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「感じる」だけでは伝わらない。「一歩踏み込む」からこそ寄り添えるのだと思う

空気を読む。忖度をする。そんな日本独特のコミュニケーションにはポジティブな側面もあるかもしれません。けれど、私たちはそれだけで相手に何かを期待したり、求めたりしていないでしょうか。

「感じる」だけでは伝わらない。「一歩踏み込む」からこそ寄り添えるのだと思う

一人ひとりのお客様がそれぞれの目的でご搭乗になる機内。

毎日のフライトではたくさんのストーリーが生まれています。

私たちがさまざまなお客様との出会いの中から学んだことの中には、きっと皆さんの生活がさらに豊かになるようなヒントが隠れているのではないのでしょうか。


そこで、「空から学んだおもてなし術」では、客室乗務員として培ったスキルを活かして人生を輝かせている人のお話を聞きながら、空で生まれた心温まるほっこりとしたストーリーを紹介していきます。

AIの時代、どんなに便利な世の中になったとしても「私たち人間同士だからこそ生み出すことができるストーリー」がそこにはありました。

左:神宮司希望さん/右:星名亜紀(筆者)

今回、お話しを伺ったのは神宮司希望(じんぐうじ・のぞみ)さん。


神宮司さんはANAを2013年に退職後、六本木のミッドタウンで「eggcellent(エッグセレント)」という朝食を楽しむお店をスタートしました。6年間の経営で六本木ヒルズ、表参道、羽田空港、白金にお店を4店舗まで増やし、この3月に卒業。

現在は、LA発、日本の発酵文化である味噌を伝えるOmisoのスタートアップの共同創業者として、そして日本では、ビーガン&グルテンフリーのスイーツを生み出すために、試行錯誤しながら第二の起業準備を進めています。

そんな神宮司さんの起業人生の根底にあったもの、そしてCA人生から学んだこととは――?

■海外を巡り、日本に持ち帰りたいと思った文化

――神宮司さんはCA 卒業後に起業。いきなり六本木ヒルズにお店を出店し、メディアでも引っ張りだこの大人気のお店に育て上げています。もともと「eggcellent」という美味しい朝食のお店を作ろうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

日本には「朝食を楽しむ文化」がないですよね。

CAとして世界を巡っている中で、海外には当たり前にあるのに日本には浸透していないものがたくさんあるなと思い……そのひとつが朝食でした。「家族や友達と朝食を楽しむ」「最高の一日を、朝食からスタートする」という素晴らしい文化が日本にも広がるといいなと思ったんです。

eggcellent | エッグセレント every day’s excellent moments at eggcellent.

https://www.eggcellent.co.jp/

every day’s excellent moments at eggcellent. 都会の真ん中にありながらも森の中で朝食をたべているような緑溢れる空間。店内で焼き上げたイングリッシュマフィンにこだわりの卵をのせたエッグベネディクトや日本初のライスベネディクト、口どけのよいパンケーキをお届け致します。一人朝のゆったりとした時間や仲間とのパワーブレックファスト、ご家族やお友達とのお食事やお茶など、都会のオアシスのような緑たっぷりの安らぎの空間でeggcellent!な朝食・ブランチからディナーまで楽しめるカフェ。

――そんな思いから立ち上げた「eggcellent」を今年の3月に卒業され、すでに第二の起業人生に向けてスタートされていますよね。

私、CA時代には食べる事ばかり考えていて(笑)。

日本各地、世界各地に行っては美味しいものを調べ、食べ歩きばかりしていました。私にとって本当に天職ですね。「食べることが大好き! でも体型は維持したい!」という考えから、たくさん食べても体に良いものを作りたいという発想が生まれました。

――「食」が神宮司さんの大きなテーマのひとつだという印象です。その中でも、今はどのようなことを大切にされているのでしょうか?

そうですね、今回は「それぞれの違いや個性を受け入れられる世界になればいいな」という思いが根底にありまして。

海外に行くと、みんな「人とは違って当たり前」だと思っています。「人と違うことが個性」と捉えていると言えば良いでしょうか。

でも、日本は単一民族だからなのか「人と一緒がいい」という文化が強く根付いていますよね。それが完全に悪いことだとは思いませんが、「人と同じでなければならない」という社会規範の中で生きづらさを抱えている方は確実にいると思っています。

この話は食事にも通じる部分があって……。
お肉が好きな人も、ビーガン(絶対菜食主義者)の人もいる中で、一人ひとりが食という大事なシーンをもっと楽しんだり、違う嗜好や文化、背景を持つ人も一つのテーブルを囲める、そんな社会になるといいなと思っています。

■パリ行きのフライト。とあるお客様のストーリーに出会う

――私は私らしく。ここ最近の社会における大きなテーマのように感じています。そんな神宮司さんですが、機内での思い出のフライトって何かありますか?

