フィレンツェの街歩きでは絶景のバールや、レストランなど、ぜひご自身で体験していただきたい魅力的なスポットがたくさん。ミラノ在住の河見恵子さんにレポートしていただくフィレンツェの旅、後編です。
魅惑の街フィレンツェの旅 前編 〜ミラノ通信#23
古いものをきちんと残しながらも、上手に進化している花の都フィレンツェ。大聖堂や美術館から、美味しいものが揃うメルカートまで、ミラノ在住の河見恵子さんにレポートしていただくフィレンツェの旅、前編です。
■ミラノから列車で1時間40分。古都フィレンツェへの旅
フィレンツェといえば、ルネッサンスの花開く華やかなりし古都。今も街中すべてが美術館のような、中世の面影を残すトスカーナの州都に、季節問わず世界中から観光客が押し寄せます。
街がコンパクトなサイズなので、ぶらぶらと歩いて巡るのにちょうど良く、ふと思い立って訪れることもしばしば。かつてはミラノから列車で2時間40分かかったけれど、ボローニャ駅が地下に展開したことにより1時間40分と大幅に短縮されました。
また、数年前からフェラーリ社の「イタロ(.italo)」が就航し、ヨーロッパで初めて民間企業が高速鉄道に参入、従来の国鉄「トレインイタリア(Trenitalia)」と価格の面でもサービスも競い合い、利用者にとっては選択の幅も広がって嬉しい限り。
時間帯によっては片道24ユーロくらいから、ひとつ上のクラスを選択しても5〜10ユーロの差額で広々したレザーシートに落ち着き、ウェルカムドリンクサービスなどが受けられます。
イタロ(.italo)のプリモクラスは、イタリアの誇る有名家具メーカー、ポルトローナフラウ(Poltrona Frau)のレザーシート。車体はフェラーリのイメージ? 真っ赤!
■雰囲気たっぷりの駅舎
駅舎もヨーロッパならではのターミナルステーション、ドラマティックなことが起こりそうな予感たっぷり、旅情たっぷり。
一大観光地なだけに、駅の周りには値段だけ高く落ち着かない店もあるので、到着すると駅舎の中にあるバールでカプチーノとブリオッシュの朝食をとりながら旅の計画を練るのが恒例。
天井の高い空間で、親切なバールマンや出張ビジネスマン、のんびりした観光客に混じってホッとひと息入れる大切な時間です。
フィレンツェ駅にある穴場バール、正面ではなく、脇にひっそりと
フィレンツェはどこを切り取っても絵になる、美しい街並みです。街の真ん中に川が流れているのも、素敵な街の条件、どこかノスタルジックな情緒が漂います。
夕暮れのアルノ川、川の流れる街はノスタルジックで情緒がある
■フィレンツェの街並みを一望できる大聖堂
花の都と呼ばれるフィレンツェ、優しいフォルムを描くドゥオーモのクーポラは街なかのどこからでも眺められ、見るものに惜しみない美と安心を与えてくれます。
まずはフィレンツェの象徴、大聖堂にご挨拶。天気のいい日には、大聖堂か隣接する塔に登ってみるのも一興です。
トスカーナ特有のテラコッタ煉瓦屋根が続く美しい街並みが眼下に広がるさまは、いつ見ても感動的。ミケランジェロが眠るサンタ・クローチェ教会や、ピッティ宮殿、メディチ家一族が眠るメディチ家礼拝堂など、フィレンツェのシンボル的な建物の位置関係が手に取るようにわかります。
サンタマリア・デル・フィオーレ・フィレンツェ大聖堂のクーポラ
ジョットの鐘楼からの眺め
■フィレンツェのメルカートへ
ドゥオーモ広場から北へ数分行ったところに、フィレンツェのメルカート、巨大な屋根付き中央市場があります。建物はミラノのヴィットリオ・エマヌエーレ二世・ガレリアを設計したジュゼッペ・メンゴーニ。
かつては食料品専門市場でしたが、改装後は1階に各種食料品の市場、2階はすべてフードコートとなり、朝から夜までオープンしています(1階は14時まで)。
フィレンツェ風Tボーンステーキをひとりでも注文できるビステッカ専門店や各種パスタ専門店、トスカーナワインを扱うエノテカ、こちらもフィレンツェ名物臓物の煮込みパニーニ店などが軒を連ねています。
フィレンツェ中央市場、2階のフードコート
■生ハムやワインなど、トスカーナ各地の選りすぐりの逸品がずらり
1階でいつも立ち寄るバローニ(Baroni)は、トスカーナ各地から選りすぐりの逸品が揃う老舗。トスカーナ地方の生ハムやサラミ、チーズに始まり、ワイン、グラッパ、熟成度の異なる多種のバルサミコ酢、特製ホワイトバルサミコ酢、トリュフ塩やトリュフオイルなどがズラリ。
世界的に有名なキアナ牛Tボーンステーキの産地だけに、本格的な肉用ナイフなども揃います。私のお気に入りは、キャンティ地方パンツァーノ村にあるクラシックの流れる有名な肉屋、チェッキーニ特製のハーブ塩。
その名も「キャンティの香り(Profumo del Chianti)」。フィレンツェから1時間半のキャンティ街道にあるパンツァーノまで行かなくても調達できるので、この20年、食卓に欠かしたことがありません。
中央市場1階の高級ガストロノミア、バローニ(Baroni)、選りすぐりの食材が揃う
フィレンツェに長期滞在したり、アパートメントを借りたりして過ごすときに、こちらの中央市場で野菜や果物、各種切りたての生ハム類、パスタや肉を調達して料理するのもおすすめです。素材がいいので、切るだけ、並べるだけ、焼くだけで簡単に美味しいテーブルが整います。
■修道院を改装した、サン・マルコ美術館
市場からさらに北上、ぶらぶら歩いて15分ほどのところに、サン・マルコ美術館があります。たまに訪れたくなるこちらは、元修道院を改装したこぢんまりとした美術館。
階段を登り、フラ・アンジェリコの受胎告知が迎えてくれる2階は、光の入り方まで美しい図書室や、修道士の暮らしていた小部屋もそのままに、静かな時間が流れています。
サン・マルコ美術館、受胎告知
修道士の部屋から中庭を望む
光の入り方まで美しい、図書室
街の中心地に戻る途中のメディチ・リッカルディ宮殿も、落ち着いた雰囲気の中にかつての栄華を思わせる空間。
ウフィッツィ美術館やピッティ宮殿も素晴らしく、何度でもゆっくり訪れたい名所ですが、こちらの宮殿やサン・マルコ美術館は、たまにふらりと散歩がてら立ち寄りたい、お気に入りの場所です。
メディチ・リッカルディ宮殿
■人気のウフィッツィ美術館は夕方もおすすめ
ウフィッツィ美術館は、今では予約しておかないと入れないほどの混雑で、建物の外は常に長蛇の列ですが、何度目かの訪問なら、夕方から立ち寄るのもいいかもしれません。
並ばずに入れてお気に入りの絵画を鑑賞、ポンテヴェッキオの美しい夕暮れの光景や、夕暮れ時の光に包まれた館内は、また違った表情を見せてくれます。
夕暮れ時のウフィッツィ美術館
ウフィッツィ美術館から見える、ヴェッキオ橋とアルノ川
大好きなフィレンツェ散歩。次回は、サンタマリアノヴェッラからアルノ川に向かい、トラットリアや絶景バールなどをご紹介します。