので、東京で修行させてください」とお伝えしました。先生たちは「?」だったことでしょう。

脳外科医になったら、10年は休みがないだろう、と覚悟していました。365日24時間、病院の中にいる可能性があるのです。そうなると、岩手の大学から派遣される出張先をなんとなく考えたときに、病院の窓の景色はきっとどこも同じ「山、田んぼ、空」のみで、実家や大学時代の環境と大きく変わらない環境である可能性が高く、一生変わらない環境に退屈してしまうような気がしたのです。

もちろん、東京へ行ったとしても、脳外科医としての生活はどこでも変わりません。思い立ったらすぐどこかに遊びにいけるわけでもないだろうし、東京から地方に出張へ行くことも想定内でしたが、今まで住んだことがない場所で生きる期待感は、岩手にそのまま残るよりも大きかったと思います。

悩んだ果てに選択した「東京での修行」は、想像以上でしたが、慶應義塾大学病院から見る新宿副都心は、楽しさも苦しさもすべて受け止めてくれた、私の医者人生のスタートの大事な絵になっているんです。

■ロンドンと東京

ロンドン留学生活

ファッション留学で、ロンドンに約2年間住んでいました。ロンドンは、東京を小さく凝縮した街で、地下鉄線路図で街のゾーンが決まっていて、家賃の金額感も各ゾーンによります。歴史ある古い街ではありますが、東の方へ行くと、金融街のビルが立ち並ぶ近代的な街並みがあります。

ロンドンで暮らして思ったのは、交通は東京より便利であること。たとえば、バスが24時間運行しているため、街の繁華街で夜中まで遊んでいても、バスを乗り継いで帰宅することができたのです。私が住んでいたときは違いましたが、現在は週末は24時間運行する地下鉄の路線もあるようです。

しかし、飲食店がどこもラストオーダーが早く、21:30くらいで終了してしまい、あとはお酒のみという感じだったと思います。東京のような美食の街だと、飲んだ後のラーメン1杯、たこ焼き、締めパフェ、24時間営業のファミレスなど夜中に楽しむことができるのに……。

なんといっても、コンビニがないのが辛かったです。コンビニに近いもので、24時間ショップはありましたが、日本のコンビニのクオリティを考えると足元にも及びません。

東京は世界一の美食の街です。ロンドン、パリ、NYなど、大都市と東京で何が違うか?私なりの見解は、高級店に関してはどの都市も変わらないクオリティだと思いますが、いわゆるB級グルメのクオリティが高く、種類も多いことが世界一の要因なのではないでしょうか? 街の中で食べるちょっとしたものが美味しいのは東京です。

■東京での今までとこれから

東京の景色を眺め、走り抜ける

正直、現在でも東京で暮らしていても、休日がないため、どこか遊びに行ったり、イベントに参加したりすることは、ほとんどありません。いろいろな情報をメディアで知って、いつか行ってみようと思っても、毎日仕事が終わるのが、午後11時を過ぎることが多いのもあり、結局開いている馴染みの店に行くことが多いです。

でも、天気のいい夜、気分転換のために都内を「自転車でドライブ」することがあります(笑)。風を感じながら、夜中に賑やかな六本木や新宿を自転車で走っていると、なんだかひとりなのに、ひとりでないような気がします。そうやって夜中の東京の街で、気持ちをリセットし、朝を迎えるのです。

実務的なことを言うと、ファッションの仕事もしている自分にとって、足りない物品があるとすぐに買いに行ける、という利点は大きいです。材料をすぐに手に入れたいときは、ネットショップを利用はするものの、東急ハンズやオカダヤ、世界堂、ビックカメラなどを徘徊することもあります。

表参道や新宿伊勢丹などで、各ブランドの最新の作品やトップアーティストの作品を見たり、特別美術展に行って貴重な作品を見て、自分に足りないものを見つめ直したり。都会だからできることのひとつです。

非日常的なもの、日常生活のちょっとした時間を見つけて、街の中にいる東京に集まっている人々を見るだけで、ワクワクする東京。日本を動かす人々からとんでもない意味不明な人まで、とにかくいろいろな人たちが生きている街が東京で、さまざまな人を受け入れているのです。

もちろんその変な人のひとりが私なのかもしれませんが……。見聞きしたすべてが自分の人生の刺激になる街で、自分はどう生きるべきか、常に考えさせられます。

自分がどの時代にどのタイミングで、東京にいて過ごしたか? 思い出も人それぞれ。東京で過ごしている時間の方が長くなってきた私ですが、日々変化していく東京で、まだまだ修行を続けてまいります。

DRESSでは8月特集「東京の君へ」と題して、夢や希望を持って上京し、東京で活躍する「表現者」たちの“東京物語”をお届けしていきます。

Drまあや

脳外科医兼デザイナー/1975年東京生まれ・岩手県北上市育ち 岩手医科大学医学部卒業後、慶應義塾大学脳神経外科医局入局。2010年ロンドンのCentral Saint Martins に留学し、デザインの勉強する。帰国後、...

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