『コウノドリ』9話。つらいとき、大変なとき、妻の一番の味方になるのは誰?

『コウノドリ』9話。つらいとき、大変なとき、妻の一番の味方になるのは誰?

産科が舞台の医療ドラマ『コウノドリ』第9話のレビューをお届けします。出演は、綾野剛、星野源、松岡茉優、坂口健太郎、吉田羊、大森南朋ら。今回のテーマはとても辛い「不育症」。涙なくしては見られませんでした……。



綾野剛主演の金曜ドラマ『コウノドリ』。現在放送中の第2シーズンは、「生まれること、そして生きること」をテーマに据えてきた。

出産は奇跡だ。しかし、その後には現実が続く。

生まれたばかりの赤ちゃんを抱えた妻は、夫はどう生きていくのか? そして産科医たちはどうフォローしていくのか? そのことについて、若き産科医たちの試練や岐路を交えつつ、優しく愚直に描き続けてきた。

先週放送された第9話のテーマは「不育症 世界一の味方は誰?」。最終回直前にして、これまで描いてきたテーマの解答を示すようなエピソードだった。

■3回目の流産……自責の念に苦しむ妻

妊婦の篠原沙月(野波麻帆)が夫の修一(高橋光臣)を伴って、サクラ(綾野剛)のもとを訪れる。過去2回にわたって流産している沙月は不安の色が隠せない。そして結果は……3回目の流産。

「3回も流産するなんて……やっぱり私のせいですか?」
「それは違います。初期の流産は、ほとんどの場合、お母さんが原因ではありません。偶然が重なって起きたんだと思います」

自分を責める沙月に、サクラが優しく説明する。助産師の小松(吉田羊)も付け加える。

「篠原さん、流産してしまった人の中には、働いていたからとか、重いものを持ち上げたからとか、自分のせいにするお母さんが多いんだけど、そうじゃないんだよ」

沙月は不育症だった。

不育症とは、妊娠はするけれど、流産、死産や新生児死亡などを繰り返し、結果的に子どもを持てない場合のことを指す。ただし、あくまでも結果から導き出される結論であり、何回流産を繰り返すと不育症と定義されるかは学会でも決まっていない。また、原因がわからない場合も少なくない。

妊娠したと喜んだのに、一転して深い悲しみに突き落とされる。しかも、何度も。妊娠を夫に報告したときの沙月の部屋はピンク色の柔らかな光に包まれていたが、3回も流産を繰り返した後の彼女の部屋からは色が失われている。これは彼女の心象風景でもある。

不育症は子どもを持ちたいと願っている女性にとって、ものすごく辛い。周囲の幸せそうな子連れの母親や妊婦を見るだけで、深く落ち込んでしまう。病院によっては、不育症の患者を診察する日は、それ以外の妊婦の診察を行わない婦人科もあるほどだ。

沙月のように自責の念にとらわれてしまうことも少なくない。サクラと小松は、沙月に正確な知識を優しく伝えている。それはドラマから視聴者へのメッセージでもある。もし、あなたが流産で自分を責めて苦しんでいるのだとしたら、そうではないんですよ、あなたの責任ではないんですよ、と。第5話で死産を経験した瑞希(篠原ゆき子)にも、サクラはそう語りかけている。

しかし、彼らの言葉が、苦しみの渦中にある女性たちの心にどれだけ届いているかはわからない。

■妻の世界一の味方は……やっぱり夫

ドラマの焦点は、沙月の夫、修一に移る。

修一はとても優しい男だ。出しっぱなしになっていた沙月の母子手帳を見つけて、彼女が落ち込んでいることを一瞬で察することができる細やかな心も持っている。

落ち込んでいる沙月に、子どもがいない夫婦という選択肢もあると語りかける修一。とても優しい言葉だと思う。だが、沙月の心は晴れない。沙月は修一が子ども好きで、心から子どもを欲しがっていたことを知っていた。

修一はサクラのもとを訪れる。「どうすれば、妻を笑顔にできますか?」と悩みを打ち明ける修一に、サクラはこのように答える。

「修一さんが、奥さんに寄り添って、笑顔にしてあげたい、近くでなんとかしてあげたいって、必死に頑張っている姿は、奥さんにとって、一番の治療になるんだと思います。その想いはきっと、明日につながります」

