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「別れる前」に知っておきたいお金の話

いつか誰かと共に暮らす予定の人も、しばらくはひとりでいいかな、という人も、「お金と住まいの教養」を少しずつ身につけていきませんか? 『学校では教えてくれない! 一生役立つ「お金と住まい」の話』著者、寺岡孝さんの連載【お金と住まいの教養を持つオンナ】#5では、万一に備えて知っておきたい「財産分与」についてご紹介します。

「別れる前」に知っておきたいお金の話

大人の男女にとって、「結婚」は人生の節目のひとつです。

惹かれ合った者同士が一緒に生活することが結婚の形ですから、結婚した際には夫婦が助け合って、補って、互いのことを心配して、協力し合って生活することが必要でしょう。

しかしながら、時が経つにつれて仲の良かった夫婦も何らかの理由で、「離婚」という道に辿り着く場合があります。価値観・性格の不一致や金銭、はたまた不倫が原因など、もろもろの理由で別れる結果に……。

厚生労働省「平成29年(2017) 人口動態統計の年間推計」の資料によると、2017年の「婚姻件数は60万7000組」「離婚件数は21万2000組」と発表されています。数字的には、3人にひとりが離婚という選択をしたことになります。

さて、そんな理由で別れる際にもっとも大きく問題視されるのはお金の話です。自分を守る、損をしないために、別れる前に知っておくべきお金のお話です。

例えば、夫婦の間に子どもがいる場合は親権の問題と養育費の問題が、マンションや戸建てを買っている夫婦には、その所有権の問題や住宅ローンの返済に係わる問題があります。

そこで、今回は万が一、離婚したときのことを想定し、その際のお金にまつわる基本的な知識をご紹介します。

婚姻後に得た財産は誰のモノ?

離婚する際には「財産分与」という、お金にまつわる大きな経済的な問題が存在します。

基本的なことですが、いわゆる夫婦として一緒に暮らしていた間に築いた財産は、夫婦の共有財産とみなされます。

つまり、妻が専業主婦であっても、婚姻中に得たモノは夫婦ふたりで協力して得た財産ということになります。この点は経済的負担を大きく担っているとされる夫側は意外に知らないものです。

よく勘違いされるケースの例を挙げると、例えば、婚姻中に自家用車を現金で購入したとしましょう。

代金は夫の預金で支払ったので、夫としては「俺のカネで支払ったのだから、この車は俺のモノだ」と主張します。しかしながら、その預金が婚姻後に夫婦で経済的に協力した成果の預金であれば車の所有権は夫婦双方にあります。

したがって、いくら夫が「俺がカネを払ったから」と言っても、車は夫婦双方の財産として見なされます。

逆に、夫、もしくは妻が独身時代に持っていた銀行預金が例えば500万円あった場合、その500万円は婚姻中に築いた財産ではないため、夫のモノ、もしくは妻のモノになります。

結婚後その預金が1000万円になっていたとしたら、500万円増えていることになり、増えた分は夫婦の共有財産とみなされます。

こうした事例からわかる通り、婚姻後に得た財産は夫婦どちらかがお金を払ったとしても、その所有権は夫婦双方にあるということは覚えておくべきでしょう。

離婚時における財産分与とは

次に、離婚の際には夫婦共有の財産は、どのような割合で分けられるのでしょうか。

夫婦共有の財産は、基本的に2分の1ずつ分けるケースが大半を占めているようです。

お互いが合意すれば、例えば、夫が3分の2、妻が3分の1と財産を分けることも可能ですが、夫婦で等しく均等に分けることが望ましいでしょう。

先ほどの事例のように車も売却して現金化し、財産分与することが理想ですが、高額の消費財は夫婦の事情でなかなか現金化できない場合もあります。

車や住まいが離婚後の生活する上での必需品となれば、夫婦双方で話合いをしてどうするかを決めていかなくてなりません。

不動産の財産分与

もっと厄介なものはマンションや戸建てといった不動産の財産分与です。

例えば、婚姻後に不動産を購入して夫名義で所有しても、特別の事情がなければ夫婦共有財産となり、離婚の際にはその権利の半分を妻は主張できます。これは、先ほどの車の事例と同様の考え方になり、「俺がローンを組んで返済しているから住まいは俺のモノ」とはいきません。

あくまでも、婚姻後に得た不動産は夫婦共有の財産として見られてしまうのです。

では、不動産の財産分与はどうやって行うのでしょうか。

通常は、離婚時に不動産の売却をして、その代金をふたりで分けるというのが一般的な流れになります。

ところが、不動産を購入した際には住宅ローンを利用している場合が多く、不動産の売却の際に住宅ローンが完済できない場合があります。

売却代金で住宅ローンの完済ができればいいのですが、できない場合には自己資金などで不足分を補てんして完済しないと売却ができないということになります。ここで、この不足金は「誰が補てんするのか」ということになりますが、この場合は夫婦で折半して支払うことにはなるでしょう。

ただ、実際には妻に支払い能力がないとなれば、その分を夫が負担し、妻は慰謝料を減額したり、子供の養育費だけを夫に請求したりするというような事例も多くあります。

逆に、夫婦の共有財産にならない場合もあります。婚姻中に得た財産は夫婦の共有財産と見なされるとお話ししましたが、例えば、財産分与の話になった際に夫が反旗を翻して「違う」と立証できる場合には、夫の個人の財産と認められることもあります。

ただ、この場合にはいわゆる離婚裁判に進むケースが多く、時間と労力が夫婦双方にかかります。
ですから、概ね名義は夫や妻となっていても、実際には夫婦の共有財産となってしまいます。

このように、「夫婦で得た財産は離婚の際には夫婦双方で均等に分ける」ということを知っておくべきでしょう。

「離婚」を想定して結婚を考えるのはナンセンスと言われそうですが、いざ離婚となった場合にあわてないように、お金の基本的な考え方は身に着けておくことをおすすめします。

参照:平成29年(2017)人口動態統計の年間推計(厚生労働省HPより)

Text/寺岡 孝(てらおか たかし)
1960年東京都生まれ。アネシスプランニング株式会社代表取締役。住宅コンサルタント。住宅セカンドオピニオン。 大手ハウスメーカーに勤務した後、2006年にアネシスプランニング株式会社を設立。住宅の建築や不動産購入・売却などのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行っている。これまでに2,000件以上の相談を受けている。 東洋経済オンライン、ZUU online、スマイスター、楽待などのWebメディアに住宅、ローンや不動産投資についてのコラム等を多数寄稿。著書に『不動産投資は出口戦略が9割』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

DRESS編集部

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