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結婚、出産をしない生き方を選んだ私

子どもを産む、産まない、結婚する、しない。それらはすべて個人の選択に委ねられていて、外野があれこれ口を挟んでいいトピックではありません。すべての生き方は尊重されるべきものだから。Drまあやさんが「コンプレックス」をテーマに書く連載、今回は「コンプレックスが生んだ生き方――結婚・出産をしない選択」をお届けします。

結婚、出産をしない生き方を選んだ私

私は、今まで結婚したこともなく、子どももいません。これは、私が人生の選択をしてきた結果です。

占いをしてもらう機会が何度かありました。いくつかある種類の占いでいつも言われるのは、「あなたは、孤独を背負って生きていく人間なんですね。家庭運に恵まれてないんです」みたいなこと。やっぱりか、と納得させられたりします。

いろいろなメディアや自著などでも述べてきましたが、中学校1年生で「医者になる」目標を掲げて、それを成し遂げることができ、いまでも脳外科医として働かせていただいています。

「医者になる」決断をする前から、結婚すること、そして子どもを産むことは、私の人生の中にないだろう、と思っていました。結婚も子どもも望まないタイプ、ということになります。

結婚したくない理由は、私自身の大きな弱点ですが、苦手な家事全般を行う自信がまったくなかったから。そして、誰かと時間を共有して過ごすことが考えられなかった、というのも大きいです。

仕事から帰ってきて、誰かが家にいることに少し抵抗がありました。これは、おそらく今までの家庭環境が影響しています。「家族とは何か?」。自分の中で「家族を作って過ごす」ことに幸せな未来が見えなかったのです。

■子どもにはコンプレックスで苦しんでほしくない

以前、私はあるテレビ番組に出演したときに、「ブサイクの遺伝子は残したくない、絶やす」とコメントしました。原因は、ズバリ「コンプレックス」です。『DRESS』の連載2回目でも「コンプレックス」について書かせていただきました。

コンプレックスがあっても考え方次第で幸せになれる【Drまあや】

https://p-dress.jp/articles/5953

誰にでもコンプレックスはあるもの。ただ、コンプレックスに感じる事柄や悩みのレベル(度合い)は人それぞれです。コンプレックスとどう向き合うと良いのか、コンプレックスへのネガティブな気持ちを軽くするにはどうすれば良いのか。コンプレックスを打ち明けられる側の対応は。Drまあやさんが「コンプレックス」をテーマに書くコラムです。

この「コンプレックス」が私の中でどうしても払拭されません。見た目のこと、そして能力の問題。こういったコンプレックスが影響して、どうしてもまだまだ自分のことが好きになれないのです。

こんな状況で子どもを産み、自分の遺伝子を持つ子が本当に幸せに暮らしていくことができるのか? と考えたときに、私のようにコンプレックスで苦しむ子を作り出すのは申し訳ない気持ちになります。

この考えに、賛否があることは当然です。「ブサイクはこの世に生きていてはいけないのか?」もちろんそんなはずはありません。「ブサイク」でも幸せを勝ち取っている方々もたくさんいらっしゃいますし、しょせん自分の気持ちの持ちようで、心を磨き、人間力を高めることで、そんなことは気にならなくなることもあるでしょう。

見かけに頼らずとも、幸せに生きていけることを子どもに教え、子どもが「見た目のコンプレックス」を持たないように育ててあげれば良いと思うのです。

そして、学生時代にとにかく医学部に行くために勉強をがんばりましたが、能力の限界を感じる日々でした。優秀なライバル、頭のいい人々を間近で見ていると、自分がどんなにがんばっても「天才」には追いつけない、と感じてしまうのです。こうして能力的な面でもコンプレックスを抱くようになりました。

私自身がこうしたコンプレックスという壁を乗り越えられずにいるため、はたして、自分の子どもがコンプレックスを抱かぬように育ててあげることができるのか? 日本社会において、美醜による損得を考えると、やはり私と同じようにコンプレックスを抱えてしまうのではないか? 受験勉強をしている我が子に余計なことを言って、傷を作ってしまうのではないか?

そんな風に考えてしまいます。子育てには、どうしたって母親の影響をたくさん受けるわけで、安易な考えで子どもを作って、自分と同じように苦しむ我が子を見たくない、と思ってしまったのです。

■一人ひとりの生き方が尊重される時代

結婚して、子どもがいたら――。そんなことを考えたことがなかったですなぁ。

今年43歳になる私は、子どもがいない現状に後悔はありません。高校を卒業して以来、ずっとひとりで暮らしています。脳外科医として働きながら、新たな目標「デザイナー」としての道を進んでいます。

結婚して、子育てをしていたら、この生き方は難しかったと思うのです。紆余曲折ありますが、自分自身を磨く、自分のための人生として、現時点で満足しています。

いろんな観点から、この考えが正しいのか否か、あるでしょう。たとえば、女性として生まれてきて、子どもを産むということは、動物学的には重要なことなのだろうと思います。自然の流れに沿って、子どもができる身体に変化したのちに、相手を見つけ、性交渉をし、子どもが生まれ、育てて、世に放つ。

母性が生まれ、子育てを通して、ひとりの人間として成長していく部分も大きいことでしょう。しかし、個々に自由な生き方を考えられる人間は、あえてひとりで生きる人生を選択することができ、自分のしたい生き方を追求できます。

もしくは、結婚しても子どもを産まない選択、妊娠しても結婚せず、シングルマザーとしての生活を選択することも可能。身体的な問題で妊娠・出産できない場合もあります。そして、選択したことやその状況を昔に比べると尊重される世の中になってきています(まだまだ問題はありますが……)。

ひとりの人間としては、誰もが自由に生きたらいいだろう、と思いますが、世の中全体として考えると、日本はいま少子化問題に直面しています。子どもを産みたくても出産後の環境を考えてしまい、諦めている方も多いでしょう。自分の生き方を肯定している一方で、私もこの少子化問題を起こしているひとりなんだ、と思うと申し訳なさでいっぱいになることもあります。

自分の人生ではあるものの、社会の中で生きているわけで、私のように子どもがいない人間が、子育てをしている皆さんに何かできることがあるのか? 「社会で子どもを育てる」ことにどう参画できるか?

今の時点で頭に思い浮かぶのは、
・女性が仕事をしながら、結婚や出産、子育て可能で、周囲の人々も無理なく協力できる仕組みを作ること
・「子育て支援に確実に使ってもらえる」お金の制度を作ること
あたりでしょうか。

子育て支援の仕組みとして、自治体(税金)で行われているものはありますが、2人目、3人目と産みたい方のための取り組みが、フランスみたいにもっとあってもいいのかなと思います。

まだ考えが浅いかもしれませんが、社会で生きている限り、子どもがいてもいなくても、考えたいトピックのひとつです。

Drまあや

脳外科医兼デザイナー/1975年東京生まれ・岩手県北上市育ち 岩手医科大学医学部卒業後、慶應義塾大学脳神経外科医局入局。2010年ロンドンのCentral Saint Martins に留学し、デザインの勉強する。帰国後、...

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