事実婚という選択

"恋愛はしたい、けれど結婚はしない"そんな生き方を選ぶ女性が増えています。結婚は恋愛の延長線上にあることが多いけれど、恋愛の延長線上にあえて結婚を置かない。そんな生き方とは。

事実婚という選択

“恋愛はしたい、けれど結婚はしない“

結婚は恋愛の延長線上にあることが多いけれど、恋愛の延長線上にあえて結婚を置かない。

そんな生き方の選択肢として増えている事実婚。実際に事実婚という生き方を選んだひとりの女性に取材しました。

■20歳以上年上の彼に惹かれたのは、彼女が二十歳の頃

「彼とは20年の付き合いでした。入籍はしなかったけれど20代で知り合って、彼が亡くなるまで事実婚という関係でした」

事実婚だった彼を亡くしたA子さんは現在40代後半。その彼は20歳以上年上だったそうです。彼と事実婚の関係を続けていたA子さんが40歳になった年に、彼は60代という若さで亡くなりました。

「二十歳のときに彼と知り合いました。彼は本当に大人で優しい人で、私から猛烈にアプローチして付き合うことになったんです」

A子さんが小学2年生の頃に彼女の両親は離婚しました。原因は父親の浮気です。

父親がいない家庭環境は、A子さんの恋愛観にも大きな影響を及ぼしたそうです。

「初恋は中学校の先生です。その頃から同級生の男の子に恋愛感情を抱けませんでした。

年上が良くて、年齢が離れている男性に対してすごく惹かれました。私が男性に求めていたのは包容力で、きっとどこか父親的な存在を求めていたんだと思います」

■なぜ事実婚を選んだのか

A子さんは彼とアルバイト先で知り合いました。

「お客様として来た彼に最初はナンパされたんですね(笑)。20歳以上離れている彼に、私の方がすぐに夢中になり、私から猛烈にアプローチして付き合うことになりました。当時、彼は離婚したばかりで前の奥さんとの間に子どももいました。結婚に対してネガティブなイメージしかなかったようで、付き合う時に“結婚は誰ともしたくない”とはっきり言われました。私も自分の両親を見ていて結婚に対して良いイメージは持っていなかったので、結婚をしない前提で付き合うことにしたんです」

それからほどなくしてふたりは同棲をスタートしました。入籍はしていないものの、彼は彼女のことを自分の“奥さん“として紹介し、彼女も彼を“旦那さん“としてそれぞれの友人に紹介していました。A子さんの母親も最初は反対していましたが、ふたりの関係を少しずつ認めるようになったそうです。

■事実婚で良かったこと、後悔したこと

「入籍をしない事実婚で良かったのは、彼にずっと恋していられたことです。

何年経ってもお互いが一番好きな人でした。結婚をした友達の多くが、年を重ねるにつれて夫婦仲が冷めていく関係を見ていると、事実婚だからこそ、程よい緊張感があって恋愛感情が冷めることがなかったのではと思っています」

確かに恋愛の賞味期限は5年ともいわれる中、20年以上も恋人同士の甘い関係を維持することはとても難しいものです。入籍して結婚をするということは”家族“になるということ。結婚後も男と女でい続けるのは、カップル文化が希薄で、友達文化が強い日本ではより困難です。そんな中、男と女の関係でいられたことを私もうらやましく感じます。

では事実婚で後悔したことは?

「子どもですね。子どもを作るとなると事実婚のままではいられないかなと思って、結局彼との間には子どもを作りませんでした。もう妊娠と出産は難しいかなと諦めています。彼が亡くなったとき“ひとりになっちゃった”と本当に孤独でした。そのときに子どもを作っておけばよかったと後悔しました」

■現在も事実婚を続けているA子さん

彼が亡くなってから3年後にA子さんは彼を亡くした悲しみからやっと立ち直り、昔からの知り合いだった同じ40代後半の人と付き合うことになりました。

「今ですか? 今は幸せです。彼が亡くなったとき、もう一生恋はしないなと思いました。

でも、以前から友達だった今の彼と何となく付き合うことになりました。彼は亡くなった彼のこともよく知っています。なのでふたりで“いい人だったね”と亡くなった彼の話をすることもあります。今の彼とはふたりでゆっくりと年を重ねていきたいねと話しています。もちろん、若い頃のような熱くなるような恋ではありませんが、静かで穏やかな恋愛に幸せを感じます」

現在の彼とも事実婚という関係です。この彼とも結婚はしないつもりとA子さんはきっぱり断言しました。

「今の彼もバツイチでお子さんがいるんです。もう社会人で大きいのですが、相続のことを考えて入籍はしないことにしました。私自身も仕事を持ち経済的に自立していますし、先立った彼が、生前から自分が亡くなったときのことを考えて遺してくれたものもあるんです。だから万が一、今の彼に何かあっても生きていけます。

この年齢で入籍して、彼のお子さんたちから遺産狙いのような目で見られるのも嫌ですし、彼ともこのまま事実婚の関係でいたいとはっきり伝えてあります」

■もし生まれ変わったらまた事実婚を選びますか? A子さんの答えは……

事実婚という選択をしたA子さん。

最後に聞いてみました。

もし生まれ変わってもまた事実婚という生き方を選びますか?

「……今度は結婚したいかな。事実婚を選んで後悔はしていませんが、結婚を一度もしなかったので、今度生まれ変わったらしてみたいですね。そして子どもを持ちたいです。女として充実した人生だとは思いますが、母にとして生きることが叶わなかったので、母になってみたいかな」

■事実婚という生き方が、ひとつのスタンダードになる時期なのかもしれない

事実婚という生き方を選んだA子さん。40代後半とは思えないほど、艶やかで色気があり、魅力的な女性です。もちろん結婚してもお互いに恋愛感情を失わず、恋人のような関係の夫婦でいることは可能です。でも、まだまだ自分自身のことや周りを見回してみると、それがとても難しいことのように感じます。

日本で事実婚はまだマイノリティー的な生き方と評されがちですが、これからは女性の生き方のひとつのスタンダードとして認知される時期になってきているのかもしれません。

もしA子さんのように一生女として愛されたいなら、女として誰かを愛したいなら、事実婚という生き方もありなのかもしれない。そんな風に感じました。

西澤 史子

コミュニケーションコンサルティング株式会社ループ 代表取締役社長 婚活業種の事業立案・ブランディング・PR・アライアンス・社員およびスタッフ育成等のトータルサポート・コンサルティング、コミュニケーション教育、女性向けサ...

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