古いものをきちんと残しながらも、上手に進化している花の都フィレンツェ。大聖堂や美術館から、美味しいものが揃うメルカートまで、ミラノ在住の河見恵子さんにレポートしていただくフィレンツェの旅、前編です。
魅惑の街フィレンツェの旅 後編 〜ミラノ通信#24
フィレンツェの街歩きでは絶景のバールや、レストランなど、ぜひご自身で体験していただきたい魅力的なスポットがたくさん。ミラノ在住の河見恵子さんにレポートしていただくフィレンツェの旅、後編です。
■フィレンツェの旅、後編
フィレンツェ街歩き、前回はドゥオーモから北上お散歩ルートにお付き合いいただきました。今回はサンタマリアノヴェッラ駅からヴェッキオ橋にかけて、レストランや絶景バールなどをご案内していきます。
街全体が「天井のない美術館」と呼ばれているフィレンツェ、駅からサンタマリアノヴェッラ教会へ向かう道の壁にも、美しいモチーフが彫り込まれている様は、お見事。そこかしこにルネッサンスの風を感じる優雅さをたたえています。
サンタマリアノヴェッラ教会へ通じる壁
■ドーム型天井の建物が多く残るフィレンツェ
ミラノと違って第2次世界大戦で空襲を受けていないフィレンツェには、中世のままの建物が残り、美しく調和のとれたパラッツォの中はアーチを描いたドーム型天井が多いのが特徴です。
住居、ホテル、そして店舗やレストランもこのドーム型天井が多く、天井の高さと相まって独特な雰囲気を醸しています。
エルボリステリア(Erboristeria)と呼ばれるハーブを用いた薬局は、フィレンツェが発祥の地。日本にも紹介されているサンタマリアノヴェッラ薬局のフィレンツェ本店は、店舗とは思えないような優美な空間です。
サンタマリアノヴェッラ薬局、優美な雰囲気の店内
■フィレンツェを訪れるたびにファンになる、老舗トラットリア
ランチタイムには、フィレンツェらしい老舗トラットリアがおすすめです。
歴史ある空間に、ベテランのカメリエーレがいるのがイタリアの老舗のいいところ。落ち着いた物腰できびきびと、目配りとユーモアの効いた心地よいサービスをしてくれます。
数あるトラットリアの中でも、大好きな店がいくつかあり、リピートして通う度にますますファンになっていきます。
ポンテヴェッキオを渡りすぐ右、ボルゴ・サン・ヤコポ(Borgo S. Jacopo)は有名なホテルやレストランが軒を連ねる通り。しばらく進むと左手に見えてくるトラットリア・カミッロ(Trattoria Cammillo)はフィレンツェを訪れる度に通いたいレストランです。
ドアを開けると、こぢんまりとした入口の部屋と、それに続く2部屋があり、心地よい活気とざわめきに包まれています。
Trattoria Cammillo心地よいざわめきに美味しいものへの期待が高まるエントランス
典型的なトスカーナの内装、丸いドーム天井にランプが映える
ここは何をオーダーしても美味しい! の一言ですが、この日はカルチョーフィのフリッタータ(薄手の卵焼きのようなもの)をつまみながら、フレッシュなポルチーニ茸のパスタ、そしてトスカーナ名物キアナ牛のタリアータ(塊で焼いて薄切りしたもの)を。
パスタはシンプルながら、家庭では再現できない絶妙な味加減。肉も日本と違って霜降りではなく赤身ですが、噛むほどに旨味がジュワッと広がる、しっかりとした美味しさ、オリーブオイルと塩胡椒だけでいただきます。
もう1店は、ポンテヴェッキオの手前、川沿いに左に曲がるとすぐ、細い小径沿いにポツンとブーカ・デッロラフォ(Buca dell'Orafo)の看板が。ドアを開けるとすぐ急な階段が数段あり、下に降りると小さな空間が。その名の通り、ブーカ(Buca)穴倉のようなレストランなのです。
春先なら、ぜひともフレッシュグリーンピースのパスタをどうぞ。こちらもシンプルながら、簡単なようでなかなか真似のできない感動的な美味しさです。
穴倉のようなレストラン、Buca dell'Orafo
■職人の作る革製品やアクセサリー、アンティーク店も
食後には、イタリア全土に出店するチェーン店ではなく、小さな個人商店を覗くのがフィレンツェのお楽しみ。革製品、アクセサリーなど、職人が丁寧に一つひとつしっかりと作っている、そんな逸品に出会えます。
ファッションの店も、ふだん使いにセンスのいいものが見つかる確率高し。ミラノのセレクトはとんがりすぎている傾向があるので、ここでモダンすぎずクラシックすぎない、絶妙に上品なバランスの思わぬ掘り出し物に遭遇することも。
アンティーク店もちょこちょこあるので、大物家具から小物まで、いろいろ見て回るのも楽しいひとときです。
革製品の工房。職人がすべて手作業で丁寧に作っている
■デパートの屋上で、ワインを1杯
ぶらぶらそぞろ歩きながら休憩するのに、最近では川沿いのテラスなど、気持ちのいいところがたくさんありますが、私がよく行くのはリパブリカ広場にあるデパート、リナシェンテの屋上。天気のいい日は日向ぼっこがてら、ドゥオーモや遠くにそびえる山々を眺めながら1杯のワインをいただくのが至福のときです。
夕暮れ時には、アルノ川沿いを歩いていると素晴らしい景色に出会えます。
刻々と変わる空の色は息を呑む美しさ、川に夕日が沈んで行くのを眺める人々、川沿いの欄干に寄り添う恋人たちまで絵になる光景です。
アルノ川の夕暮れ
夕暮れを眺める恋人たち
■魅力でいっぱいのフィレンツェの旅
高いところからの眺めなら、ウエスティン・エクセルシオールホテルの屋上テラスのバールが人気のスポット。遮るものなく、ポンテヴェッキオから遠くはフィレンツェ空港に発着する飛行機まで眺められ、暮れゆく空の色、雲の流れを見ているとドラマティックな美しさに時を忘れてしまいます。
川の流れる街は、どこかノスタルジックな雰囲気でロマンティック。今まで訪れた川の流れる街は、今もその美しさが心に残ります。
フィレンツェの魅力は数多くあり、とても書ききれません。皆さん是非、ご自身の目で感性で、その魅力を発見してきてくださいね。
チンクエチェントのある風景
レストラン
[Trattoria Cammillo]
Borgo S.Jacopo,57r
055-212427
[Trattoria Buca dell`Orafo]
Via de Girolami,28r
055-213619