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【誰でもできる、本業で社会貢献】#2 すぐできる4つの方法

「誰でもできる、普段の仕事を通じた社会貢献」について解説する連載【誰でもできる、本業で社会貢献】第2回目では、よくある悩みや疑問を元に、視点を変えて本業で社会貢献をする方法を探っていきます。

【誰でもできる、本業で社会貢献】#2 すぐできる4つの方法

皆さんはどんな理由で特定の職種、言い換えれば今の仕事にたどり着いたのでしょう? 自分自身へのメリットは当然あると思いますが、でもそれだけではありませんよね。

たとえば食品にかかわる仕事についている人なら、「自分がおいしいと思うものを作ったり売ったりしたい」というほかに、「おいしいものを食べて喜ぶ人の顔が見たい」なんてこともありそうです。

■誰かの役に立ちたい。でもどうやって?

特定の会社を選ぶときにも同じことが言えます。給料や勤務時間、有給休暇の日数がチェックポイントとして大事なのは当然。

だけど、それらがすごく良かったとしても、会社のポリシーが自分の仕事選びのそれとマッチしていなかったり、働く人が楽しそうじゃなかったりしたら、その会社を選ぶモチベーションはぐっと下がります。

やっぱり仕事や働く会社を選ぶことには、「お金を稼ぐ手段」以上の価値がある。もっと言えば、ある会社で働こうという決断には、自分なりの「大義」や「正しさ」が大きく影響していると言えます。

けれど、そうやって期待に胸を膨らませて始めた仕事でも、気がつけば日々積み上がる目の前の業務に忙殺されたり、思うように自分の意見が通らなかったりで、人や社会の役に立つどころかストレスがどんどんたまる……なんていう現状がある。

「就職する前は夢があったよね」などと目を細めつつ、かつての自分を振り返っている。もしかして、読みながらドキッとしている方、多いのでは?

やってみたいと思った仕事を楽しみながら、叶うことならその仕事を通じて誰かの、社会の役に立ちたい。多くの社会人が願うことながら実現は難しく見える、この「本業で社会貢献」。

でもそれは決して不可能な話ではありません。ちょっと視点を変えればすぐできることかもしれない。それどころか、自覚していないだけで、すでにやっていることかもしれない。そうだとしたらとてももったいない話ですよね。

じゃあどんなふうに視点を変えればいいのでしょう? 今回はどうやったら「本業で社会貢献」を実行できるのか、ありそうなお悩みを例にしながらヒントを探っていくことにしましょう。

■お悩みその1:フロントラインにいないから世の中に役立つ製品・サービスづくりに直接かかわることができないんです(涙)。

「本業で社会貢献」と言ったとき、まず頭に浮かぶのは自社の製品やサービスを社会問題の解決に役立てられないかということですよね。たとえば連載第1回「公益経営って何?」でご紹介した、LIXILの「水を使わないトイレ」のようなイメージです。

だけど、それだと研究開発とか製造、営業・販売などの、いわゆる「フロント業務」に携わっていないと無理だよね……というのがこのお悩みの背景にあります。

それなら、たとえば人事や総務、経理などの間接部門で働いていたり、フロント部門にいてもアシスタント業務についている人は「本業で社会貢献」はできないの?

そんなことは、絶対にありません。どうやってやったらいいのかって? ざっくり2通りの方法があります。

いつもの仕事を、そのまま転換する

ひとつ目は、「世の中を良くする自社の製品やサービス」が生まれやすい環境づくりをすることです。それって結局、いつもやってるサポート業務をしっかりやるってことでしょ……とお思いの方、実はその通りです。

違いは、持っている視点や目標を「本業で社会貢献」に合わせて変えるだけですが、これが意外と大事なんです。

こんなたとえ話を聞いたことはないでしょうか。旅人がある町を通りかかり、レンガを積んでいる職人が3人いるのに目を留めました。

何を作っているのかとそれぞれに聞くと、最初の職人は「何って、レンガを積んでいるのさ。見りゃわかるだろう」と答え、次の職人は「高い壁を作っているんだよ。まあ仕事があるのはラッキーだね」と答え、最後の職人は「大聖堂を作っているんだよ! 歴史に残る建築物さ、すごいだろう?」と答えたというお話。

要は何に目標を置くかによってモチベーションは変わり、誇りを持って自分の仕事に取り組めるようになるという寓話ですが、私たちの日々の仕事にも通じるところがあると思いませんか?

「気の持ちよう」と言ってしまえばそれまでですが、これが意外と大事。サポート業務を通じて「本業で社会貢献」を実現しようと思うなら、特にです。

どうしても目の前にある業務を「こなす」という風に捉えてしまいがちな仕事でも、「この仕事の先には喜んでいるお客さまの顔があって、私がサポートしたことによって生まれたこの製品は誰かの役に立っている」と思うことで、仕事の意味合いや向き合い方は変わります。

そのためには、積極的にフロント部門の人に働きかけて、お客さんの顔を見せてもらうこと、現場に行かせてもらうことも重要です。自分の仕事がどんな風に製品、お客様につながっているかという視点と実感を持てたら、「大聖堂を作っているレンガ職人」になるのは難しくありません。

