世界中のセレブを魅了する靴の秘密。『マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年』- 古川ケイの「映画は、微笑む。」#33
”世界で唯一走れるピンヒール”といわれる「マノロ・ブラニク」。「セックス・アンド・ザ・シティ」の主人公キャリーの愛用シューズとして人気に火がつき、世界中の女性たちを熱狂させてきました。そんな”魔法の靴”を作り続けてきた、マノロ・ブラニク本人に迫るドキュメンタリー。クリスマスに美しいシューズ作りの裏側を覗いてみませんか?
◼︎「〈マノロ〉の靴はセックスよりも良い」
あのマドンナをして「セックスよりも良い」と言わしめたシューズブランド〈マノロブラニク〉。DRESS読者のみなさんなら、知っている方も多いかと思います。
マノロの靴が一躍有名になったのは、ご存知大人気TVドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』。サラ・ジェシカ・パーカー演じる靴フェチの主人公のキャリー・ブラッドショーが、この靴の大ファンという設定から、世界中でセンセーションを巻き起こしました。
キャリーが強盗にあった際に「これ(マノロ)だけは盗らないで」と懇願したシーンや、恋人のミスタービックにマノロの「ハンギシ(宮廷を意識したデザインの靴)」を履かせてもらってのプロポーズなどのシーンは特に有名です。
本作はそんな〈マノロブラニク〉の生みの親である、マノロ・ブラニク本人に迫ったドキュメンタリー。美しいシューズ作りの裏側を覗くことのできる必見の一本です。
◼︎『マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年』ストーリー
”世界で唯一走れるピンヒール”といわれるパーフェクト・シューズ「マノロ・ブラニク」。
同ブランドを立ち上げ、世界でもっとも偉大なシューズデザイナーとして知られるマノロ・ブラニクは、自然豊かなスペインの孤島・カナリア諸島のサンタクルスで、チョコレートの包み紙を使って、トカゲに靴を作って遊ぶ少年時代を過ごしていた。
やがて、モードの世界へ強い憧れを抱くようになったマノロは、独学で靴作りを学び、1971年にパリからロンドンへ渡る。
シューズブランド〈マノロブラニク〉の初コレクションを披露するチャンスを得たマノロだったが、靴のヒールに銅板を入れ忘れたことで、モデルたちが満足にランウェイを歩くことができず、あわやキャリア終了の危機を迎えてしまう。
だが、その靴のデザインの美しさから、彼の初コレクションは話題を呼び、翌72年にはロンドンのチェルシーにショップをオープン。以来、彼が生み出す靴たちは世界各国で話題を集めるようになった。
90年代に入り、TVドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』の大ヒットにより、サラ・ジェシカ・パーかー演じる主人公のキャリー・ブラッドショーが大の〈マノロブラニク〉ファンという設定から、世界的なブームが到来する。
だが、そんなセンセーションや、華やかな交流関係とは裏腹に、マノロ本人の人生の唯一の楽しみは、靴の工房で静かな時間を過ごすことで……。
◼︎マノロ・ブラニクを徹底解剖!
1942年、スペインのカナリア諸島ラ・パルマ島サンタクルスで、マノロ・ブラニクはスペイン人の母と、オーストラリア・ハンガリー人の父の間に生まれました。
スイスのジュネーブで教育を受けたマノロは、65年にフランスに渡ります。
モードの街パリでジュエリー・デザイナーのパロマ・ピカソと出会ったマノロは華やかな交友関係を広げていくのでした。
そんなマノロに転機が訪れたのは、68年にNYを訪れたときのこと。
当時、米版「VOGUE(ヴォーグ)」の編集長だったダイアナ・ヴリーランドから、靴にフォーカスを当てるようにアドバイスを受けたマノロは、独学で靴作りを学びます。
71年、ロンドンに移ったマノロは初のコレクションを発表、翌72年にはロンドンのチェルシーに初のお店をオープンしました。
80年代には本格的にアメリカに進出し、98年に放送開始したTVドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』で人気を決定づけ、世界中にマノロブームを巻き起こします。
06年にはソフィア・コッポラ監督映画『マリー・アントワネット』で衣装用の靴をデザイン。現在は世界33カ国に290の販売拠点、13の独立店舗を持ち、eコマース「manoloblanik.com」も立ち上げています。
◼︎華やかな交流関係は必見
本作に登場する、マノロの靴を愛用する、さまざまなセレブたち……、その中の何人かのコメントをご紹介します。
まずは”プラダを着た悪魔”こと米版「VOGUE(ヴォーグ)」の名物編集長アナ・ウィンターです。
「もう他の人の靴は履かない。見もしないわ。彼は義務だと思ってる。靴を履いた女性を美しく見せることを。それは、すごく感動的だわ」
次に、シンガーソングライターであり、女優としても活躍するリアーナ。16年に〈マノロブラニク〉との初コラボレーションも発表した彼女は、マノロの靴をこう語っています。
「女性にとっては夢の靴だわ!」
そして最後は、同じくシューズデザイナーとしても知られる、シャーロット・オリンピアです。
猫をモチーフにしたシューズで多くのセレブたちを虜にしてきた彼女は、マノロ・ブラニクをこう呼んでいます。
「彼は靴の帝王よ、永遠にね」
このほかにも、ピカソの娘パロマ・ピカソや、ソフィア・コッポラ、ジョン・ガリアーノなど、彼と交流のあるセレブリティたちがマノロの素顔を語ります。
夢の靴が生み出されるアトリエから、故郷カナリア諸島の私邸、イギリス・バースの自宅、そしてそこに保存された30000点に及ぶアイテムにまでカメラが迫り、マノロ・ブラニクの思考プロセスや、同ブランドの魅力の全貌に迫る本作。
スタイリッシュでため息がでるほど美しいスケッチの数々は圧巻です!
『マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年』を観て、ホリデー気分に浸ってみませんか? きっと、あなたもマノロが欲しくなってしまうかも……⁉
◼︎『マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年』公開情報
『マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年』
12月23日(土・祝)新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー!
監督・脚本:マイケル・ロバーツ
出演:マノロ・ブラニク、アンナ・ウィンター、リアーナ、パロマ・ピカソ、シャーロット・オリンピア、イマン、アンジェリカ・ヒューストン、ジョン・ガリアーノ、ソフィア・コッポラ、ルパート・エヴェレット
配給:コムストック・グループ 配給協力:キノフィルムズ
上映時間:89分
公式サイト:http://manolo-tokage.com/
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