修一は弾いたことのないピアノを買い込み、沙月が愛聴していたBABYの曲を練習しはじめた。その姿を見て、沙月の表情にほんの少し笑顔が戻る。そして、拙いピアノの音色を聞いて涙を流す。修一が自分のことを強く想ってくれていたことを感じて、安心したからだ。

第1話と第3話に登場した、一見普通なのだが、実は妻を追い詰めているダメ夫の康孝(ナオト・インティライミ)のインパクトは大きく、ツイッターにはハッシュタグ「#うちのインティライミ」まで登場した。ただ、これもドラマ側に世の夫たちを懲らしめてやろうという意図があったわけではない。

妻が赤ちゃんを産むときは産科医たちが必死でケアをするから、その前後は夫がちゃんとケアをしなければいけないんだよ、というドラマ側からのメッセージである。

どんなに優秀でも、産科医は万能ではない。特に心の問題にまでは手が届かないことが多い。そんなときこそ、夫の出番だ。

ついに沙月は、4度目の妊娠で赤ちゃんの心拍を確認することができた。不育症は乗り越えられない不治の病ではない。だが、ここから先が大変だ。妊娠の継続のためには、夫の役割もとても重要になる。修一ならその心配はないだろうけど、世の夫たちはどうだろう?

■「今ある道を進むことで、光が見える」

最初のほうにも書いたが、不育症はとても辛い。

だが、『コウノドリ』はその辛さをことさらに強調しすぎることはない。倉崎(松本若菜)が若いころ、ヘビメタ女だったというギャグシーンまで挿入されていた(若い頃の綾野剛と星野源の可愛らしさにも注目)。それがこのドラマの優しさでもある。

第9話では、ペルソナ総合医療センターの人々の岐路も描かれた。
下屋(松岡茉優)は救命医として懸命に食らいつき、厳格だった部長の仙道(古舘寛治)に(少しだけだけど)認められるようになった。白川(坂口健太郎)は小児循環器科のある病院への転院を決意している。今橋(大森南朋)は体力的な限界を感じは始めていた。そして、四宮は地方の病院で産科を守り抜いてきた父親(塩見三省)のプライドに触れて心が揺らいでいた。

「生きている限り、明日はやってくる。悲しみが繰り返されてしまうときがある。悔しさが繰り返されてしまうときもある。それでも気づいてほしい。今ある道を進むことで、光が見える」

サクラのモノローグは、不育症や妊娠について悩む人々へのメッセージであるのと同時に、壁にぶつかってもがき苦しんでいる人や懸命に食らいついている人たちに対する人たちへのメッセージでもある。

なお、ドラマ『コウノドリ』の公式サイトでは、サクラのモデルになった、りんくう総合医療センターの荻田和秀先生によるお悩み相談「ペルソナ総合医療センター 産科外来」が行われている。荻田先生が妊娠・出産に関するさまざまな相談に回答しているので、興味のある方、悩みのある方はぜひご一読を。

金曜ドラマ『コウノドリ』

http://www.tbs.co.jp/kounodori/qa/

TBS「金曜ドラマ『コウノドリ』」番組公式サイトです。命についてのすべてのこと “ボクらは毎日、奇跡のすぐそばにいる─” 金曜 よる10時〜 放送。

この記事のライター

ライター。文春オンラインその他で連載中。ドラマレビュー、インタビュー、名言・珍言、中日ドラゴンズなどが守備範囲。著書に『「がんばれ!」でがんばれない人のための“意外”な名言集』『野原ひろしの名言集 「クレヨンしんちゃん」から...

関連する投稿


排卵誘発剤は卵子の保有数に影響を与える?【知っておきたい、体外受精の基礎知識#5】

排卵誘発剤は卵子の保有数に影響を与える?【知っておきたい、体外受精の基礎知識#5】

体外受精という不妊治療が一般的に知られるようになった昨今。不妊症に悩むカップルは6〜10組に1組と言われる今、体外受精を受けている方は珍しくありません。この体外受精という治療について、山中智哉医師が詳しく解説する連載、5回目では「採卵」のしくみを解説しつつ、一部の方が持っている不安を解消します。


私はまだ、息子に「愛してる」を言えない

私はまだ、息子に「愛してる」を言えない

息子は「小さな恋人」でも「私の分身」でもないけれど、とてもかわいくて愛しくて、かけがえのない存在です。子どもに対する気持ちと誠実に向き合ったら「愛してる」にはまだ早いことがわかりました。でも、人間として1対1の関係を、これからもやさしく、大切に育てていきたいと思っています。


『フリンジマン』最終話あらすじ - 不倫で愛を捨てるのは相手を不幸にしないため

『フリンジマン』最終話あらすじ - 不倫で愛を捨てるのは相手を不幸にしないため

『フリンジマン』最終話のあらすじや感想(ネタバレあり)をお届けします。キャストは板尾創路、大東駿介、淵上泰史、森田甘路など。江戸川の脅威が迫ってくるなか、愛人同盟はどう対処するのか? 気になる最終話の展開は――。


『コウノドリ』10話。「出生前診断」は”命の選別”か? つらい選択、あなたなら?

