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『コウノドリ』第5話~死産という重い現実を乗り越える人々の物語

産科が舞台の医療ドラマ『コウノドリ』第5話のレビューをお届けします。出演は、綾野剛、星野源、松岡茉優、坂口健太郎、吉田羊、大森南朋ら。「悲しすぎる」「つらすぎる」と視聴者の大反響を巻き起こしたエピソードですが……。

『コウノドリ』第5話~死産という重い現実を乗り越える人々の物語

綾野剛主演の金曜ドラマ『コウノドリ』第2シリーズ。先週放送された第5話のテーマは「長期入院と予測できない事態」。

予測できない事態とは、死産だ。

■妊婦・瑞希を演じた篠原ゆき子の演技に絶賛の声

西山瑞希(篠原ゆき子)は「切迫早産」と診断され、入院することになった。
瑞希は同室の七村ひかる(矢沢心)と友情を育みながら、出産に備えて毎日の苦労を乗り越えていく。しかし、ある日、瑞希を担当していたサクラ(綾野剛)が、胎児の心音が確認できないことに気づく。そして、瑞希のお腹の中の赤ちゃんにIUFD(子宮内胎児死亡)という診断が下ってしまう。

大きなショックを受ける瑞希。それでも母体のため、出産をしなければならない。出産の間際、詫びるサクラの前で号泣する瑞希。夫・寛太(深水元基)の励ましのもと、辛い出産が始まる――。


瑞希を演じた篠原ゆき子の熱演が素晴らしかった。
あんな本気泣き、しばらく見たことがない。単に「泣く演技」をしているのではなく、思いを込めて本気で泣いているから、観る側にも痛切に響く。事実、彼女のブログには賞賛のコメントが700以上も寄せられた。

篠原はドラマ『カルテット』で松たか子に「早乙女真紀」の戸籍を売ってヘラヘラ笑いながら弁当を食べている女性を演じていたのだが、とても同一人物とは思えない。女優ってすごい。
また、篠原と深水の実年齢がふたりとも30代後半ということも話に深みを与えていた。高齢出産の部類に入る彼らは今回の出産に賭けていたのだ。

■ドラマは悲しい話を描けばいいってもんじゃない

『コウノドリ』では、これまで妊娠・出産・子育てに関するさまざまな問題を取り上げてきた。
第2話の「子宮頸部腺がん」第3話の「産後うつ」などだ。

ドラマは、それぞれの問題について苦しむ人々を、優しく包み込むようなメッセージを投げかけている。

第5話で取り上げられた「死産」は大変重いテーマだ。死産を経験し、深い悲しみ包まれる瑞希と寛太だが、サクラたちペルソナ総合医療センターの人々によって支えられ、ゆっくりと立ち上がるまでの姿が描かれた。

鴻鳥サクラ(綾野剛)をはじめ、四宮(星野源)たちは優れた医者だが、どんな不可能も可能にする天才ドクターではない。だから、不測の事態を避けるよう綿密に計画を練って出産に挑んでいる。それでも今回のような死産は避けられない場合がある。劇中で語られているように、妊娠22週以降の死産の4分の1は原因不明だ。

第5話では、瑞希たちの悲しいドラマの裏側で、サクラたちがいかに患者に寄り添うことができるか、患者に寄り添うこととはどういうことなのかが描かれている。サクラや小松(吉田羊)らは、瑞希の気持ちを第一に考えて寄り添っていく。
希望をかなえるだけではなく、先回りして道を示すこともある。小松たちが「赤ちゃん」として扱うことで、瑞希と寛太は目の前に横たわる息をしていない我が子をあらためて可愛い赤ちゃんだと思うことができる。抱っこをして、沐浴(もくよく)もする。わずかではあっても、我が子との時間を持つことで、気持ちが整理できる夫婦は多い。

サクラたちと瑞希夫婦のやりとりを見て、下屋(松岡茉優)は自分が担当した超低出生体重児・翔太の両親である大松夫妻(井上依吏子、矢島弘一)にどう寄り添えばいいのかを考える。そして、身勝手なようにも見えた大松夫妻の気持ちを考えて行動するようになる。研修医の吾郎(宮沢氷魚)を叱り飛ばしていた下屋だが、まだまだ彼女も成長の途上なのだ。

悲しい話を観れば、誰だって悲しい気分になる。我が身に置き換えて、つらい気持ちになった視聴者も多かっただろう。だけど、それだけでは終わらないところが『コウノドリ』の良さである。ドラマは人を悲しい気持ちにするためにあるわけではない。

■「しのりんプリン」は購入可能!

放送前に公開された画像で話題になった星野源が差し出す「しのりんプリン」の正体は、瑞希と寛太(深水元基)の西山夫妻が営む洋菓子店で作られた「Nishiyamaプリン」だった。劇中で大好評だったこのプリン、実は現在購入可能である。


瑞希たちの洋菓子店のロケ地は横浜市築地区の北山田駅近くにある「パテスリー・ル・プレ・オ・ヴェールYAMAMURO」。ここで現在「Nishiyamaプリン」として販売されている。パッケージも劇中に登場したそのまんまだ。1個330円。この機会にぜひ。

大山 くまお

ライター。文春オンラインその他で連載中。ドラマレビュー、インタビュー、名言・珍言、中日ドラゴンズなどが守備範囲。著書に『「がんばれ!」でがんばれない人のための“意外”な名言集』『野原ひろしの名言集 「クレヨンしんちゃん」から...

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