『DRESS』4月特集は「愛すべき、私のややこしさ」。多くの人はなんらかのコンプレックスを抱えて生きています。コンプレックスを意識しすぎるとつらく、しんどいものです。でも、それをうまく受け入れ、付き合っていけば、少しだけ生きやすくなるはず。本特集ではコンプレックスと向き合うヒントをお届けしていきます。
美しさなんて所詮「誰かが決めたもの」 身体のコンプレックスとの付き合い方
周りからの評価によって、自信を持ったり、落ち込んでしまったり……他者から与えられた積み重ねがコンプレックスになるとしたら――身体、つまり外見のコンプレックスを抱えている人は多いかもしれません。 今回は、これまで数多くの女性の身体と向き合ってきたAV監督・鈴木リズさんが、こうした劣等感との付き合い方を教えてくれます。
人の体は十人十色。
みんなそれぞれ違うし、そこには美醜なんて存在しないと思いたい。
けれども、女性は男性に比べて見た目で判断(採点)される場面を多く経験します。
それがネガティブな要素になってしまうことも多々ある……。
努力や行動で取り去ることができるものもあれば、できないものもありますが、大切なのは「コンプレックスがあるから」という理由でふさぎこんでしまう内面にさよならを告げること。
女流AV監督として女性の剥き出しの姿を数々見てきた私が、「体のコンプレックス」との付き合い方を話してみます。どうぞ最後までお付き合いください。
■絶対好きな人がいる! 嗜好の多様性を知る
AV業界に入って本当に驚きました。
性嗜好において言えば、100パーセントどんな女性にもファンが生まれることを知ったから。
例えばあなたがコンプレックスだと感じているのが「肩幅」「二重アゴ」「背中の肉」「太もも」だとしても、そこが好きだと言う人は必ずいるのです。
・声がイヤ
・痩せ過ぎがイヤ
・左右非対称の目の大きさがイヤ
といった、メディアによって作り出された「多勢の美」から外れてしまった「自分の嫌いなところ」があなたにも存在するかもしれません。
そもそも、この「多勢の美」の定義としては、顔のパーツが整っていて均等に配置されていることだとか、肌が綺麗であることだとか、太り過ぎず痩せ過ぎていないことだとか、ずいぶんと勝手なことを言われ放題。
たしかにギリシャ彫刻やルノワールやダヴィンチの名画に見る美人は、上記のような姿形をしているものがほとんどで、現代に至るまで大勢の人がそれを美と呼んできました。
ただ、冒頭で述べたように、彫刻や名画のような洗練された美を欲することのない人々も確実に存在するということを知り、そしてそれを強く信じてほしいのです。
■セクシー女優とコンプレックスの付き合い方
セクシー女優の方々は、コンプレックスとの付き合い方がもっとも上手いのではないかと、日々感じています。
彼女たちもスターダムに駆け上がるまでには本当にさまざまな苦難と戦ってきました。
見た目がもっとも重要視される世界です。
彼女たちはこれまで売れてきた先輩方のマネをし、自分もそこに近づこうと努力します。
しかし、ふたを開けてみると長く人気の高い女優たちはコンプレックスを強みにしてきた人たちばかり。
お尻の大きい子
ビックサイズの子
口の大きい子
身長の低い子
人見知りの子
その違いを認め、「私はこれで売っていく!」そう決意した人はとても強いのです。
「コンプレックスに感じている部分を強みに変える」
と言ってみても、難しいと感じる人も多いでしょう。
しかし、彼女たちは勇気を持ってコンプレックスである部分もさらけ出した途端、自分のマイナスポイントと思っていた部分にこそ称賛を受け、さまざまな人たちに「君のその部分が一番好きなんだよ」と肯定されていきました。
その結果として、自身のコンプレックスを他の誰とも被らない自分だけのチャームポイントに変えていくのです。
SNSを駆使してアピールしてみるのも
目に付くのは雑誌やテレビで見かける人気の女優やモデルがほとんど。そして私とその人たちとの差は開いていくばかり……。
こうした思考こそがあなたをネガティブの渦に陥れていく罠です。
けれど鏡を見て「ここさえどうにかなれば」と欠点扱いされているあなたのコンプレックスが大好きな人は確実に存在します。
それでは、なぜあなたにその実感がないのでしょう。
おそらく「そこが好き」だと伝えられた経験がない、もしくは少ないことが挙げられます。荒療治だと感じる方もいるかもしれませんが、まずはあなたがコンプレックスだと感じる部分を他者に発信することから始めてみてはいかがでしょうか。
見た目の評価を過剰に他者に求めることは、結果的にコンプレックス意識を肥大化させることもありますが、自分のチャームポイントを支持してくれる人がいるという事実は、それだけで自信の継続や再沸騰になります。
信頼できる友人に直接話すのでも、SNSで発信するのも良いでしょう。
SNSを駆使すれば一挙にカリスマやインフルエンサーと言われるような人になることも現実的に可能です。ただ、ネットを使って有名人になれということではありません。
大勢の目に触れる機会が多くなれば、必ずそれに対して良いと認めてくれる人が現れます。
そして知ってほしいのです。コンプレックスは誰にも負けないチャームポイントになるということを。
■コンプレックスとは? 誰にも負けない美とは?
もうひとつ知っておいてほしいこと。
それはコンプレックスという檻の中にいつまでも自分を閉じ込めないこと。
人の劣等感とはキリのないものです。
コンプレックスを解消するために努力し成長することは人間として非常に素晴らしいことですが、それでもどうしても解消できないこともあります。
その時ただ下を向き落ち込み、自身の不甲斐なさにふさぎ込むだけではいけません。
これからの人生、一番長い付き合いをしていくのは親友でも、恋人でも、あなたの子どもでもなく、あなた自身です。あなたがあなたを嫌いになってしまってはこれから先ずっとあなたのことを嫌いな人と死ぬまで一緒にいなくてはならなくなります。
「どうせブスだから……」という寂しい自己規定を持ってしまう夜もあるかもしれません。その気持ちを抱くことは悪いことではありません。ですが、見た目を作り出すのは、肌の透明感とか、スラっとした体型とか、髪のツヤとか、そういったものだけなのでしょうか?
コンプレックスを超える絶対的な美とは自分に自信を持ち、精神的に余裕のある人だけが持つことができる華やかなエネルギーであると、私は思います。
あなただけの「オーラ」はなにがあっても揺るがず、誰に負けることもありません。まずは、劣等感に支配されない自分を持つこと、そして、そんな自分を好きになってくれる人を大切にすることが、結果的にコンプレックスと上手く付き合っていくコツになるのではないでしょうか。
こちらのページで特集「愛すべき、私のややこしさ」を公開していきます。ご自身が抱えるコンプレックスにお悩みの方、向き合い方を模索したい方にとって、少しでもお役に立てると、編集部、著者一同心より願っています。