うーん……真っ先に思い出すのが、パリ行きのフライトです。

1食目のお食事の時間が終わり、機内を暗くし、キャビンパトロール(機内の安全点検)に回っていたとき、暗い中でひとりでシャンパンを飲んでいらっしゃる男性のお客様がいらっしゃいました。

「眠れないのかな?」と少し気になり様子を見てみると、隣の空いたお席に女性のお写真が置いてあったんです。

何かあったんだなと感じた私はつい彼に話しかけていました。

するとそのお客様が「今から息子の結婚式でパリに行くんだけど……実はね、家内が半年前に亡くなったんです。彼女が一番楽しみにしていたんですけどね」とお話してくれたんです。

息子さんに対する思い。

奥様に対する思い。

奥様がどれだけ息子さんを大切にされていたかということをお話されながら涙を流されたんです。そして、「それでも、こうやってパリに行って新しい家族ができるということが心から嬉しくてね」というお話に、私も涙を堪えるのに必死でした。

機内には本当にたくさんのストーリーがあって、一人ひとりがさまざまな想いを抱えながら乗っているんだと感じました。

■「感じている」だけでは伝わらない

――限られた時間、限られた空間の中ではありますが、飛行機の中には本当にたくさんの出会いがありますよね。そのようなご経験から希望さんが学んだこと、そして今の生活に活かせていることは何かありますか?

一歩踏み込む癖ができましたね!

日本人にとっての「おもてなし」って「気持ちを察すること」ですよね。だから、私たちは人の気持ちを感じ取ることが得意なんだと思います。でも、感じているだけで行動しなければ何も伝わりません。

だから「思ったら伝える」を実行しています。先ほどのフライトのお話でも、きっと何かあるのかなと思っただけでは、何もコミュニケーションは生まれませんでした。でも、一言お声かけしたことで、お客様は涙しながらご自身の想いを私に語ってくれました。この一歩踏み出してコミュニケーションを取ることは、「褒める」ことでも同じなのかなと思います。

――たしかにそうかもしれません。

海外の方は見知らぬ人でも気軽に褒めてくれるし、褒められた方も” Thank you!”と言って気軽に受け取るんです。道端や公園、エレベーターなど、いろんな場所で、そのような会話が繰り広げられています。

でも、日本人は謙遜する文化があるから、例え褒められても「いえいえ、そんなことありません!」と全力で否定してしまうことも多いのかなと思います。

「思ったことは相手に言葉にして伝える」ぜひそこからスタートしてみたらどうかなと思います。

「見知らぬ人に話しかけて変な人!」と周りから見られてしまうこともあるかもしれません。

でも、別に周りの人に合わせる必要はないのですから。行動してみることはすごく大事。素敵だなと思うことは「素敵ですね」と伝えてみる。何かあったのかなと思ったら「どうかされましたか?」と声に出してみる。そんなことができるようになると素敵かなと思います。

取材・Text/星名亜紀
Photo/小林航平

神宮司希望プロフィール

鹿児島県生。卒業後航空会社に入社、世界中を飛び回る中で朝食の素晴らしさを実体験し、eggcellentをオープン。ブランドプロデュースを手がけ4店舗の経営に携わる。18'よりvegan/gluten free のスイーツ店WHOLESOME SISTERSを設立、LAではOmisoという味噌玉ブランドの立ち上げを行い、もっと健康的で自由な食文化を世界中に発信するWHOLESOME LIFE CREATORとして活動をスタートしたばかり。

星名 亜紀

PRプランナー「私らしい働き方」を求め、静岡&東京にてリモートワークで複業中 ✈︎

【白馬の王子さまに出会えることを夢見たCA時代 → 世界で通用する自立した女性を目指して起業した地方在住シングルマザー】 現在はPRプランナーとして、静岡に住みながら東京にあるPR会社社員をしています。 英語学習アプ...

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