業務範囲の中で新しい取り組みを試す

サポート・間接部門で「本業で社会貢献」を実現するコツのもうひとつは、自分の仕事でも直接社会に良いことをすることです。

先ほどの話は、同僚をサポートすることで、文字通り「間接的に」社会貢献していくという話でしたが、ここでは自分自身の仕事を社会問題の直接解決につなげていくやり方。たくさんの人が働く企業にできるのは、自社製品で誰かを助けることだけではありません。

たとえば人事部門で働く人なら、障害者やニートの人たちを積極的に採用することで、就職が困難な社会的弱者に就業の機会を提供できます。総務で働く人なら社屋の光熱費を見直したり、什器をリサイクル品に変えたりすることで、環境負荷を下げることができるでしょう。

ここで言ってきたことは、いつもの仕事を大きく変えましょうということではないですよね。マインドを切り替えたり、いつもの仕事を少し見直すことばかり。サポート業務でだって「本業で社会貢献」できることは納得! いただけたでしょうか。

■お悩みその2:製品作りにかかわる部門にはいるけど、新製品のアイデアを提案しても受け入れてもらえない……

うちの製品をバンバン売って、どんどん人助けをするぞ! と気合いにあふれていても、こちらもやはり、そう簡単にはいかない場合が多いですよね。

たとえば開発途上国向けに既存製品をつくりかえようとすれば、仕様やパッケージ、値段設定も変えなければならないことが多い。すると、会社の上層部で正式にOKされなきゃいけないし、そうなると実際の自分の仕事にまで落ちてくるのはいつの話になることやら。

でも、他にもできることはあります。ここでも大きくふたつに分けて、お悩みに応えるヒントを見ていきましょう。

今ある製品に違う意味合いを与えられないか考えてみる

新製品をわざわざ開発するのは難しいけれど、今ある製品を社会的に意義のある目的で使えないだろうか、と考えるのはひとつの手です。

たとえば二度の大震災を経た今、キャンプ用品の多くは非常用にも役立つと認識され、メーカーもそれを意識したマーケティング、販売をしています。

また誰もが部活の後にお世話になった大塚製薬のポカリスエットは、東南アジアの国々で熱中症を予防するための、またはイスラム教国でラマダン(断食月)後に初めて口にする飲料として推奨され、瞬く間に広まっていったのだとか。

言われてみれば、「ああ、確かにそういう使い方もあるよね」ですが、思いつくのは簡単ではなさそう。けれど、普段から自社の製品やサービスを使いこんで知り尽くしておくことや、世にたくさんある社会問題に関する情報を敏感にキャッチできるようになっておけば、そのふたつを結びつけて解決策のアイデアを思いつけるきっかけになるかもしれません。

そして前述したどちらの例でも、当初の想定とは違う用途のために提供し、社会性を持たせたことで売り上げを伸ばしています。本業で社会貢献は売り上げにも貢献するのです。頭の体操にもなるし、突飛なアイデアで周囲を笑わせることができるようになるかもしれない、というオマケ付き。

製品を購入してもらうこと、以外で考えてみる

これは「サポート部門の本業で社会貢献」で触れたことに近いですが、やはりここでもエンドプロダクトにこだわらず、製品を生み出すプロセスにおいて社会貢献ができないかという考え方です。

たとえば購買・調達部門で働く人なら、フェアトレード(公正取引。主に開発途上国の生産者から適正な価格で継続的に購入すること)を実践している業者から資材や原料を調達することで、生産者を不当な搾取から守ることができます。物流部門なら配送システムを見直すことでCO2排出量を低減し、環境保護に貢献できるかもしれません。

ここで触れたいひとつの例にツムラがあります。ツムラ? 入浴剤を作っている会社? というイメージを持っている人も多いかもしれませんが、実はツムラは医療用漢方薬の国内最大手メーカーでもあります。そのツムラが生産拡大のために選んだのが夕張市です。

夕張市は2006年に財政破たん(企業で言えば倒産)した自治体です。企業と違い、自治体は倒産したままにはできないため、再建のための取り組みがなされていますが、そこに支援の手を差し伸べたのがツムラです。

とはいえ、これが慈善活動なわけではないのは当然で、北海道にはもともと薬用植物が多く、漢方薬の生産拠点としては適している土地柄だというのがツムラにとっての第1の理由。

それを踏まえたうえで、法人を設立すれば夕張市に税収をもたらし、雇用を生むことができると考え、2009年に夕張ツムラの設立を決断したのです。

(写真はイメージです。夕張ツムラとは関係ありません)

■「王道」じゃなくても、どんな仕事でも

自社製品が社会問題を解決する、というのは「本業で社会貢献」を目指す人にとっては、いわば王道であり、イメージも華やかです。

けれど、製品は最終的な成果物のようなもの。生まれてくるまでのプロセスの方がはるかに長いし、その中にはさまざまな仕事があります。だから、「本業で社会貢献」は自社製品にこだわる必要もないと思うのです。

……そうか。本業で社会貢献は全く無理な話でもなさそう。でも社会貢献って、具体的に何のこと? 社会問題の解決って、そもそもどんな問題があるの? というのが次に湧いてくる疑問ですよね。そのあたりは次回、見ていくことにしましょう。

佐々木 希世

コミュニケーション設計士。10代からの10年を米国で過ごす。採用や転職支援、ビジネススクールでのプログラム開発や講師業務に従事し、社会人のキャリア形成や成長への支援をやりがいとしてきた。3年間イタリアに移住したことをきっかけ...

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