不妊治療のお金の話。高額の治療費をカバーする制度も
「不妊治療にはお金がかかる」そんなイメージはありませんか?不妊治療には出ていくお金だけではなく、経済的負担を軽くする方法もあるんです。
同年代の同僚や、昔からの友達と集まったとき
「実は不妊治療を考えていて……」
という声をよく聞くようになりました。
晩婚化や女性の社会進出が進むにつれ、私たちは「不妊治療」についても考えなければいけない社会に生きています。
不妊治療は、精神面や体力面の不安の他に、“お金の不安”を抱えている人も多くいます。
実際に不妊治療を体験した人から「お金がかかる」といった話を聞いた方も多いのではないでしょうか。
決して他人事ではない、不妊治療。
今回は、お金の面から見ていきましょう。
■不妊治療の費用について知っておきたいこと
治療には個人差があるため、十把一絡げに語ることはできません。
みんながみんな何百万円の治療費が必要になるわけではないということです。
ただし、子どもを授かるために、不妊治療を前提にお金の準備をしている人は少ないため「自分が想像していたよりもお金がかかった」という人が多いのは事実。
支出面で押さえておきたいポイントは健康保険の「対象になるもの」「対象にならないもの」があることです。
■健康保険は3割負担
大前提として、私たちは公的医療保険に入っています。
公的医療保険とは、健康保険や国民健康保険などです(働き方や勤務先によって名称や細かい内容は異なります)。
この制度のおかげで、診療や投薬などの医療費は、医療費代のうち3割だけが自己負担になります。1万円の医療費なら、3000円が自己負担です。
不妊治療には、医療保険が適用になるものと、適用にならないもの(全額自己負担)があります。高額の治療は、医療保険の対象外のものがほとんどのため、治療が進むにつれてお金が必要になってきます。
保険が適用される治療
女性不妊に対する治療の対象として、タイミング指導、排卵障害に関する薬物療法などが対象です。
男性不妊に対する治療の対象として、漢方などの薬物療法などがあります。
これらは、3割負担で治療ができます。
保険適用にならない治療
人工授精や生殖補助医療として体外受精・胚移植や、顕微授精・胚移植などがあります。
不妊治療として思い浮かぶ人工授精などは、保険適用外の治療です。
平成26年度は、21人に ひとりの赤ちゃんが体外受精と顕微授精による出生児というデータもあります。
■保険対象外の費用は?
保険適用外の治療に進むと、経済的な負担が増えることになります。
厚生労働省の調査(※)では
・人工授精が1回1万円~3万円
・生殖補助医療(体外受精・胚移植、顕微授精・胚移植など)が1回20万円~70万円
という回答です。
※不妊のこと、1人で悩まないで 「不妊専門相談センター」の相談対応を中心とした取組に関する調査
■不妊治療の経済的負担を減らすには?
支払うお金ばかりに目を向けると、ちょっと息苦しくなってしまいますよね。
治療が進むにつれ、保険適用外の治療になり、高額の治療費が必要になってしまうケースが多いようです。
そのため、国や地方公共団体の補助金や、税制などを知っておくことが大切です。
ここからは、3つの制度を紹介します。
1.不妊に悩む方への「特定治療支援事業」
不妊治療に関する助成の制度です。
助成金は国が行っているものと、地方自治体独自の助成金があります。・国の助成金
対象者は、「体外受精・顕微授精以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか又は、極めて少ないと医師に判断された人」です。法律上の婚姻をしている夫婦に限られます。
対象者の中でもさらに制限があります。
それは、《所得制限》と《年齢制限》。
所得制限は、夫婦合算した所得が730万円未満なら、この補助金を受け取ることができます。
この場合の所得とは、年収ではなく、年収から諸々の費用を引いたあとの金額になります。
さらに、妻の年齢にも制限があり、43歳未満までが対象です。
初回に受けたときに40歳未満であれば助成の回数は通算6回まで。
初回が40歳以上43歳未満なら通算3回までと年齢に応じた内容が定められています。
一回の助成金額の限度は15万円。
凍結胚移植や、中止したものについては7.5万円です。
・地方自治体の助成金
地方自治体独自の助成金があるケースもあります。
「住んでいる地域名 不妊治療助成金」などのキーワードで検索すると、自分が住んでいる自治体の情報がでてくるので一度確認しておきましょう。
地方自治体の助成金は、自治体ごとに違います。
年齢制限や所得制限が設けられてる場合もありますし、年齢制限や所得制限が緩和されている場合もあります。
・申請の方法は?
国(窓口は各都道府県)・病院・市町村から申請に必要な書類を入手して、所定の事項を記載して提出します。
病院からは、治療の領収書や治療の明細、証明書などを発行してもらうことになります。
あらかじめ内容を確認した上で、治療を始めると安心ですね。
■医療費控除
医療費控除とは、所得税と住民税に関わる制度です。
医療費控除を利用すると、所得税の還付と、住民税が減額されます。
不妊治療のほかにも、病気やケガの医療費や薬などの費用の合計が10万円を超えると対象になります。
控除の金額は、
支出した医療費の額-保険金等の受取額(補助金なども含む)-10万円
(※総所得金額が200万円未満の場合は、総所得金額×5%)
医療費控除を受けるためには、確定申告と支払った医療費の領収書などが必要になります。
病院や薬局で受け取った領収書は必ず保管してくださいね。病院までの交通費も対象になりますよ。
■結婚子育て贈与
この制度は、両親や祖父母からお金をもらうとき(贈与)に税金がかからないものです。
正式名称は「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」といいます。
平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間の制度で、この期間中に20歳以上50歳未満の人に対して、両親や祖父母から、結婚・子育て資金(不妊治療もOK)にあてるためのお金をもらって、所定の手続きをすれば、1000万円までが非課税になります。
通常、両親や祖父母からお金をもらう場合、110万円以上受け取ると贈与税を支払うことになります。
それがこの制度を利用することで、「結婚・子育てに関わる費用の贈与は、1000万円までなら税金いらないよ」となるんです。
結婚・子育て費用として、不妊治療の費用が含まれています。
この制度は、結婚・子育てが目的なら自由にお金のやりとりができるのではなく、金融機関(主に信託銀行)で所定の手続きをして、はじめて有効になります。
手続は、そこまでむずかしいものではありませんが、贈与を受けた後に、お金の支払い先の領収書が必要になったりと少し手間がかかるのは事実。ただし、お金が原因で不妊治療を躊躇するという人もいるため、少しの手間をかけても、有益な制度だと思います。
■女性の生き方いろいろ
助成金には、年齢制限があります。
35歳子なしの筆者は、その現実を突きつけられると苦しくなります。
まるで「あなたはどうするの?」と聞かれているようです。
先のことはわからないけれど、制度を知っているだけで少しは安心できる。
もし不妊治療を受けることがあれば、これらの制度を上手に利用しようと思っています。
女性の生き方はいろいろです。みなさんも、お金の話、参考にしてみてくださいね。