『コウノドリ』10話。「出生前診断」は”命の選別”か? つらい選択、あなたなら?

産科が舞台の医療ドラマ『コウノドリ』第10話のレビューをお届けします。出演は、綾野剛、星野源、松岡茉優、坂口健太郎、吉田羊、大森南朋ら。今回のテーマは「出生前診断」。それぞれの迷いと決意が描かれました。


『監獄のお姫さま』最終話あらすじ - かわいくてステキなおばさんたちよ、ありがとう

『監獄のお姫さま』最終話あらすじ - かわいくてステキなおばさんたちよ、ありがとう

『監獄のお姫さま』最終話のあらすじや感想(ネタバレあり)をお届けします。キャストは小泉今日子、満島ひかり、伊勢谷友介ほか。吾郎を追い詰めたものの、警察に捕まることになってしまったカヨたち。しかし、あるものが証拠となり、吾郎は逮捕される。ついに、事件の全容が明らかになるときが来た。


最新の投稿


産む? 産まない? 子を持たない女性たちの声にふれたら、考えが揺れました

産む? 産まない? 子を持たない女性たちの声にふれたら、考えが揺れました

多くの女性が対峙する、子どもを産む・産まない問題。産んだ人の体験談はたくさん聞くけれど、産まなかった人の話って意外と聞かないような……? とふと思いました。子どもを持たない人生を送る女性たちのリアルな声を聞ける本『誰も教えてくれなかった 子どものいない人生の歩き方』と出会い、考えたこと、感じたこと――。


幸せを呼ぶ京都・開運旅へ! 新春におすすめの1泊2日モデルプラン

幸せを呼ぶ京都・開運旅へ! 新春におすすめの1泊2日モデルプラン

日本国内だけでなく、外国人観光客からも多くの支持を集める京都。そんな京都には悠久の時を超え、今も残る寺社や、晴れやかな気持ちになる雅な美食まで、パワーをもらえるスポットがたくさん。今回は新春におすすめな、開運京都旅のモデルプランをご紹介いたします。


”衝撃の40分”から目が離せない! 『デトロイト』が描く歴史に埋もれた戦慄の一夜 古川ケイの「映画は、微笑む。」#35

”衝撃の40分”から目が離せない! 『デトロイト』が描く歴史に埋もれた戦慄の一夜 古川ケイの「映画は、微笑む。」#35

イラクを舞台に米軍爆発物処理班の兵士たちを描いた『ハート・ロッカー』、オサマ・ビンラディンの捜索に執念を燃やすCIA女性分析官を描いた『ゼロ・ダーク・サーティ』など、センセーショナルな題材選びに定評のあるキャスリン・ビグロー監督。新作『デトロイト』は、米国デトロイト暴動で起きた戦慄の一夜を映画化した、必見の衝撃作です。


フランス女性は風邪予防&対策に「ハーブと野菜」を取り入れてる

フランス女性は風邪予防&対策に「ハーブと野菜」を取り入れてる

冷えや寒さから体調を崩しがちな冬、ちょっと調子が悪いなと感じたとき、どのようなケアを取り入れていますか? 早めに薬を飲むという手段もあるけれど、できればそれ以外で回復させたいもの。今回はフランス女性による風邪予防と対策法をご紹介します。


岡田将生「人と人とのバランスを楽しみながら、自分を知っていく」――自分らしさのヒント

岡田将生「人と人とのバランスを楽しみながら、自分を知っていく」――自分らしさのヒント

岡田将生の美しい横顔は、もはや凶器だ。映画『伊藤くん A to E』で彼は、イケメンだけど超痛い男の役を演じている。最低なキャラクターなのに嫌いになれないのは、きっと、その言動がどこか人間らしいから。何にも縛られず自分らしく生きることに、私たちは憧れてしまう。岡田将生に、そんな“自分らしさ”について聞いてみた。


おっぱい